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【公認会計士が解説】税務署から「譲渡所得の申告についての連絡票」が届いた!無視はNG?正しい対応を5ステップで徹底解説

Sato|元・大手監査法人公認会計士が教える会計実務!

Sato|公認会計士| あずさ監査法人、税理士法人、コンサルファームを経て独立。 IPO支援・M&Aを専門とし、企業の成長を財務面からサポート。 このブログでは、実務に役立つ会計・税務・株式投資のノウハウを分かりやすく解説しています。

こんな方におすすめ

  • 税務署から書類が届き不安な方
  • 自宅を売却して利益が出たか不明な方
  • 確定申告が必要かどうか知りたい方
  • 3000万円控除の基本を知りたい方

昨年、大切に住んできたご自宅を売却されたあなたへ。

ある日、税務署から「譲渡所得の申告についての連絡票」という一通の封書が届き、「何か悪いことをしてしまったのだろうか?」「税金を滞納していると思われている?」と、胸がざわついているかもしれません。

ご安心ください。その書類は、あなたが何か問題を指摘されているわけではありません。これは、税務署が「不動産の売却があったことは把握していますが、利益が出たかどうかまでは分からないので、状況を教えてください」と確認するために送付する、ごく一般的な手続きのお知らせです 。  

この記事では、公認会計士である私が、この「連絡票」が届いたときに、あなたが落ち着いて、そして正しく対応できるよう、やるべきことを5つのステップに分けて、分かりやすく解説します。

まずはご安心を!「譲渡所得の申告についての連絡票」とは?

この書類は、通称「お尋ね」とも呼ばれています。前年に不動産を売却したにもかかわらず、確定申告をしていない方のもとに届くことが多いです 。税務署は、不動産の売買があると法務局の登記情報から「誰が、いつ、どの不動産を売却したか」を把握できます 。  

しかし、税務署が把握しているのは主に「売却価格」であり、あなたがその不動産を「いくらで購入したか(取得費)」や「売却にいくらかかったか(譲渡費用)」といった詳細な情報は持っていません。そのため、売却によって利益(譲渡所得)が出て納税義務があるのか、それとも損失が出て申告が不要なのかを判断できないのです 。  

この「お尋ね」は、その不明な点を確認するための、いわば「アンケート」のようなものです。まずは、その性質を正しく理解しましょう。

項目内容
目的不動産売却による利益(譲渡所得)の有無を確認し、申告漏れを防ぐため 。  
法的拘束力行政指導の一環であり、法律に基づく強制力はありません 。  
回答義務法律上の回答義務はなく、回答しなくても罰則は科されません 。  
無視した場合のリスク回答がないと、税務署から電話や督促状が届くことがあります。それでも放置すると、申告漏れを疑われ、税務調査の対象となる可能性があります 。  

結論として、罰則がないからといって無視するのは絶対に避けるべきです。 誠実に対応することが、無用なトラブルを避ける最善の方法です。

なぜ自分に届いた?税務署が不動産売却を把握している仕組み

前述の通り、あなたが不動産を売却すると、買主への「所有権移転登記」が法務局で行われます。税務署はこの登記情報を閲覧できるため、不動産の所有者が変わったことを確実に把握しています 。  

その情報をもとに、「この人は不動産を売却したようだが、翌年の確定申告期間に譲渡所得の申告がされていないな。利益が出ている可能性があるので、一度確認してみよう」という流れで、この連絡票が送られてくるのです。

決してあなたが疑われているわけではなく、あくまで税務の公平性を保つための確認手続きの一環だと理解してください。

【5ステップで対応】連絡票が届いたら、まず何をすべき?

では、実際に連絡票が手元に届いたら、どのような順番で対応すればよいのでしょうか。以下の5つのステップで進めていきましょう。

ステップ1:譲渡所得(利益)が出ているか計算する

まず、今回の不動産売却で「利益」が出たのか「損失」だったのかを計算します。この利益のことを税金の言葉で「譲渡所得」と呼びます。

譲渡所得の基本計算式を理解しよう

譲渡所得は、以下の計算式で求めます。非常に重要なので、ご自身の状況に当てはめてみましょう。

譲渡所得=収入金額−(取得費+譲渡費用)

  • 収入金額:不動産を売却して買主から得た金額です 。  
  • 取得費:売却した不動産の購入代金や、購入時にかかった費用のことです 。  
  • 譲渡費用:不動産を売却するために直接かかった費用のことです 。  

この計算結果がプラスになれば利益あり、マイナスになれば損失となります。

「取得費」とは?含まれるもの・含まれないもの

取得費は、単純な物件の購入代金だけではありません。以下のような費用も含まれます。

  • 土地や建物の購入代金、建築代金
  • 購入時の仲介手数料
  • 登記費用(登録免許税)、不動産取得税、印紙税など
  • リフォーム費用や設備の設置費用
  • 測量費など

【重要】建物の取得費は「減価償却」を考慮 建物は年月の経過とともに価値が減少していくと考えられており、その価値の減少分を「減価償却費」として購入代金から差し引く必要があります 。  

【もし購入時の契約書がなかったら?】 先祖代々の土地であったり、契約書を紛失したりして取得費が不明な場合は、売却金額の5%を「概算取得費」として計算することが認められています 。ただし、実際の取得費が5%を上回ることが証明できれば、そちらを使った方が有利です。  

「譲渡費用」とは?仲介手数料だけじゃない!

譲渡費用には、売却時に不動産会社に支払った仲介手数料のほか、以下のような費用が含まれます 。  

  • 売却時の仲介手数料
  • 売買契約書に貼った印紙税
  • 土地を売るために建物を解体した場合の解体費用
  • 売却のために行った測量費
  • 借家人に立ち退いてもらうために支払った立退料

これらの費用を証明する契約書や領収書を探し、正確な金額を計算することが節税の第一歩です。

ステップ2:確定申告が必要か不要か判断する

譲渡所得の計算ができたら、次にあなたが確定申告をすべきかどうかを判断します。ここが最も間違いやすいポイントなので、慎重に確認しましょう。

あなたの状況は?確定申告は…
Q1. 譲渡所得がマイナス(損失)になった原則、不要です。ただし、税金の特例(損益通算など)を利用して他の所得と相殺したい場合は、確定申告が必要になります 。  
Q2. 譲渡所得がプラス(利益)になった必ず必要です。利益の大小にかかわらず、確定申告をして納税する義務があります 。  
Q3. 利益は出たが、特例(後述)を使えば税金が0円になる必ず必要です。「税金が0円=申告不要」ではありません。特例を使うためには、確定申告という手続きを通じて「私はこの特例を使います」と意思表示をする必要があるのです 。  

この「特例を使う場合も確定申告が必要」という点を忘れてしまい、申告漏れとなるケースが非常に多いです。ご注意ください。

ステップ3:自宅売却の特例「3,000万円特別控除」を理解する

ステップ2で出てきた「特例」の中で、自宅を売却した際にほとんどの方が利用を検討するのが「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」です 。  

これは、譲渡所得から最大で3,000万円を差し引くことができる、非常に強力な制度です 。  

例えば、譲渡所得が2,500万円だった場合、この特例を使えば課税対象となる所得が0円になり、結果として所得税・住民税はかかりません。

2,500万円(譲渡所得)−3,000万円(特別控除)=0円(課税譲渡所得)

ただし、この特例を利用するには、以下のような複数の要件をすべて満たす必要があります 。  

  • 自分が住んでいる家屋(マイホーム)の売却であること
  • 住まなくなってから3年後の年末までに売却すること
  • 売却した年の前年、前々年にこの特例を使っていないこと
  • 親子や夫婦など、特別な関係の相手への売却ではないこと

この特例の適用を受けるためには、必ず確定申告が必要です 。詳細は国税庁のウェブサイトで確認するか、税理士にご相談ください。  

【出典】

  • 国税庁 タックスアンサー No.3302「マイホームを売ったときの特例」 
  • e-Gov法令検索 「租税特別措置法」第三十五条  

ステップ4:連絡票に回答を記入・返送する

ここまでのステップでご自身の状況が整理できたら、いよいよ連絡票に回答を記入します。

連絡票には、売却した不動産の情報、売却価格、取得費、譲渡費用などを記入する欄があります 。ステップ1で計算した内容に基づき、  

必ず正確な情報を記入してください。

もし、確定申告が必要だと判断した場合は、「確定申告を行う予定です」といった趣旨の回答欄にチェックを入れて返送します。利益がないと判断した場合は、計算した取得費などを記入し、「利益がないため申告しません」という形で返送することになります 。  

虚偽の金額を記載すると、後の税務調査で必ず発覚し、かえって重いペナルティ(重加算税など)を課されるリスクがあります。絶対にやめましょう 。  

ステップ5:確定申告の準備を進める(必要な場合)

確定申告が必要だと判断した方は、連絡票の返送と並行して、申告の準備を始めましょう。確定申告の期間は、原則として売却した年の翌年2月16日から3月15日までです 。  

申告には多くの書類が必要となるため、早めに準備を始めることが大切です。

書類の種類主な内容・入手先
売却時の書類売買契約書のコピー、仲介手数料などの領収書  
購入時の書類売買契約書のコピー、仲介手数料などの領収書  
譲渡所得の内訳書譲渡所得の計算過程を記入する書類。国税庁のサイトから入手可能 。  
登記事項証明書売却した不動産の情報が記載されたもの。法務局で入手。
本人確認書類マイナンバーカードなど。

書類の作成が難しい、計算に自信がないという方は、無理せず税務署や税理士などの専門家に相談することをおすすめします 。  

Q&A:よくある質問

Q1. 利益がない(譲渡損失)のに連絡票が届きました。どうすればいい?

A1. 売却によって損失が出た場合、原則として確定申告の義務はありません。連絡票には、計算した取得費や譲渡費用を正直に記入し、「譲渡所得はマイナス(損失)のため申告は不要です」という趣旨で回答・返送すれば問題ありません 。  

Q2. 連絡票を無視し続けたら、どうなりますか?

A2. 法的な罰則はすぐにはありませんが、放置すると税務署から電話や手紙で督促が来ます。それでも対応しないと「何か隠しているのでは?」と疑われ、税務調査の対象となる可能性が高まります。調査の結果、申告漏れが発覚すれば、本来の税金に加えて無申告加算税や延滞税といったペナルティが課されます。必ず対応しましょう 。  

Q3. 連絡票に嘘の金額を書いてもバレませんか?

A3. バレます。税務署は登記情報や不動産業者から提出される資料(支払調書)などから、売却価格を正確に把握しています 。取得費などについて虚偽の記載をしても、税務調査が入れば契約書等の確認で必ず発覚します。意図的な所得隠しと判断された場合、最も重いペナルティである「重加算税」(最大40%)が課されることもあります 。正直な回答が最善です。  

まとめ:税務署からの「お尋ね」は、冷静・正確な対応が鍵

今回は、税務署から「譲渡所得の申告についての連絡票」が届いた際の正しい対応について解説しました。

最後に、大切なポイントをもう一度おさらいします。

  1. 慌てないこと。 この書類は、あくまで状況を確認するための「お尋ね」です。
  2. 無視しないこと。 必ず正直に、そして正確に回答して返送しましょう。
  3. 正確に計算すること。 売却益(譲渡所得)の有無を正しく計算することが全ての基本です。
  4. 「特例利用=申告必須」と覚えること。 3,000万円控除などを使う場合は、税金が0円でも確定申告が必要です。

この「お尋ね」は、ご自身の不動産売却に関する税金の手続きを、改めて見直す良い機会です。この記事を参考に冷静に対応を進め、もし少しでも不安や疑問があれば、お近くの税務署や税理士にご相談ください。


ここでは、あくまで私個人の視点から、皆様のご参考としていくつかの書籍を挙げさせていただきます。

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