5.スキルアップ

【よくある間違い】「売掛金と未収入金」「買掛金と未払金」の違い、正しく説明できますか?

はじめに:その仕訳、本当に合っていますか?

簿記3級の学習を進める中で、多くの初学者が「うっ…」と頭を抱える瞬間があります。それは、名前は似ているのに、使い方が全く異なる勘定科目に出会ったときです。

中でも特に混同しやすく、試験の合否を分けるポイントとなるのが、「売掛金」と「未収入金」、そして「買掛金」と「未払金」のペアです。これらの違いを曖昧なままにしておくと、仕訳問題で思わぬ失点につながりかねません。

しかし、ご安心ください。この4つの勘定科目の使い分けには、たった一つ、非常にシンプルで強力なルールが存在します。この記事を読み終える頃には、あなたはもうこの「そっくりさん勘定科目」に惑わされることなく、自信を持って正しい仕訳ができるようになっているはずです。

1. すべてはこれで解決!「本業の取引かどうか」という黄金ルール

複雑に見えるこの4つの勘定科目の使い分けは、たった一つの質問で解決します。

「その取引は、会社の本業(=主な営業活動)に関係するものか?」

これだけです。会社の本業とは、その会社がビジネスとして継続的に行っている活動、例えば「商品を売る」「サービスを提供する」といったことです。この判断軸さえ持っていれば、もう迷うことはありません 。  

本業の取引本業以外の取引
代金を後で受け取る権利(資産)売掛金未収入金
代金を後で支払う義務(負債)買掛金未払金

このマトリクスを頭に入れるだけで、仕訳の正答率は劇的に向上します。それでは、具体例を見ながら一つずつ確認していきましょう。

2. 【代金を受け取る権利】「売掛金」と「未収入金」の違い

どちらも「後でお金をもらえる権利」という点では同じ資産グループの勘定科目です。違いは、その権利が発生した原因が「本業」か「本業以外」か、だけです。

売掛金:本業の商品・サービスを後払いで売ったとき

「売掛金」は、会社の本業である商品やサービスを販売し、その代金を後で受け取る約束(掛け取引)をした場合に使います 。  

【具体例】 文房具店が、得意先にボールペン100本(10,000円)を販売し、代金は月末にまとめて受け取ることになった。

この取引は、文房具店にとって「ボールペンを売る」という本業の活動なので、「売掛金」を使います。

【仕訳例】

借方貸方
売掛金 10,000売上 10,000

未収入金:本業以外(備品など)を後払いで売ったとき

「未収入金」は、会社の本業とは関係のないものを売却し、その代金を後で受け取る約束をした場合に使います。代表的なのは、会社で使っていた備品や車両、建物などの固定資産を売却するケースです 。  

【具体例】 文房具店が、配達に使っていたバイク(帳簿価額50,000円)を80,000円で売却し、代金は月末にまとめて受け取ることになった。

バイクを売ることは文房具店の本業ではないため、「未収入金」を使います。

【仕訳例】

借方貸方
未収入金 80,000車両運搬具 50,000
固定資産売却益 30,000

3. 【代金を支払う義務】「買掛金」と「未払金」の違い

こちらも考え方は全く同じです。「後でお金を支払う義務」という点では同じ負債グループですが、その義務が発生した原因が「本業」か「本業以外」かで使い分けます。

買掛金:本業の商品・材料を後払いで仕入れたとき

「買掛金」は、会社の本業である商品を販売するために、その商品や原材料を仕入れ、代金を後で支払う約束(掛け取引)をした場合に使います 。  

【具体例】 文房具店が、メーカーからボールペン100本(5,000円)を仕入れ、代金は月末にまとめて支払うことになった。

この取引は、文房具店にとって「販売する商品を仕入れる」という本業の活動なので、「買掛金」を使います。

【仕訳例】

借方貸方
仕入 5,000買掛金 5,000

未払金:本業以外(備品や経費)を後払いにしたとき

「未払金」は、商品や原材料の仕入れ以外のものを購入したり、サービスの提供を受けたりして、その代金をまだ支払っていない場合に使います。備品や消耗品の購入、広告費や水道光熱費の支払いなどがこれにあたります 。  

【具体例】 文房具店が、事務作業で使うパソコン(80,000円)を購入し、代金は月末にまとめて支払うことになった。

事務用のパソコンは販売目的の商品ではないため、この取引は本業以外と判断し、「未払金」を使います。

【仕訳例】

借方貸方
備品 80,000未払金 80,000

4. 試験で間違えないための最終チェックポイント

これらの違いを理解した上で、試験本番でミスを防ぐためのポイントを確認しましょう。

  • 会社の「本業」を見極める: 問題文を読んで、「この会社は何屋さんなのか?」を最初に把握することが最も重要です。例えば、不動産会社が販売目的で持っている土地を売れば「売掛金」ですが、文房具店が事務所の土地を売れば「未収入金」になります。
  • モノの「目的」に注目する: 同じものを購入しても、その目的によって勘定科目が変わります。自動車ディーラーが販売用に車を仕入れれば「買掛金」ですが、営業活動で使うために車を購入すれば「未払金」となります。

この「本業かどうか」という視点を持つだけで、これまで悩んでいた仕訳問題が驚くほどクリアに見えてくるはずです。

おわりに:シンプルなルールが、合格への一番の近道

「売掛金」と「未収入金」、「買掛金」と「未払金」。これらの使い分けは、簿記3級学習における最初の関門の一つです。しかし、今日学んだ「本業の取引かどうか」というシンプルなルールさえマスターすれば、もう何も怖くありません。

この区別が瞬時にできるようになれば、第1問の仕訳問題での得点力が安定し、合格がぐっと近づきます。一見複雑に見える簿記の世界も、一つひとつのルールを丁寧に理解していけば、必ず攻略できます。頑張ってください!

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