関連会社への投資を行っている企業にとって、その関連会社が「持分法適用会社」である場合、受け取る配当金の会計処理には特別な注意が必要です。
一般的な受取配当金のように「営業外収益」として処理してしまうと、会計基準に沿わないだけでなく、企業の財政状態を誤って示すことにもなりかねません。
この記事では、なぜ持分法適用会社からの受取配当金は収益にならないのか、その理由と正しい会計処理について、具体的な仕訳例を交えて分かりやすく解説します。
そもそも「持分法」とは?
本題に入る前に、「持分法」の基本的な考え方をおさらいしましょう。
持分法とは、投資会社が被投資会社(関連会社など)の純資産および損益の変動のうち、投資会社に帰属する部分を、その変動に応じて投資の帳簿価額を修正する会計処理です。
簡単に言えば、「関連会社の利益(または損失)が出たら、その持ち分に応じて、自社の投資勘定の価値を増減させる」という考え方です。これにより、投資先である関連会社の経営成績を、より実態に即して自社の連結財務諸表に反映させることができます。
受取配当金の会計処理の原則
ここからが本題です。持分法適用会社から配当金を受け取った場合、会計処理の原則は以下の通りです。
原則:受取配当金は「投資の回収」として扱い、収益(営業外収益)としては計上しない。
具体的には、受け取った配当金の額だけ**「関連会社株式」などの投資勘定を減額**します。
なぜ収益として計上しないのか?
この処理の背景には、持分法の「利益の二重計上を防ぐ」という目的があります。
- 利益の先行認識:持分法では、関連会社が利益を計上した時点で、投資会社はすでに持ち分相当額を自社の利益(持分法による投資利益)として認識し、同時に投資勘定(関連会社株式)を増加させています。
- 配当金の原資:関連会社が支払う配当金の原資は、その稼いだ利益です。
- 二重計上の防止:もし、この配当金を受け取った際に再度「受取配当金」として収益を計上してしまうと、①で認識した利益と合わせて、同じ利益を二度計上することになってしまいます。
したがって、持分法適用会社からの配当は、「すでに利益として認識済みのものが、現金という形で投資元本の一部として返還(回収)されただけ」と考えるのです。
具体的な仕訳例
A社(投資会社)が、持分法適用会社であるB社(議決権の25%を所有)から100万円の配当金を受け取った場合の仕訳を見てみましょう。
【正しい仕訳】
勘定科目 | 借方 | 貸方 |
---|---|---|
現金預金 | 1,000,000 | |
関連会社株式 | 1,000,000 | |
摘要 | B社より配当金受領 |
このように、貸方は「受取配当金」(営業外収益)ではなく、「関連会社株式」(投資勘定)となります。この処理により、B社の利益によって増加していた投資の帳簿価額が、配当金の分だけ減少することになります。
【誤った仕訳の例】
勘定科目 | 借方 | 貸方 |
---|---|---|
現金預金 | 1,000,000 | |
受取配当金 | 1,000,000 | |
摘要 | B社より配当金受領 |
この仕訳では、利益の二重計上が発生してしまい、不適切な会計処理となります。
税務上の取り扱いとの違いに注意
会計上は上記のような処理を行いますが、税務上の取り扱いは異なる場合があるため注意が必要です。
法人税法上、関連会社からの受取配当金は、一定の要件を満たせば「益金不算入」の適用対象となり、課税所得の計算から除外されます。会計上の収益計上の有無と、税務上の益金算入・不算入の判断は、それぞれ別のルールに基づいています。
まとめ
持分法適用会社からの受取配当金の会計処理における最も重要なポイントは、「収益ではなく、投資の回収として処理する」という点です。
この原則を理解し、受け取った配当金の額だけ投資勘定(関連会社株式など)を減額する正しい仕訳を行うことが、適切な財務報告の基本となります。経理担当者として、この違いを正確に把握し、誤った処理をしないように注意しましょう。