2022年3月期から収益認識基準が適用されており、すでに第1四半期より注記開示が始まっています。
収益認識基準はでは、様々な注記の規定が設けられていますが、四半期報告書で求められているものは、「会計方針の変更の注記」及び「収益の分解情報」のみです。
ここでは、両者について既に開示された情報も考慮に入れた上で、会計基準の要求事項について確認していきます。
会計方針の変更の注記
収益認識基準の適用は、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更の場合に該当するため、原則、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用します。ただし、遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を、適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することができます。
おそらく、多くの企業がただし書き以降の経過措置を適用すると思われるため、経過措置を前提に主に以下の注記が必要となります。
①会計方針変更の内容
②経過措置の概要
③遡及適用の累積的影響額等
収益の分解情報
(1)収益の分解情報の注記
収益認識基準の適用に伴って、「顧客との契約から生じる収益」を、収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性を財務諸表利用者が理解できるようにするための以下の情報を注記することが新たに必要となります。
①収益の分解情報
②収益を理解するための基礎となる情報
③当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報
上記のうち、四半期開示で必要となるのは、①の「収益の分解情報」のみとなります。
(2)収益の分解区分の決定
四半期財務諸表では、収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期や不確実性などに影響を及ぼす「主要な要因」に分解して注記すること、及び、セグメント情報の開示をしている場合、報告セグメントの売上高との関係もわかるように注記すること、が求められています。
収益の分解区分の決定するに際し、上記「主要な要因」の特定は、企業ごとに下記の要因を考慮の上で決定することが求められます。
- 財務諸表外で開示している情報(例えば、決算発表資料、年次報告書、投資家向けの説明資料)
- 最高経営意思決定機関が事業セグメントに関する業績評価を行うために定期的に検討している情報
- 他の情報のうち、上記①及び②で識別された情報に類似し、企業又は企業の財務諸表利用者が、企業の資源配分の意思決定又は業績評価を行うために使用する情報
また、収益を分解するための区分の例示として、適用指針では以下が列挙されています。
- 財又はサービスの種類(例えば、主要な製品ライン)
- 地理的区分
- 市場又は顧客の種類(例えば、政府と政府以外の顧客)
- 契約の種類
- 契約期間
- 財又はサービスの移転の時期
- 販売経路(例えば、消費者に直接販売される財と仲介業者を通じて販売される財)
(3)セグメント情報注記への参照
収益認識会計基準は、セグメント情報の注記として示される収益の内訳情報が、収益認識会計基準における収益の分解情報の開示の定めにも基づいており、かつ、収益及びキャッシュ・フローの性質,金額,時期及び不確実性に影響を及ぼす主要な要因に基づく区分に分解した情報として十分であると判断される場合には、セグメント情報に追加して収益の分解情報を開示する必要はないとされております。
すなわち、セグメント注記において十分な情報が提供されている場合には、セグメント注記事項を参照することにより、収益の分解情報を注記しないことも考えられます。
一方で、上記(2)における、決算発表資料や取締役会資料における区分の水準でセグメント情報を記載していない場合には、収益の分解情報の注記は必要になるものと考えられます。