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【超初心者向け】公認会計士が教える!株式投資を始める前の心構えと3つのステップ

「投資を始めたいけど、何から始めればいいのかわからない…」 「株ってなんだか怖い。損をするのが嫌で、なかなか一歩が踏み出せない…」

こんにちは、公認会計士のSatoです。普段は企業の数字を分析する専門家として働いていますが、その知識を活かして「どんなに難しいことも、わかりやすく」をモットーに、投資初心者の方に向けた情報発信をしています 。  

多くの方が、投資に対して上記のような不安や疑問を抱えているのではないでしょうか。その気持ち、非常によくわかります。専門用語が飛び交い、日々のニュースでは株価の乱高下が報じられる。そんな中で「さあ、投資を始めましょう!」と言われても、戸惑ってしまうのは当然です 。  

ご安心ください。この記事は、特定の銘柄をおすすめするものではありません。そうではなく、あなたが安心して投資の世界への第一歩を踏み出すために、最も大切な「心構え」と、実際に1円を投資する前に必ずやっておくべき「3つの準備ステップ」を、具体的にお伝えするためのものです。

この記事を読み終える頃には、投資への漠然とした不安が「これなら自分にもできそう」という自信に変わっているはずです。さあ、一緒に未来のための準備を始めましょう。

揺るがない「投資の心構え」~成功への3つの柱~

株式投資と聞くと、多くの人がパソコンの画面に張り付いて、秒単位で売買を繰り返す「トレーダー」の姿を思い浮かべるかもしれません。しかし、私たちが目指すのは、そのような短期的なギャンブルではありません。長期的に資産を育てるための、穏やかで、しかし力強いアプローチです。そのために必要な3つの心の柱を、まず最初に打ち立てましょう!!

柱① 短期的なギャンブラーではなく、長期的なパートナーになる

株式投資の本質は、応援したい企業の「一部のオーナー」になることです。その企業の成長を長期的に見守り、得られた利益の一部を配当や株価の上昇という形で分けてもらう。これが株式投資の基本です。

この考え方で最も重要になるのが「長期的な視点」です。市場は日々、様々な要因で上下しますが、短期的な動きに一喜一憂していては、精神的に疲弊してしまいます 。大切なのは、一時的な下落があっても動じず、経済全体の成長を信じて投資を続けることです 。  

長期投資がなぜ強力なのか。その最大の理由は「複利の効果」にあります 。複利とは、投資で得た利益(配当金や値上がり益)を再び投資に回すことで、その利益がさらに新たな利益を生み出す仕組みのことです。雪だるまが転がりながらどんどん大きくなっていくイメージですね。  

例えば、100万円を年率5%で運用できたとします。1年後には105万円になりますが、複利の場合、次の年は105万円を元手に運用するため、利益は5万2500円になります。これを続けると、10年後には約163万円、20年後には約265万円にまで膨らみます。かの物理学者アインシュタインが「数学上で最も偉大な発見」と呼んだほどの力を持っているのです 。この魔法のような力を最大限に引き出すには、「時間」という最高の味方が不可欠です。  

柱② 市場の「雨」を歓迎する~価格変動を味方につける方法~

投資を始めると、必ず「株価の下落」という雨の日に遭遇します。多くの初心者はこの雨に濡れるのを恐れて、慌てて傘(=持ち株の売却)を閉じてしまったり、そもそも家から出ること(=投資を始めること)をためらったりします。

しかし、心構えができていれば、この雨をむしろ「恵みの雨」と捉えることができます。そのための具体的な方法が「ドルコスト平均法」です 。  

これは、「毎月1日に3万円分」というように、定期的に一定の金額を同じ商品に投資し続ける手法です。この方法のすごいところは、価格が安いときには自然と多くの量(株数)を買うことができ、価格が高いときには少なく買うことになる点です 。  

簡単な例で見てみましょう。毎月1万円を投資するとします。

  • 株価が100円の月:100株買える
  • 株価が暴落して50円になった月:200株買える
  • 株価が好調で200円になった月:50株買える

このように、価格の変動を気にすることなく機械的に買い続けることで、平均購入単価を平準化させることができます。株価が下がった局面は、むしろ「安くたくさん仕込むチャンス」に変わるのです。いつが買い時で、いつが売り時かを予測するのはプロでも不可能です 。ドルコスト平均法は、そんな不可能な予測ゲームから私たちを解放し、感情に左右されない投資規律を身につけさせてくれる、非常に賢い方法なのです。  

柱③ 自分の中の「敵」に打ち勝つ~感情のコントロール術~

投資における最大の敵は、市場の変動でも、経済の悪化でもありません。それは、私たち自身の「感情」です。特に、株価が急落したときに陥りがちなのが「狼狽(ろうばい)売り」です 。  

狼狽売りとは、株価の急落にパニックになり、冷静な判断ができないまま持ち株をすべて売却してしまう行動です。これこそが、初心者が最も犯しやすい失敗の一つです。なぜなら、一時的な感情で売ってしまうと、その後の市場の回復局面を逃し、本来は一時的だったはずの損失を、自らの手で確定させてしまうからです 。  

なぜ私たちは、これほどまでに損失を恐れてしまうのでしょうか。それは、人間の心理に「損失回避性」というバイアスが備わっているからです。これは、「1万円を得る喜び」よりも「1万円を失う苦痛」のほうを2倍以上も強く感じてしまうという心の働きです 。この本能的な苦痛から逃れるために、私たちは非合理的な行動(狼狽売り)に走ってしまうのです。  

では、どうすればこの内なる敵に打ち勝てるのでしょうか。答えはシンプルです。株価が暴落したとき、最善の策は「何もしないこと(動かず様子を見ること)」である場合が多いのです 。経済は長期的には成長する傾向にあります。長期投資を前提としているならば、一時的な下落に過度に反応する必要はありません 。  

この「何もしない」を実践するためには、嵐が来る前に「自分だけのルール」を明確に定めておくことが不可欠です。それが、次にご紹介する3つの必須ステップです。

最初の1円を投資する前にすべき「3つの必須ステップ」

ここからは、いよいよ具体的な準備に入ります。投資は、証券口座を開いてお金を入金すればすぐに始められますが、その前にやるべきことがあります。この3つのステップを丁寧に行うことが、あなたの投資の成功確率を飛躍的に高めるでしょう。

ステップ① 航海図を描く~あなたは何のために投資しますか?~

もしあなたが、目的も持たずに航海に出たらどうなるでしょうか。おそらく、嵐に翻弄され、どこへ向かっているのかもわからなくなり、途方に暮れてしまうでしょう。投資もまったく同じです。「何のために資産を増やすのか」という目的が明確でなければ、目先の利益や市場のノイズに振り回され、結果的に資産形成はうまくいきません 。  

逆に言えば、目的さえはっきりしていれば、ゴールから逆算して「いつまでに」「いくら必要で」「そのためにはどんな手段を選ぶべきか」という航路が見えてきます 。  

目的は人それぞれです。具体的な例をいくつか見てみましょう。

投資目的の具体例
目的目標期間目標金額の例基本的な考え方
老後資金20年~30年2,000万円時間を味方につけ、長期的な成長を目指す 。  
子供の教育資金10年~18年500万円~700万円安定性も重視しつつ、着実に増やす 。  
住宅購入の頭金5年~10年500万円使う時期が比較的近いため、元本割れのリスクを抑える。
インフレ対策長期-預貯金の目減りを防ぐため、物価上昇率以上を目指す 。  

まずは、あなたがなぜ投資をしたいのか、この表を参考にじっくり考えてみてください。「老後のため」であれば、どのくらいの生活をしたいのか。「子供のため」であれば、大学は国公立か私立か。目的を具体的にすることで、取るべき戦略が自ずと決まってきます。

ステップ② 自分の限界を知る~あなたの「夜ぐっすり眠れる」金額は?~

次に知るべきは、市場ではなく、あなた自身についてです。それが「リスク許容度」です 。  

リスク許容度とは、投資において「どの程度の価格変動や損失までなら、心理的・経済的に耐えられるか」の度合いを指します 。もっと簡単に言えば、「投資したお金がどれくらい減っても、夜ぐっすり眠れるか」ということです 。この許容度は、一人ひとり全く異なります。あなたのリスク許容度を決める主な要素は以下の通りです。  

  • 年齢: 若い人ほど、損失が出ても収入でカバーしたり、運用をやり直したりする時間が長く残されています。そのため、一般的にリスク許容度は高くなります 。  
  • 収入・資産: 年収が高く、保有資産が多いほど、生活に影響を与えずに投資に回せるお金が増えるため、リスク許容度は高くなります 。  
  • 家族構成: 扶養する家族がいる、子供の教育費や住宅ローンなど将来の大きな支出が決まっている場合、大きなリスクは取りにくくなるため、リスク許容度は低くなります 。  
  • 投資経験: 投資経験が豊富な人ほど、市場の変動に対する心構えができているため、リスク許容度は高くなる傾向があります 。  
  • 性格: これが非常に重要です。客観的な条件がすべて「高リスクOK」を示していても、あなた自身の性格が慎重派で、少しでも資産が減ることに強いストレスを感じるなら、あなたのリスク許容度は「低い」のです 。  

投資の世界に「万人にとって最適な商品」は存在しません。「あなたにとって最適な商品」があるだけです。自分のリスク許容度を正しく把握することが、その最適解を見つけるための羅針盤となります。

ステップ③ 「お城」を築く~貯金と「余裕資金」の決定的な違い~

最後のステップは、あなたのお金全体を整理し、投資に回してもよいお金を明確にすることです。投資は、絶対に「余裕資金」で行わなければなりません 。  

余裕資金とは、当面使う予定がなく、万が一減ってしまっても生活に影響を与えないお金のことです 。これを正しく把握するために、まず手元のお金を3つに色分けしてみましょう 。  

  1. 生活資金: 日々の生活費や公共料金など、すぐに使うお金。
  2. 準備資金: 数年以内に使い道が決まっているお金(結婚資金、車の購入費用など)。
  3. 余裕資金: 上記1と2を除いた、当面使う予定のないお金。

そして、この3つの分類の「土台」として、何よりも先に確保しなければならないのが「生活防衛資金」です 。これは、病気や失業、災害といった不測の事態に備えるための「お城の堀」のようなお金です。投資に回すお金とは明確に区別し、すぐに引き出せる預貯金などで確保しておく必要があります 。  

では、生活防衛資金はいくら必要なのでしょうか。これは家族構成や働き方によって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。

生活防衛資金の目安
家族構成推奨される生活費の月数金額の目安
単身者(会社員)3ヶ月~6ヶ月分50万円~100万円  
夫婦2人(会社員)3ヶ月~6ヶ月分90万円~180万円  
子供がいる世帯6ヶ月~1年分200万円~400万円  

まず、あなたのご家庭の毎月の生活費を把握し、上の表を参考に生活防衛資金を計算してみてください。そして、投資に使う「余裕資金」は、以下の式で算出します 。  

余裕資金=総貯蓄額−(生活防衛資金+準備資金)

この計算で算出された金額が、あなたが安心して投資に臨める金額です。この「お城」をしっかりと築いておけば、たとえ投資の世界で嵐が吹いても、あなたの生活が脅かされることはありません。この安心感こそが、長期投資を続ける上で最大の武器となるのです。

あなたの旅はクリックではなく、一つの「問い」から始まる

ここまで、株式投資を始める前の心構えと3つのステップについてお話ししてきました。

  • 心構えの3つの柱:
    1. 短期的なギャンブルではなく、長期的な視点を持つ。
    2. 価格変動を恐れず、ドルコスト平均法で味方につける。
    3. 感情的な取引を避け、冷静さを保つ。
  • 準備の3つのステップ:
    1. 航海図となる投資の目的を明確にする。
    2. 自分の限界を知るためにリスク許容度を把握する。
    3. 生活防衛資金を確保し、余裕資金で投資する。

いかがでしたでしょうか。株式投資の成功は、どの銘柄を選ぶかという「クリック」から始まるのではありません。あなた自身と向き合い、「自分は何を望んでいるのか?」という「問い」から始まるのです 。  

急いで証券口座を開設する必要はありません。まずはこの記事を参考に、あなた自身の「目的」「リスク許容度」「余裕資金」をノートに書き出してみてください。その作業こそが、あなたの輝かしい投資家人生の、最も確実で、最も価値ある第一歩となるはずです。


【最後に大切な補足】法律上のご注意

この記事は、投資に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を勧誘したり、個別の投資助言を行ったりするものではありません。投資の最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。

情報発信を行うにあたり、私たち専門家や金融機関は金融商品取引法という法律を遵守する義務があります 。この法律は、投資家を不利益から守るために様々なルールを定めています 。  

その中でも特に知っておいていただきたいのが、「断定的判断の提供の禁止」です(金融商品取引法第38条第2号)。これは、「この株は絶対に上がります」「元本は保証します」といった、不確実な事柄について確実であるかのように伝えて勧誘することを固く禁じるルールです 。もし、そのようなセールストークに出会ったら、それは法律違反の可能性があると認識してください。  

その他にも、金融機関が顧客の損失を補填すること(損失補填の禁止)なども禁じられています 。  

すべての投資には、元本割れのリスクが伴います 。大切なのは、そのリスクを正しく理解し、ご自身が許容できる範囲内で、賢く付き合っていくことです。この記事が、そのための良い羅針盤となることを心から願っています。  

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