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簿記2級最短合格(4)工業簿記の最重要論点!標準原価計算の差異分析とCVP分析を徹底解説

Sato|元・大手監査法人公認会計士が教える会計実務!

Sato|公認会計士| あずさ監査法人、税理士法人、コンサルファームを経て独立。 IPO支援・M&Aを専門とし、企業の成長を財務面からサポート。 このブログでは、実務に役立つ会計・税務・株式投資のノウハウを分かりやすく解説しています。

こんな方におすすめ

  • 標準原価計算の差異分析が苦手な方
  • CVP分析の公式を丸暗記している方
  • 工業簿記を得点源にしたい方
  • 管理会計の考え方を学びたい方

「工業簿記って、計算ばっかりでつまらない…」「差異分析って、何のためにやってるの?」

公認会計士として実務に携わる今でこそ、その面白さがわかりますが、受験生時代の私も、あなたと同じように感じていました。特に「標準原価計算」は、多くの公式が登場し、ただの暗記科目のように思えてしまうかもしれません。

しかし、もしあなたが工業簿記に対してそんなイメージを持っているとしたら、非常にもったいない!標準原価計算やCVP分析は、単なる試験テクニックではありません。これらは、会社の未来を左右する経営者の意思決定に欠かせない、強力な「武器」なのです。

この記事では、元受験生の公認会計士である私が、難解に見えるこれらの論点を「なぜそれが必要なのか?」という本質から解きほぐし、あなたの「わからない」を「面白い!」に変えてみせます。この記事を読み終える頃には、あなたは工業簿記の最重要論点をマスターし、合格を大きく引き寄せているはずです。

sato
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計算が複雑で独学に限界を感じている方は、専門学校でプロの指導を受けるのも一つの手です。まずは資料請求で、自分に合った講座を探してみてはいかがでしょうか。

標準原価計算とは?「目標」と「実績」を比較する管理会計の真髄

これまでに学んだ実際原価計算は、いわば「家計簿」のようなものです。実際にかかったお金(コスト)を集計し、「先月はこれだけ使いました」という過去の事実を記録します。

それに対して「標準原価計算」は、「未来への道しるべ」であり、「予算」に近い考え方です。科学的な分析に基づき、「製品を1個作るには、本来このくらいのコスト(=標準原価)でできるはずだ」という目標値をあらかじめ設定します。そして、実際にかかったコスト(=実際原価)とこの目標値を比較し、その差額(=原価差異)を分析することで、経営上の問題点を発見し、改善につなげることを目的とします。

これは、単に過去を記録する「財務会計」の領域を超え、経営者の意思決定に役立つ「管理会計」の根幹をなす考え方なのです(原価計算基準 四一)。

なぜ標準原価計算が必要なのか?

標準原価計算の最大のメリットは、非効率な部分、つまり「無駄」を数値で明確にできる点にあります。

例えば、実際原価が目標より高かった場合、その原因が「材料を高く買いすぎた」のか、「材料を無駄遣いした」のか、「作業に時間がかかりすぎた」のかを突き止め、それぞれ責任を負うべき部署(購買部や製造部など)に改善を促すことができます。

この理想的な原価(標準原価)は、勘や経験だけでなく、過去の実績データや工学的な調査などに基づいて、科学的・統計的に設定されます 4。この手順を踏んで設定された標準は、単なる夢物語の目標ではなく、達成可能な効率的操業レベルを示すベンチマークとして機能するのです。

標準原価計算の5ステップ

標準原価計算は、以下の5つのステップで進められます。

  1. 原価標準の設定: 製品1単位あたりの目標原価(標準材料費、標準労務費など)を決定し、「標準原価カード」を作成します。
  2. 標準原価の計算: 当月の生産量に、設定した原価標準を掛けて、当月の目標総額(標準原価)を計算します。
  3. 実際原価の計算: 当月に実際にかかった原価を集計します。
  4. 原価差異の計算: 標準原価と実際原価の差額(トータルの差異)を計算します。
  5. 原価差異の分析: 計算された差異の原因を、さらに細かく分析します。

直接材料費差異と直接労務費差異の分析をマスターする

原価差異分析の基本は、直接材料費と直接労務費の分析です。これらの差異は通常、「価格(単価)」が原因で生じたものと、「使用量(数量や時間)」が原因で生じたものに分解して分析します。

価格差異と数量差異の違いとは?【責任部門の視点】

この分析が重要なのは、差異の原因によって責任を負うべき部門が異なるからです。

差異の種類計算式意味主な責任部門
価格差異(標準単価 - 実際単価) × 実際消費量材料を目標より高く(安く)購入した差異購買部門
数量差異(標準消費量 - 実際消費量) × 標準単価標準より多く(少なく)材料を使った差異製造部門

ポイント:

  • 価格差異は「単価のズレ」が原因なので、実際に使った量(実際消費量)に乗じて影響額を計算します。責任は主に、購入価格を決める購買部門にあります。
  • 数量差異は「使用量のズレ」が原因なので、ブレてはいけない目標単価(標準単価)に乗じて、純粋な数量の影響だけを計算します。責任は主に、材料を使う製造部門にあります。

直接労務費も全く同じ考え方で、時給の差である「賃率差異(ちんりつさい)」と、作業時間の差である「時間差異」に分析できます。

【最難関】製造間接費差異分析(四分法)を例題で攻略

製造間接費は、生産量に応じて変動する「変動費(電力料など)」と、生産量にかかわらず一定額発生する「固定費(減価償却費など)」が混在しているため、分析が少し複雑になります。簿記2級では、公式法変動予算を用いた四分法による分析が主流です。

予算差異、能率差異、操業度差異の関係性

製造間接費差異は、以下の4つの差異に分解されます。それぞれの意味をしっかり理解しましょう。

  1. 予算差異:
    • 意味: 実際に作業した時間内で「使ってよいと認められる予算額」と、「実際に発生した金額」との差。純粋な予算管理がうまくいっていたかを示します。
    • 計算: 予算許容額 - 実際発生額
  2. 変動費能率差異:
    • 意味: 製品を作るのにかかった「標準時間」と「実際時間」の差が、変動費に与えた影響。作業の効率性を示します。
    • 計算: (標準操業度 - 実際操業度) × 変動費率
  3. 固定費能率差異:
    • 意味: 製品を作るのにかかった「標準時間」と「実際時間」の差が、固定費に与えた影響。これも作業の効率性を示します。
    • 計算: (標準操業度 - 実際操業度) × 固定費率
  4. 操業度差異:
    • 意味: 「予定していた生産レベル(基準操業度)」と「実際に生産したレベル(実際操業度)」との差。設備を有効活用できたかを示します。
    • 計算: (実際操業度 - 基準操業度) × 固定費率

手順を追って理解する差異分析【設例】

【設例】

  • 当月の製造間接費予算:変動費率 @¥200/時間、固定費 ¥1,000,000
  • 基準操業度(予定生産時間):5,000時間
  • 当月の実際発生額:¥1,950,000
  • 当月の実際操業度(実際作業時間):4,800時間
  • 当月の生産量から計算した標準操業度(本来かかってよい時間):4,700時間

【計算手順】

  1. 各数値を整理する
    • 実際発生額 = ¥1,950,000
    • 予算許容額 = (¥200 × 4,800時間) + ¥1,000,000 = ¥1,960,000
    • 標準配賦額 = (¥200 × 4,700時間) + (¥200 × 4,700時間) = ¥1,880,000 ※これは変動費と固定費の合計
    • 固定費率 = ¥1,000,000 ÷ 5,000時間 = @¥200/時間
  2. 各差異を計算する
    • 予算差異 = ¥1,960,000 - ¥1,950,000 = ¥10,000 (有利差異)
      • (予算より実際が少ないので、会社にとって有利)
    • 能率差異 = (4,700時間 - 4,800時間) × (@¥200 + @¥200) = ¥40,000 (不利差異)
      • (標準より実際時間が多くかかったので、不利)
    • 操業度差異 = (4,800時間 - 5,000時間) × @¥200 = ¥40,000 (不利差異)
      • (予定より稼働しなかったので、不利)
  3. 合計差異の検算
    • 総差異 = 実際発生額 ¥1,950,000 - 標準配賦額 ¥1,880,000 = ¥70,000 (不利差異)
    • 分析した差異の合計 = 予算差異 ¥10,000(有利) + 能率差異 ¥40,000(不利) + 操業度差異 ¥40,000(不利) = ¥70,000 (不利差異)
    • 合計が一致したので、計算は正しいとわかります。

標準原価計算の仕訳処理

標準原価計算を採用した場合、仕掛品勘定への原価の投入は、すべて「標準原価」で行われます。そして、実際原価との差額は、各「原価差異勘定」で処理されます。

【仕訳例】 材料を実際には1,100円分消費したが、標準では1,000円分でよかった場合(価格差異が原因とする)

勘定科目借方貸方
仕掛品1,000
材料費価格差異100
材料1,100

期末には、これらの原価差異勘定は、原則として売上原価に振り替えます(原価計算基準 四七)。

CVP分析(損益分岐点分析)の基本と応用

標準原価計算が過去の実績を分析するツールであるのに対し、CVP分析は未来の利益を計画するためのツールです。CVPはCost(費用)、Volume(販売量)、Profit(利益)の頭文字で、これらの関係性を分析します。

  • 損益分岐点: 利益がゼロになる、つまり赤字でも黒字でもない売上高または販売量のこと。
  • 貢献利益: 売上高から変動費を差し引いた利益。固定費を回収し、利益を生み出す源泉となります。

CVP分析を用いることで、「目標利益を達成するためには、あと何個売ればよいか?」といった、経営の意思決定に直結する問いに答えられるようになります。

【最重要公式】

  1. 貢献利益 = 売上高 - 変動費
  2. 貢献利益率 = 貢献利益 ÷ 売上高 (または 1 - 変動費率)
  3. 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 貢献利益率

【設例】

売価@¥1,000、変動費@¥600、固定費が月¥200,000の場合

  1. 貢献利益(1個あたり) = ¥1,000 - ¥600 = ¥400
  2. 貢献利益率 = ¥400 ÷ ¥1,000 = 40%
  3. 損益分岐点売上高 = ¥200,000 ÷ 40% = ¥500,000
    • (販売個数にすると、¥500,000 ÷ @¥1,000 = 500個)

つまり、月に500個販売すればトントン、501個目から初めて利益が出る、ということがわかります。

結論:工業簿記は「未来を創る」ための会計学

標準原価計算の差異分析は、過去の行動を振り返り「どこに改善の余地があったか」を教えてくれる鏡です。そしてCVP分析は、未来に向かって「どうすれば目標を達成できるか」を照らし出すコンパスです。

これらは単なる試験問題ではなく、ビジネスの現場で日々使われている実践的なツールです。この「管理会計」の視点を持つことで、工業簿記の学習は一気に面白くなります。

今回解説した手順と考え方をマスターすれば、工業簿記はあなたにとって安定した得点源になるだけでなく、将来ビジネスの世界で活躍するための強力な思考法を身につけることにも繋がります。頑張ってください!

sato
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次回は、「【簿記2級・連結会計】タイムテーブルの書き方で攻略!」について詳しく解説していく予定です。ぜひ、そちらもご覧ください。

よくある質問(Q&A)

なぜ原価差異を分析する必要があるのですか? 

 原価差異を分析する目的は、単に目標と実績の差額を計算することではありません。その差異が「なぜ発生したのか(原因)」を突き止め、「誰の責任か(責任の所在)」を明確にし、次の改善活動につなげるためです。例えば、材料の価格差異は購買部門、数量差異は製造部門の責任といったように、具体的なアクションを促すための重要な経営管理手法です。

製造間接費の差異分析が特に複雑なのはなぜですか?

それは、製造間接費が「変動費」と「固定費」という性質の異なる2つの費用で構成されているからです。変動費は生産量に比例して増減しますが、固定費は生産量にかかわらず一定額発生します。この2つの動きが異なる費用をまとめて管理・分析するため、予算差異、能率差異、操業度差異といった複数の視点からの分析が必要になり、計算が複雑になります。

貢献利益と営業利益は何が違うのですか? 

最も大きな違いは「固定費を引いているかどうか」です。貢献利益は「売上高-変動費」で計算され、固定費を回収して利益を生み出すための源泉がどれだけあるかを示します。一方、営業利益は「貢献利益-固定費」で計算され、会社全体として最終的にどれだけ利益が残ったかを示します。CVP分析では、この貢献利益という考え方が非常に重要になります。

計算した原価差異は、決算書で最終的にどう処理されるのですか?

「原価計算基準」によると、計算された原価差異は、原則として当年度の「売上原価」に加算または減算して処理します(これを「売上原価賦課」と言います)。ただし、材料の受入価格差異は期末の材料在庫にも按分するなど、一部例外的な処理もあります。また、異常な原因で発生したと認められる差異は、営業外費用や特別損失として処理される場合もあります(原価計算基準 四七)。

CVP分析(損益分岐点分析)は、実際のビジネスでどのように役立ちますか?

CVP分析は非常に実践的なツールです。例えば、「新製品の価格をいくらに設定すべきか」「あとどれだけ売上を伸ばせば、新しい設備投資の固定費を回収できるか」「広告宣伝費を増やした場合、販売量を何個増やせば利益を維持できるか」といった、日々の経営判断に直接役立つシミュレーションを行うことができます。


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Sato|公認会計士| あずさ監査法人、税理士法人、コンサルファームを経て独立。 IPO支援・M&Aを専門とし、企業の成長を財務面からサポート。 このブログでは、実務に役立つ会計・税務・株式投資のノウハウを分かりやすく解説しています。

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