「たかが電卓」が合否を分ける?あなたの「最強の相棒」を見つけよう
「簿記の勉強を始めたけど、電卓ってどれも同じじゃないの?」「試験で計算ミスが多くて、いつも時間が足りなくなる…」
簿記3級の学習に励むあなたなら、一度はこんな風に思ったことがあるかもしれません。参考書や問題集選びには時間をかけるけれど、電卓は家にあったものを何となく使っている、という方も多いのではないでしょうか。
こんにちは、公認会計士のSatoです。長年、多くの受験生を見てきましたが、合格を掴む人と、あと一歩で涙をのむ人の間には、実は「電卓の選び方と使い方」に大きな差があることを実感しています。
簿記試験において、電卓は単なる計算道具ではありません。限られた60分という時間の中で、正確かつスピーディーに解答を導き出すための「最強の相棒」であり、その性能を最大限に引き出せるかどうかは、まさに合否を分ける戦略的な要素なのです。
この記事では、公認会計士の視点から、簿記試験で失敗しないための電卓選びの鉄則から、多くの受験生が見落としている「計算ミスを激減させる裏ワザ機能」まで、具体的かつ分かりやすく解説します。この記事を読み終える頃には、あなたにとって最高の相棒を見つけ、自信を持って試験に臨めるようになっているはずです。
まずは掟から!試験会場に持ち込める電卓の公式ルール
最高の相棒を選ぶ前に、まずは戦いの場である試験会場のルールを確認しましょう。日本商工会議所が定める簿記検定では、持ち込める電卓に厳格な規定があります。うっかり規定外の電卓を持ち込んでしまい、当日使えなかった…なんてことになったら目も当てられません 。
【持ち込みOKな電卓の基本】
- 四則演算(+,-,×,÷)ができる計算機能のみのもの
- 日数計算、時間計算、税計算、検算機能(音が出ないものに限る)なども使用可能
【持ち込みNGな電卓の機能】
- プログラム機能(関数電卓や、売価計算・原価計算などの公式を記憶できるもの)
- 印刷(出力)機能
- メロディー(音の出る)機能
- 辞書機能(文字入力ができるもの)
当然ですが、スマートフォン、タブレット、スマートウォッチなどの電卓機能は一切使用できません 。また、ネット試験ではそろばんの使用は認められていないので注意が必要です 。
公認会計士が本気で選ぶ!「合格電卓」5つのチェックポイント
ルールを理解したところで、いよいよ「合格を勝ち取るための電卓選び」です。高価なものである必要は全くありません。家電量販店などで1,000円~3,000円程度で販売されているもので十分です 。以下の5つのポイントを押さえて、あなたにぴったりの一台を見つけましょう。
ポイント1:サイズとキーの押しやすさ 電卓は「大きすぎず、小さすぎない」手のひらサイズが最適です 。カード型のような小さすぎる電卓はキーの打ち間違いの原因になります 。自分の指より少し大きめのキーで、しっかりと押し心地があるものを選びましょう 。
ポイント2:表示桁数は「12桁」一択 簿記3級の試験では10桁表示でも対応できる問題がほとんどですが、将来的に2級以上を目指したり、実務で経理に携わることを見据えるなら「12桁表示」の電卓を選んでおきましょう 。億単位の大きな金額を扱う際にも、桁数が足りなくなる心配がありません。
ポイント3:安定感を生む「滑り止め」 意外と見落としがちなのが、電卓の裏側です。焦ってキーを叩くと、電卓がズレて入力ミスにつながることがあります。机の上でしっかり固定される「滑り止め付き」のモデルを選びましょう 。安定した土台が、あなたの正確な入力を支えてくれます。
ポイント4:集中力を削がない「サイレントキー」 試験会場の静かな環境では、電卓を叩く「カチャカチャ」という音が意外と気になるものです。自分の集中力を維持し、周りの受験生に余計な気を使わせないためにも、打鍵音が静かな「サイレントキー」搭載のモデルがおすすめです 。
ポイント5:いざという時のための電源 試験中に電池が切れるという最悪の事態を避けるため、太陽電池だけでなく、内蔵電池も備えた「ツーウェイ・パワー(併用電源)」方式の電卓が安心です 。
知る人ぞ知る!計算ミスを激減させる電卓の「裏ワザ機能」活用術
さて、ここからが本題です。多くの受験生がただの四則演算にしか使っていない電卓には、実は計算スピードを劇的に向上させ、ケアレスミスを激減させる強力な機能が眠っています。それが「メモリー機能」と「GT(グランドトータル)機能」です。
裏ワザ1:計算用紙いらずの記憶装置「メモリー機能」
メモリー機能とは、計算結果を一時的に電卓内に記憶させておける機能です 。まるで「もう一つの脳みそ」を電卓の中に持つようなもので、計算の途中結果を紙にメモする手間を完全に省くことができます 。
【主要なメモリーキー】
- [M+] (メモリープラス):表示されている数値をメモリーに足す
- [M-] (メモリーマイナス):表示されている数値をメモリーから引く
- [RM] (メモリーリコール):記憶されている数値を呼び出す
- [MC]または[CM] (メモリークリア):記憶されている数値を消去する
【具体例:複数の売掛金の合計を求める】 A社への売掛金1,500円、B社への売掛金3,200円、C社への売掛金2,800円の合計は?
1500
と入力し、[M+] を押す。(電卓が1,500を記憶)3200
と入力し、[M+] を押す。(電卓が3,200を記憶に追加)2800
と入力し、[M+] を押す。(電卓が2,800を記憶に追加)- 最後に[RM] を押すと、合計の
7500
が表示されます。
この機能を使えば、複雑な計算問題でも、それぞれの計算結果を[M+]や[M-]で記憶させていき、最後にを押すだけで最終的な答えを導き出せます。紙への書き写しミスがなくなるだけで、失点のリスクは大幅に減少します 。
裏ワザ2:合計計算の最終兵器「GT(グランドトータル)機能」
GT機能は、[=]キーを押して確定した計算結果を、すべて自動的に合計してくれる超便利機能です 。
【具体例:複数の商品の仕入合計額を求める】 商品A(単価100円×5個)、商品B(単価150円×8個)、商品C(単価200円×3個)の仕入合計額は?
100
×
5
[=] を押す。(画面に500
と表示)150
×
8
[=] を押す。(画面に1200
と表示)200
×
3
[=] を押す。(画面に600
と表示)- 最後に[GT] を押すと、すべての合計である
2300
が一発で表示されます 。
この機能は、精算表や財務諸表の作成時に、各項目の合計を出す際に絶大な威力を発揮します。また、計算が正しく行われたかの検算にも使え、例えば配賦計算などで、配賦した金額の合計が元の金額と一致するかをキー一つで確認できます 。
【要注意!】計算を狂わせる設定スイッチ 多くの電卓には、小数点の扱いを決める「ラウンドセレクター(四捨五入や切り捨てなどを設定)」と「小数点セレクター(小数点以下の表示桁数を設定)」というスイッチがあります 。この設定が意図しないものになっていると、計算結果が勝手に丸められてしまい、答えが合わなくなる原因になります。試験前には、必ずラウンドセレクターを「F(Floating)」(設定なし)に合わせておく癖をつけましょう 。
スピードと正確性を両立する!プロの電卓操作術
良い電卓を手に入れ、便利な機能を理解したら、最後はそれを使いこなすための操作技術です。
- 利き手と逆の手で操作する 利き手でペンを持ち、計算用紙にメモをしながら、逆の手で電卓を操作するのが理想です 。ペンの持ち替え時間がなくなるため、大幅な時間短縮につながります。最初は難しく感じますが、練習すれば必ず慣れます。
- 「5」のキーをホームポジションに 多くの電卓の「5」のキーには、目で見なくても位置が分かるように小さな突起がついています。ここを中指の定位置(ホームポジション)と決め、手元を見ずに打つ「ブラインドタッチ」を意識して練習しましょう 。
- まずは正確性、次にスピード 焦って速く打とうとすると、かえってミスが増えてしまいます。最初はゆっくりでもいいので、一つ一つのキーを正確に打つことを心がけましょう 。正確性が身につけば、スピードは自然と後からついてきます。
まとめ:最高の相棒と共に、自信を持って合格を掴もう
今回は、簿記試験における電卓の重要性から、具体的な選び方、そして計算ミスを激減させる裏ワザ機能までを解説しました。
- 電卓選びの掟:試験ルールを確認し、「12桁表示」「手のひらサイズ」「滑り止め付き」の電卓を選ぶ。
- 必須の裏ワザ:「メモリー機能」で途中計算のメモをなくし、「GT機能」で合計計算を瞬時に行う。
- プロの操作術:利き手と逆の手で、ブラインドタッチを練習し、時間短縮と正確性を両立させる。
電卓は、あなたの努力を点数に結びつけるための、最も信頼できるパートナーです。今日からぜひ、あなたの「最強の相棒」を見つけ、その能力を100%引き出す練習を始めてみてください。使い慣れた電卓と共に試験会場の席に着いたとき、あなたはきっと、いつも以上の自信と落ち着きを持って問題に臨めるはずです。あなたの合格を心から応援しています。