日本公認会計士協会(経営研究調査会)は、2021年7月29日付けで経営研究調査会研究資料第8号「上場会社等における会計不正の動向(2021年版)」が公表されました。
なお、集計対象は2017年3月期~2021年3月期にかけて、各証券取引所における適時開示制度等で会計不正に関する公表のあった上場会社等を対象としております。
2021年3月期は25社が会計不正事実を公表
2021年3月期において、会計不正の発覚の事実を公表した上場会社等は25社でした。集計対象期間である2017年3月期以降、2020年3月期の46件で2121年3月期は、2019年3月期の33件を下回る結果となりました。
会計不正の類型と手口
2021年3月期に会計不正の発覚の事実を公表した上場会社のうち77.1%は粉飾決算によるものでした。なお、一般的には資産の流用による影響額よりも、粉飾決算による影響額の方が多額になることから、上場会社等が適時開示基準にのっとって公表する数は、粉飾決算の方が多くなると考えられます。
粉飾決算のうち45.9%が収益関連
2021年3月期に公表された粉飾決算のうち45.9%が収益関連(売上の過大計上、循環取引、工事進行基準)によるものでした。
やはり、収益関連項目は不正会計の対象となるケースが多いものと考えられます。
その他、在庫の過大計上や原価付け替えによる原価操作も過去から継続的に行われている不正の手口であるようです。
会計不正の発覚経路は内部統制によるものが多い
発覚経路としては、子会社から親会社への事業報告の際に発覚するケース、決算作業プロセスにおいて発覚するケース等、会社の内部統制によって会計不正が発覚するケースが多かった。不正の防止・発見の観点からは、有効な内部統制の構築が会社の継続的な課題になるものと考えられます。
会計不正の関与者は、役員・管理職によるものが多い
会計不正の主体的関与者は、役員・管理職であり、加えて共謀(外部及び内部)により会計不正を実行するケースが多かった。共謀による内部統制の有効性の低下又は経営者による内部統制の無効化が行われている可能性があり、このような場合不正発見がより困難になることが考えられます。
海外子会社で発生した会計不正の50%は中国において発生
会計不正の発生場所の半数以上は子会社(海外及び国内)で発生しており、海外子会社で発覚した不正のうち66%はアジアの子会社で発生しています。これは、アジア各国に日本の企業の多くが進出していることも関連しているようです。
最後に
過去から会計不正の手口や発生可能性が高い場所は変わっていないように感じました。
子会社(海外及び国内)のおける収益関連の不正は、過去から何度も発生している不正ですが、やはり、子会社にまで親会社の管理が行き届いていないことが一つの要因であると考えられます。
過去の不正事例を踏まえた上で、会社のどこで不正が行われる可能性があるのか、今一度考えてみても良いかもしれません。