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【新NISA】会計士が解説!経営者のための1800万円徹底活用術

Sato|元・大手監査法人公認会計士が教える会計実務!

Sato|公認会計士| あずさ監査法人、税理士法人、コンサルファームを経て独立。 IPO支援・M&Aを専門とし、企業の成長を財務面からサポート。 このブログでは、実務に役立つ会計・税務・株式投資のノウハウを分かりやすく解説しています。

導入:経営者の皆様へ。なぜ今、「新NISA」が重要なのか?

企業の成長に日々心血を注いでおられる経営者・役員の皆様。会社の資産形成と並行して、ご自身の個人的な資産形成について、どのようにお考えでしょうか。日々の業務に追われ、個人の資産運用は後回しになりがちかもしれません。

しかし、2024年から始まった新しいNISA(少額投資非課税制度)は、多忙な経営者の皆様にこそ活用していただきたい、極めて強力な資産形成ツールです。これは単なる節税制度ではありません。会社の財産とは切り離された、純粋な個人資産を非課税で効率的に築くための、いわば「第二の財布」を育てる仕組みです。

事業には常にリスクが伴います。だからこそ、会社の資産とは別に、税金の負担なく着実に成長させられる個人資産の柱を築いておくことは、将来の安心に直結する重要な経営判断と言えるでしょう。

本記事では、公認会計士である私が、経営者の皆様の視点に立ち、新NISAの核心である「生涯投資枠1,800万円」をいかに賢く、戦略的に使いこなすか、具体的なシナリオを交えながら、専門用語を極力排して分かりやすく解説してまいります。

1. 一目でわかる!新NISAの基本と旧制度からの進化点

まず、新NISAがこれまでの制度と比べていかに画期的なものに進化したのか、その全体像を把握しましょう。最大の変更点は、以下の3つに集約されます。

  1. 制度の恒久化: いつでも始められるようになりました。
  2. 年間投資枠の拡大: より大きな金額を非課税で投資できるようになりました。
  3. 生涯非課税限度額の新設: 生涯にわたる非課税投資のゴールが明確になりました。

旧NISAと比較すると、その違いは一目瞭然です。

項目旧NISA(つみたて)旧NISA(一般)新NISA
制度利用期間2042年まで2023年まで恒久化
年間投資枠40万円120万円合計360万円
(つみたて投資枠: 120万円)
(成長投資枠: 240万円)
非課税保有期間最長20年最長5年無期限
生涯非課税限度額なしなし1,800万円
口座開設期間2023年まで2023年まで恒久化
投資枠の再利用不可不可可能

出典: 金融庁「NISA特設ウェブサイト」の情報を基に作成  

この表が示す通り、新NISAは非課税で投資できる金額(年間360万円)、期間(無期限)、そして総額(生涯で1,800万円)のすべてにおいて、旧制度を圧倒しています。特に、一度使った非課税枠が売却によって翌年以降に復活する「投資枠の再利用」は、経営者の皆様にとって極めて重要なポイントです。

2. 最重要ポイント!生涯投資枠1,800万円の仕組みと「枠の復活」

新NISAの最大の目玉は、生涯にわたって非課税で保有できる上限額として設定された「生涯非課税限度額1,800万円」です。この枠は、以下の2種類の投資枠で構成されています。

項目つみたて投資枠成長投資枠
年間投資上限額120万円240万円
生涯非課税限度額(内数)1,800万円1,200万円
対象商品長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託等上場株式・投資信託等(一部除外あり)
主な活用シーン毎月の役員報酬からコツコツ積立役員賞与などまとまった資金で積極的に投資

出典: 金融庁「NISA特設ウェブサイト」の情報を基に作成  

重要なのは、この1,800万円の枠は「簿価残高(=取得価額)」で管理されるという点です。そして、NISA口座内の商品を売却した場合、その商品の簿価残高分の枠が翌年以降に復活し、再利用が可能になります。

この「枠の復活」は、新NISAを単なる長期積立口座から、柔軟性の高い「非課税の資金プール」へと昇華させる画期的なルールです。

例えば、ある経営者が500万円を成長投資枠で投資し、数年後に事業で急な資金が必要になったとします。この時、NISA口座内の資産を500万円分売却して資金を確保したとしましょう。旧制度では、この500万円の非課税枠は永久に失われました。しかし新NISAでは、翌年になると売却した500万円分の生涯投資枠が元通りに回復するのです。

これにより、「将来のために投資はしたいが、いざという時に資金が拘束されるのは困る」という経営者特有の悩みに応えることが可能になります。NISA口座を、事業の状況に応じて柔軟に活用できる戦略的な資産ポートフォリオの一部として位置づけられるのです。

3. 【会計士の視点】経営者・役員のための新NISA戦略シナリオ

では、経営者の皆様がこの1,800万円の枠をどのように活用すべきか、3つの具体的な戦略シナリオを提案します。

シナリオ1:役員報酬・賞与を活用した「短期集中投資」戦略

経営者の方は、役員報酬や賞与によって、年間でまとまった資金を動かせる機会があります。このキャッシュフローを活かし、年間投資枠360万円(つみたて120万円+成長240万円)を最大限に活用し、最短5年(360万円×5年=1,800万円)で生涯投資枠を埋めることを目指す戦略です。

この「フロントローディング(前倒し投資)」の最大のメリットは、複利効果を最大化できる点にあります。投資元本が大きければ大きいほど、非課税で得られる利益の再投資効果は雪だるま式に増えていきます。できるだけ早く1,800万円の枠を埋めることで、非課税の恩恵を最も長く、最も大きく享受できる可能性が高まります。

シナリオ2:iDeCo・小規模企業共済との「併用」戦略

経営者の方には、iDeCo(個人型確定拠出年金)や小規模企業共済といった、NISA以外にも有利な制度があります。これらはそれぞれ特性が異なります。

  • 小規模企業共済: 掛金が全額所得控除の対象。経営者のための「退職金準備制度」としての性格が強い 。  
  • iDeCo: 掛金が全額所得控除、運用益非課税、受取時にも控除あり。原則60歳まで引き出せない「年金制度」。
  • 新NISA: 掛金の所得控除はないが、運用益が非課税で、いつでも引き出し可能という高い流動性が魅力。

これらを組み合わせることで、盤石な資産形成ポートフォリオを構築できます。例えば、「老後資金のコア」は引き出し制限のあるiDeCoや小規模企業共済で確実に準備し、「流動性を確保しつつ積極的に増やすミドルリスク資金」を新NISAで運用する、といった役割分担が考えられます。

シナリオ3:事業承継・退職金を見据えた「出口戦略」としての活用

事業承継や勇退時に受け取る役員退職金は、数千万円単位の大きな金額になることも珍しくありません 。このまとまった資金の受け皿として、新NISAは非常に有効です。  

例えば、受け取った退職金の一部を年間360万円ずつ新NISAに移していくことで、課税口座で運用した場合にかかる約20%の税金から将来の利益を完全に守ることができます。特に、生涯投資枠が復活する特性を活かせば、退職後のライフプランの変化に応じて資産を売却して生活費に充て、余剰資金が出れば再び非課税枠で投資を再開する、といった柔軟な資産管理が可能になります。

4. まとめ:賢い資産形成への第一歩

2024年から始まった新NISAは、これまでの制度とは一線を画す、非常に自由度と拡張性の高い資産形成制度です。特に、

  • 生涯にわたる1,800万円の非課税投資枠
  • 売却しても翌年以降に枠が復活する高い柔軟性
  • 非課税保有期間の無期限化

という3つの特徴は、事業と個人のキャッシュフローが複雑に連動しがちな経営者・役員の皆様にとって、これ以上ない強力な武器となります。

まずは少額からでも、ご自身の会社の財務状況と個人のライフプランを見据えながら、この新しい制度を活用した資産形成の第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

ご注意: 本記事は新NISA制度の一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。実際の投資判断にあたっては、ご自身の責任において行うとともに、必要に応じて金融機関等の専門家にご相談ください。


ここでは、証券口座選びのご参考として、あくまで私個人の視点から、いくつかご紹介させていただきます。

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