こんにちは!公認会計士のSatoです。
まずは、日商簿記2級の合格おめでとうございます!
連結会計や工業簿記など、多くの難関論点を乗り越えてきた皆さんは、すでに「会計の共通言語」を身につけた、市場価値の高い人材です。
さて、一つの大きな山を越えた皆さんは、今、こんなことを考えているかもしれません。
「簿記2級の勉強、大変だったけど面白かった。もっと上を目指せるかな?」
「合格したけど、この先のキャリアはどうしよう?」
「簿記1級、公認会計士、税理士…名前は聞くけど、何が違うの?」
簿記2級の合格は、会計キャリアにおける重要なマイルストーンですが、ゴールではありません。より高度な専門性を身につけ、キャリアの可能性をさらに広げるためには、次のステージを見据えることが大切です。
簿記2級からの代表的なステップアップとしては、「日商簿記1級」「公認会計士」「税理士」の3つの資格が挙げられます。私自身、公認会計士として今ここにいますが、かつては皆さんと同じように、簿記2級の次にどの道に進むべきか真剣に悩んだ一人です。
この記事では、これら3つの上級資格がどのように異なり、それぞれどんな人に向いているのかを、表を使いながら徹底的に比較・解説します。
簿記2級最短合格シリーズ(全10回)について、これまでに記載した記事はこちらになります。
- 簿記2級最短合格(1)簿記2級最短合格ロードマップ|勉強法から最新出題傾向まで4ステップで解説
 - 簿記2級最短合格(2)簿記2級の工業簿記は全体像で攻略!苦手を得点源に変える原価計算マップ
 - 簿記2級最短合格(3)【図解で秒速理解】工業簿記の個別・総合原価計算はボックス図で攻略
 - 簿記2級最短合格(4)工業簿記の最重要論点!標準原価計算の差異分析とCVP分析を徹底解説
 - 簿記2級最短合格(5)【簿記2級・連結会計】タイムテーブルの書き方を攻略!公認会計士が仕訳を図解
 - 簿記2級最短合格(6)簿記2級の頻出論点「税効果・リース・外貨」を公認会計士が解説!
 - 簿記2級最短合格(7)【公認会計士が教える】簿記2級直前期!本番で焦らない時間配分と解く順番の鉄則
 - 簿記2級最短合格(8)簿記2級ネット試験の不安解消!当日の持ち物・流れ・PC操作を公認会計士が解説
 - 簿記2級最短合格(9)簿記2級で年収はいくら上がる?未経験からの転職成功事例とリアルな仕事内容
 - 簿記2級最短合格(10)簿記2級の次は?簿記1級・公認会計士・税理士へのステップアップを徹底比較
 
目次
あなたのキャリアプランは?3つの上級資格を徹底比較
まずは、3つの資格の全体像を比較してみましょう。これらは似ているようで、その性質、求められる学習スタイル、そしてその先のキャリアパスは大きく異なります。
| 資格名 | 主な業務内容 | 試験の難易度・特徴 | 学習スタイル | こんな人におすすめ | 
| 日商簿記1級 | 高度な会計処理、経営分析、経営管理 | 合格率約10%前後の難関。会計理論の深い理解が問われる。 | 深く掘り下げる探求型 | 企業の経理・財務部門でスペシャリストを目指す人、税理士試験の受験資格を得たい人 | 
| 公認会計士 | 監査(独占業務)、コンサルティング、税務 | 短答式・論文式の二段階選抜。短期間での膨大な学習量が必要。三大国家資格の一つ。 | 全力集中型のスプリント | フルタイムでの学習も視野に入れ、数年で最高峰の会計資格を目指したい人 | 
| 税理士 | 税務代理・税務書類作成(独占業務)、コンサル | 科目合格制。1科目ずつ数年かけて合格を目指せる。 | コツコツ積み上げ型のマラソン | 働きながら自分のペースで学習を進め、税務のプロフェッショナルを目指したい人 | 
ご覧の通り、一言で「会計の上級資格」と言っても、その姿は三者三様です。
例えるなら、簿記1級は「より深く掘る探求家」、公認会計士は「短距離走のスプリンター」、税理士は「長距離走のマラソンランナー」と言えるかもしれません。
それぞれを詳しく見ていきましょう。
より深い会計のプロへ「日商簿記1級」
まずは、簿記2級の直系の上位資格である簿記1級です。
簿記1級の試験概要と難易度
日商簿記1級は、簿記検定の最高峰であり、極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算の知識が問われます。
- 難易度: 合格率は毎回10%前後で推移する非常に難易度の高い試験です。
 - 特徴: 簿記2級が「処理能力」を重視するのに対し、簿記1級は「なぜその処理をするのか」という会計基準や会社法の背景にある理論的な理解まで求められます。
 - 学習時間: 一般的に、合格に必要な学習時間は500~1,000時間程度とされています。簿記2級が実務家のための「パスポート」なら、簿記1級は会計理論を深く理解した「会計の専門家」の証明と言えるでしょう。
 
簿記1級取得のメリット:税理士試験の受験資格
簿記1級を取得する実務上のメリットは、大企業の経理・財務部門への転職で極めて高く評価される点にあります。
そして、もう一つの最大のメリットが、国家資格である「税理士試験」の受験資格が得られることです。詳しくは後述しますが、大学で特定の単位を取得していない社会人にとって、簿記1級の合格は、税理士への挑戦権を得るための最も一般的なルートとなっています。
監査の独占業務を担う「公認会計士」
次に、私自身も保有する公認会計士資格です。
公認会計士試験の概要:短答式と論文式の二段階選抜
公認会計士は、医師・弁護士と並ぶ三大国家資格の一つであり、企業の決算書が正しいかをチェックする「監査」を独占業務として行える唯一の資格です。
- 受験資格: 最大の特徴は、受験資格の制限が一切ないことです。学歴や国籍、年齢を問わず、誰でも挑戦できます。(公認会計士・監査審査会HP参照)
 - 試験制度: 試験は2段階選抜です。
- 短答式試験(マークシート式): 財務会計論、管理会計論、監査論、企業法の4科目。
 - 論文式試験(記述式): 会計学、監査論、企業法、租税法、選択科目の計5科目。
 
 - 特徴: 税理士試験とは対照的に、短期間にこれら広範な科目を一気に学習し、合格を掴み取る必要があります。まさに「オール・オア・ナッシングのスプリント(短距離走)」と言われる所以です。
 
公認会計士のキャリアパスと魅力
合格後は、多くの人が私と同じように監査法人に就職し、実務経験を積みます。監査法人での経験を積んだ後は、独立開業、コンサルティングファームへの転職、事業会社のCFO(最高財務責任者)など、会計・金融分野において極めて多様で魅力的なキャリアパスが広がっています。
より詳しい公認会計士のキャリアパスについては、こちらの記事でも解説しています。
公認会計士という最難関資格を本気で目指すなら、合格実績が豊富な専門学校を選ぶことが合格への最短ルートです。各種資格講座の無料資料請求により比較検討することをお勧めします。
税務のスペシャリスト「税理士」
最後に、税務のスペシャリストである税理士です。
税理士試験の概要:科目合格制という大きな特徴
税理士は、税に関する専門家として、納税者に代わって税務申告を行ったり(税務代理)、税務書類を作成したりする(独占業務)国家資格です。
- 試験制度: 最大の特徴は「科目合格制」を採用している点です。
 - 合格要件: 会計2科目(簿記論、財務諸表論)と、税法科目(法人税法、所得税法、相続税法など9科目から3科目を選択)の、合計5科目に合格する必要があります。
 - 特徴: 一度に5科目全てに合格する必要はなく、1科目ずつ受験することが可能です。そして、一度合格した科目は生涯有効です。この制度により、働きながら毎年1~2科目ずつ合格を積み重ねていくという、「コツコツ積み上げるマラソン」のような長期的な学習計画が可能になります。
 
税理士試験の受験資格【簿記1級が活きる】
税理士試験は、誰でも受験できるわけではありませんでした。しかし、制度が変わり、2023年度(令和5年度)試験から、会計2科目(簿記論・財務諸表論)については受験資格が撤廃され、どなたでも受験可能になりました。
ただし、税法科目(法人税法など)については、従来通り以下のいずれかの受験資格を満たす必要があります。(国税庁HP参照)
- 学識: 大学・短大等を卒業し、社会科学に属する科目を1科目以上履修
 - 資格: 日商簿記検定1級合格 または 全経簿記検定上級合格
 - 職歴: 会計や税務に関する事務に2年以上従事
 
ここで、簿記1級が輝きます。大学で法律や経済学を履修してこなかった社会人にとって、日商簿記1級の合格は、税法科目の受験資格を得るための王道ルートなのです。
まとめ:あなたに合った「次の道」を見つけよう
簿記2級の次に進むべき3つの道、その違いがクリアになりましたか。
- 日商簿記1級:より深い会計理論を探求したい人。企業の経理スペシャリストや、税理士への足掛かりが欲しい人。
 - 公認会計士:受験資格なし。数年間勉強に集中してでも、監査という独占業務を手に入れ、キャリアの幅を最大化したい人。
 - 税理士:働きながらでも、科目合格制 を利用して自分のペースでコツコツと専門性を高め、税務のプロになりたい人。
 
どの道を選んでも、簿記2級の学習で培った知識と努力は、間違いなくあなたの土台となります。ご自身の学習スタイル(スプリント型かマラソン型か)や、将来なりたい姿を想像しながら、ワクワクする「次の道」を選んでください。
まずは簿記2級の合格 を確実に掴み取り、新たなステージへの扉を開きましょう!
いずれの資格も短期合格を本気で目指すなら、合格実績が豊富な専門学校を選ぶことが合格への最短ルートです。各種資格講座の無料資料請求により比較検討することをお勧めします。
よくある質問(Q&A)
簿記2級に合格したら、次は絶対に簿記1級を受けるべきですか?
必須ではありません。簿記2級の知識を活かして実務経験を積む道も素晴らしい選択です。ただし、企業の経理スペシャリストを目指す場合や、将来的に税理士を目指す(税法科目の受験資格が欲しい)場合には、簿記1級の取得が非常に有力な選択肢となります。
公認会計士試験は、大学に行っていないと受験できませんか?
いいえ、受験できます。公認会計士試験には学歴、年齢、国籍などの受験資格制限は一切ありません。簿記2級の知識があれば、どなたでも挑戦のスタートラインに立つことができます。(公認会計士・監査審査会HP参照)
税理士試験は働きながらでも合格できますか?
可能です。税理士試験は、一度合格した科目は生涯有効となる「科目合格制」を採用しています。そのため、社会人として働きながら「今年は1科目だけ」というように、自分のペースで数年かけて5科目合格を目指す方が非常に多いのが特徴です 。
簿記1級を持っていれば、税理士試験の一部科目が免除されますか?
いいえ、科目の「免除」にはなりません。ですが、簿記1級に合格すると、税理士試験のうち「税法科目」を受験するための「受験資格」を得ることができます。なお、会計2科目(簿記論・財務諸表論)は2023年から受験資格が撤廃され、誰でも受験可能になっています。
簿記1級、公認会計士、税理士で、どれが一番難しいですか?
難しさの種類が異なります。一般的に、試験範囲の広さと短期集中の学習量を求められる公認会計士が最難関の「三大国家資格」の一つとされます 。一方で、税理士試験も「科目合格制」とはいえ、5科目揃えるまでに長期間を要する難関試験です。簿記1級も、合格率10%前後 の非常に難易度が高い試験であり、会計理論の深い理解が求められます。
数ある簿記専門学校、転職エージェントの中からいくつかご紹介致します。キャリアアップの参考としてください。
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