こんにちは!公認会計士のSatoです。
「簿記2級の勉強、本当に大変…。でも、これに合格したら、本当にキャリアは変わるの?」
「未経験だけど、経理職に転職したい。簿記2級だけで年収は上がる?」
簿記2級の学習は、連結会計や工業簿記など、難解な論点も多く、心が折れそうになることもあるかもしれません。特に、異業種からのキャリアチェンジを目指している方にとっては、「この努力が報われるのか」という不安が常につきまとうと思います。
私自身、公認会計士として多くの企業の経理部門と接してきましたが、断言できることがあります。それは、日商簿記2級は、未経験者がキャリアチェンジを実現し、専門性を高めていくための「最強の入場券」であるということです。
この記事では、簿記2級の資格が転職市場でどう評価されるのか、未経験から転職を成功させた具体的な事例、そして気になる年収のリアルな相場について、徹底的に解説します。簿記2級の勉強に行き詰まっている方も、合格後のキャリアを具体的にイメージしたい方も、ぜひ最後までご覧ください。
簿記2級最短合格シリーズ(全10回)について、これまでに記載した記事はこちらになります。
- 簿記2級最短合格(1)簿記2級最短合格ロードマップ|勉強法から最新出題傾向まで4ステップで解説
 - 簿記2級最短合格(2)簿記2級の工業簿記は全体像で攻略!苦手を得点源に変える原価計算マップ
 - 簿記2級最短合格(3)【図解で秒速理解】工業簿記の個別・総合原価計算はボックス図で攻略
 - 簿記2級最短合格(4)工業簿記の最重要論点!標準原価計算の差異分析とCVP分析を徹底解説
 - 簿記2級最短合格(5)【簿記2級・連結会計】タイムテーブルの書き方を攻略!公認会計士が仕訳を図解
 - 簿記2級最短合格(6)簿記2級の頻出論点「税効果・リース・外貨」を公認会計士が解説!
 - 簿記2級最短合格(7)【公認会計士が教える】簿記2級直前期!本番で焦らない時間配分と解く順番の鉄則
 - 簿記2級最短合格(8)簿記2級ネット試験の不安解消!当日の持ち物・流れ・PC操作を公認会計士が解説
 - 簿記2級最短合格(9)簿記2級で年収はいくら上がる?未経験からの転職成功事例とリアルな仕事内容
 - 簿記2級最短合格(10)簿記2級の次は?簿記1級・公認会計士・税理士へのステップアップを徹底比較
 
目次
簿記2級は転職市場でどれだけ評価されるのか?
まず結論から言うと、転職市場、特に経理職未経験者にとって、日商簿記2級の価値は絶大です。
多くの企業が、経理職の応募資格として「日商簿記2級保有者」を必須条件または歓迎条件として挙げています。なぜでしょうか?
採用担当者の視点に立ってみると、理由は明確です。実務経験のない応募者を採用するのは、企業にとって「投資」であり、リスクでもあります。その際、簿記2級を持っていることは、応募者が以下の3つの能力・意欲を持っていることの客観的な証明になるのです。
- 会計の「基本言語」を理解していること
 - 数字に対するアレルギーがないこと
 - 自己投資のできる「学習意欲の高い人材」であること
 
実務経験という「実績」がない分、簿記2級という「客観的な資格」が、書類選考を通過し、面接のテーブルに着くための強力な「入場券」として機能するのです。
【Before/After】簿記2級を活かした転職成功事例
「本当にそんなにうまくいくの?」と思う方のために、簿記2級を武器にキャリアチェンジを成功させた、リアルな転職成功事例を見てみましょう。
事例1:営業職(20代)→メーカー経理職【年収100万円UP】
- Before: 製造業の営業職(20代・男性)。顧客との折衝は得意だが、キャリアの専門性に不安を感じ、将来を見据えて簿記2級を取得。当時の年収は280万円。
 - After: 簿記2級を武器に、未経験者歓迎のメーカー経理職へ転職成功。営業で培ったコミュニケーション能力と、資格で証明された会計知識が評価され、年収は380万円にアップ。現在は月次決算などを担当し、専門性を高めています。
 
事例2:一般事務(30代)→上場企業経理職【キャリアアップ実現】
- Before: 中小企業で一般事務を担当(30代・女性)。請求書発行などの業務に携わる中で会計に興味を持ち、働きながら簿記2級に合格。当時の年収は320万円。
 - After: 資格取得を機に、より専門的なキャリアを目指し転職活動を開始。上場企業の経理職のポジションを獲得し、年収は470万円に。現在は、より高度な年次決算業務や開示資料作成のサポートに携わり、キャリアアップを実現しています。
 
事例3:未経験(20代)→会計事務所スタッフ【専門性を磨く道へ】
- Before: アパレル販売員(20代・女性)。将来のキャリアに漠然とした不安を感じ、手に職をつけるため簿記2級に挑戦。当時の年収は250万円。
 - After: 資格を活かし、会計事務所へ転職。未経験からのスタートだったが、入社後の年収は350万円で、実務経験を積みながら税務の知識を習得。クライアントの記帳代行や決算補助を通じて、会計のプロフェッショナルとしての道を歩み始めています。
 
これらの事例のように、簿記2級はキャリアチェンジと年収アップを実現するための確かな足がかりとなります。
こうしたキャリアチェンジを成功させるには、専門の転職エージェントの活用が不可欠です。あなたの経歴と資格を最大限に評価してくれる非公開求人の紹介や、面接対策など、手厚いサポートが受けられます。
簿記2級取得者のリアルな年収【年代・経験別】
では、簿記2級取得者のリアルな年収相場はどれくらいなのでしょうか。もちろん、年齢や実務経験、勤務する企業の規模によって大きく変動します。
転職市場のデータを総合すると、おおよその相場は以下のようになります。
| プロフィール | 年収相場 | キャリアの段階 | 
| 20代~30代・未経験者 | 300万円~450万円 | ポテンシャル採用が中心。まずは実務経験を積むことが最優先。 | 
| 20代~30代・実務経験3年程度 | 400万円~600万円 | 月次決算を一人で締められるレベル。経験者として評価され、年収も大きく上昇。 | 
| 30代以上・マネジメント経験や専門スキル | 600万円以上 | 年次決算、連結決算、税務申告などの高度なスキルや、マネジメント経験が加わると、さらに高い年収が期待できる。 | 
ここで示した「未経験者」の年収は、あくまでスタートラインです。
参考までに、dodaが発表した「平均年収ランキング2024」によると、「経理/財務/税務/会計」職種全体の平均年収は566.2万円となっています。これは、簿記2級を入口として実務経験を積み重ねていくことで、着実に年収アップが見込める専門職であることの証左と言えるでしょう。
経理の仕事内容を具体的に解説【日次・月次・年次】
最後に、「経理の仕事」が具体的に何をしているのか、その業務サイクルを見てみましょう。企業の規模によっても異なりますが、一般的に経理の仕事は「日次・月次・年次」の3つのサイクルで回っています。
日次業務 (Daily) :会社の「家計簿」
- 主な内容: 現金・預金の管理、伝票の起票・整理、経費精算など。
 - 具体的に: 日々の取引を会計システムに入力し、会社の金庫や銀行口座の残高が帳簿と一致しているかを確認する、いわば会社の「家計簿」をつける作業です。未経験者はまず、この日次業務からスタートすることが多いです。
 
月次業務 (Monthly) :会社の「定期健診」
- 主な内容: 月次決算、売掛金・買掛金の管理、給与計算、請求書の発行・支払いなど。
 - 具体的に: 1ヶ月分の取引を締め、試算表や月次の損益計算書を作成し、経営陣に報告します。会社の健康状態を毎月チェックする「定期健診」のような役割です。簿記2級の決算整理の知識が直接活きてきます。
 
年次業務 (Annual) :1年間の「総まとめ」
- 主な内容: 年次決算、決算短信・有価証券報告書の作成(上場企業)、法人税等の申告・納付、監査対応、年末調整など。
 - 具体的に: 1年間の企業活動の総まとめです。最終的な財務諸表を確定させ、株主や税務署に報告します。1年で最も重要かつ繁忙な業務であり、簿記2級で学ぶ連結会計や税効果会計といった高度な知識が求められます。
 
キャリアアップとは、この「日次」から「月次」、そして「年次」へと、より高度で専門的な業務に携わっていくことを意味します。簿記2級の知識は、これら全ての業務の「なぜ?」を理解するための土台となるのです。
まとめ:簿記2級はキャリア激変の「第一歩」
簿記2級の資格は、それ自体がゴールではありません。しかし、それは間違いなく、あなたのキャリアを劇的に変える可能性を秘めた「第一歩」です。
未経験から専門職である経理・財務の世界へ飛び込むための「入場券」であり、入社後に実務を素早く吸収し、専門家として成長していくための「羅針盤」となります。
今、あなたが学んでいる連結会計や標準原価計算は、決して試験のためだけの知識ではありません 。将来、あなたが年次決算を任されたり、メーカーの原価管理を担当したりする際に、必ず役立つ「ビジネスの共通言語」です。
簿記2級の合格は、あなたの市場価値を高め、より専門的で安定したキャリアを築くための素晴らしいスタートラインです。さらにその先には、公認会計士や税理士といった、より高度な専門家への道も開けています。
今は大変かもしれませんが、その努力は必ず未来のあなたを助けてくれます。自信を持って、学習を続けてください!
次回は、「簿記2級から次のステージへ!簿記1級・公認会計士・税理士への道」について詳しく解説していきます。ぜひ、そちらもご覧ください。
よくある質問(Q&A)
簿記2級を持っていますが実務経験がありません。本当に転職できますか?
可能です。多くの企業が簿記2級を「会計の基本言語を理解している」「学習意欲が高い」というポテンシャル(潜在能力)の証として評価しています 。記事で紹介した事例のように、未経験から経理職や会計事務所へ転職成功したケースは多数ありますので、自信を持って挑戦してください 。
簿記2級があると、未経験でも年収はどれくらい期待できますか?
あくまで相場ですが、20代~30代の未経験者の場合、年収300万円~450万円がスタートラインになることが多いです 。これはあくまでスタートであり、経理は実務経験を積むことで着実に年収が上がる専門職です。数年で400万円~600万円のレンジを目指すことが可能です 。
経理の仕事は「日次・月次・年次」で何が違うのですか?
簡単なイメージでお伝えすると、日次業務は日々の現金管理や伝票入力(会社の「家計簿」)、月次業務は月の締め作業や経営層への報告(会社の「定期健診」)、年次業務は1年の総まとめである決算や税務申告(会社の「総まとめ」)です 。キャリアアップと共に、より重要度の高い年次業務に携わることになります。
営業職や販売職など、全くの異業種からでも経理になれますか?
はい、記事の事例1や事例3のように、営業職や販売職から経理職・会計事務所スタッフへ転職した例は多くあります 。簿記2級の知識はもちろんですが、面接では「なぜ経理職なのか」という志望動機と共に、前職で培ったコミュニケーション能力や顧客対応スキルといったポータブルスキルも評価されることがあります。
簿記2級の知識は、経理の仕事で具体的にどう役立ちますか?
簿記2級で学ぶ商業簿記(連結会計、税効果会計など)や工業簿記は、単なる試験知識ではありません。これらは、上場企業やメーカーの月次・年次決算業務を行う上での「基礎体力」となります 。資格知識があることで、実務の理解が格段に早くなり、上司の指示の背景も理解できるため、キャリアアップのスピードが大きく変わってきます。
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