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新リース会計基準導入実務(4)新リース会計基準の使用権資産・リース負債の計算方法を公認会計士が徹底解説|短期・少額リースの論点も網羅

Sato|元・大手監査法人公認会計士が教える会計実務!

Sato|公認会計士| あずさ監査法人、税理士法人、コンサルファームを経て独立。 IPO支援・M&Aを専門とし、企業の成長を財務面からサポート。 このブログでは、実務に役立つ会計・税務・株式投資のノウハウを分かりやすく解説しています。

こんな方におすすめ

  • 新リース会計の計算方法が知りたい方
  • 使用権資産とリース負債の設例を見たい方
  • 割引率や少額リースの実務が不安な方
  • 2027年の新基準適用に備えたい方

こんにちは、公認会計士のSatoです。2027年4月から強制適用される新リース会計基準(企業会計基準第34号)への対応準備は進んでいらっしゃいますでしょうか。多くの企業様が準備を始める中で、特にご質問が多いのが、今回のテーマである「使用権資産とリース負債の具体的な計算方法」です。

一見すると複雑な計算に思えるかもしれませんが、一つひとつのステップを丁寧に進めれば、必ずご理解いただけます。この記事では、私が監査の現場やコンサルティングの場でクライアント様にご説明する際の流れに沿って、計算の全体像から、実務でつまずきやすい「割引率」の決定方法、そして例外規定である「短期リース・少額リース」の判断基準まで、設例や仕訳を交えながら、分かりやすく解説していきます。ぜひ最後までお付き合いください。

新リース会計のキホン:なぜすべてのリースを資産・負債計上するのか?

まず、新リース会計基準の最も核心的な変更点からおさらいしましょう。それは、これまで「オペレーティング・リース」として処理され、単に支払時に費用計上(オフバランス)されてきた多くの契約が、原則として貸借対照表(B/S)に資産と負債として計上(オンバランス)される点です。

これは、リース契約が「資産を使用する“権利”(= 使用権資産)」と「将来にわたってリース料を支払う“義務”(= リース負債)」の交換取引である、という考え方に基づいています。この会計処理により、企業の財政状態がより実態に即して財務諸表に表示されるようになります。これまでB/Sに現れていなかった潜在的な負債が可視化されることで、投資家は企業の財務リスクをより正確に評価できるようになるのです。

この変更の背景には、IFRS(国際財務報告基準)第16号との整合性を図るという大きな目的があります。グローバルな投資家が日本企業の財務諸表を見た際に、他国企業と比較しやすくするための重要な改正であり、日本の資本市場の透明性を高めることにも繋がります。

「現在価値」で計算する理由

ここで一つ疑問が浮かぶかもしれません。「なぜ将来支払うリース料の総額をそのまま負債として計上しないのか?」ということです。その答えは、「お金の時間的価値」にあります。

会計の世界では、金利の存在を前提とすると、「将来受け取る(支払う)100万円」と「現在手元にある100万円」の価値は同じではないと考えます。現在の100万円は、銀行に預ければ利息がついて将来は100万円以上に増えます。逆に言えば、将来の100万円の価値を現在の価値に直すと、100万円よりも少ない金額になります。

この「将来の価値を現在の価値に割り引く」計算を現在価値計算と呼びます。新リース会計基準では、この考え方を用いて、将来にわたるリース料の支払総額から金利の要素を除いた金額を、リース開始日時点の負債の価値として認識するのです。

計算の全体像:2ステップアプローチ

使用権資産とリース負債の計算は、以下の2つのステップで進めると非常に分かりやすくなります(企業会計基準第34号 第33.34項)。

  1. ステップ1:リース負債の計算将来支払うリース料の総額を、特定の「割引率」を使って現在価値に割り引きます。これがリース負債の計上額の基礎となります。
  2. ステップ2:使用権資産の計算ステップ1で計算したリース負債の金額をベースに、リース契約締結のために直接かかった費用などを加算して、使用権資産の計上額を決定します。

この2段階のアプローチを念頭に置きながら、次のセクションから具体的な計算方法を詳しく見ていきましょう。

ステップ1:リース負債の計算方法 - 3つの重要ポイント

リース負債は、「リース開始日においてまだ支払われていないリース料の現在価値」として定義されます(企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」第34項)。この計算を正確に行うためには、3つの重要なポイントを押さえる必要があります。

ポイント①:計算の土台となる「リース料」の範囲を正しく理解する

まず、現在価値計算の基礎となる「リース料」に何が含まれ、何が含まれないのかを正確に把握することが、すべての計算の出発点となります。計算対象となるリース料には、主に以下のものが含まれます(企業会計基準第34号 第33項)。

  • 固定リース料: 契約で定められた毎月10万円の支払額など、金額が確定しているリース料です。
  • 指数・レートに応じて決まる変動リース料: 消費者物価指数(CPI)や特定の基準金利など、客観的な指数やレートに連動して金額が変動するリース料です。ここで非常に重要なのは、売上高のX%といった、指数やレートに基づかない変動リース料は、当初のリース負債の計算には含めず、発生した期に費用として処理するという点です。
  • 残価保証に基づく支払見込額: リース期間終了時に、リース資産の市場価値が契約で定められた保証額を下回った場合に、借手が支払うと合理的に見込まれる金額です。
  • 購入オプションの行使価額: 借手がリース資産を買い取る権利(購入オプション)を持っており、その権利を行使することが「合理的に確実」である場合に、その行使価額をリース料に含めます。

これらのリース料の範囲を誤ると、その後のすべての計算がずれてしまうため、契約内容を慎重に確認する必要があります。以下の表は、実務で判断に迷いやすい項目をまとめたものですので、ぜひ参考にしてください。

表1: リース負債の計算に含めるリース料・含めないリース料

項目リース負債に含めるか?具体例と解説
固定リース料✔ 含める毎月定額の支払額など、金額が確定している部分。
指数・レート連動の変動リース料✔ 含める消費者物価指数(CPI)や市場金利に連動する部分。
売上高連動の変動リース料含めない「売上の5%」といった契約。発生時に費用処理します。
残価保証の支払見込額✔ 含める契約に基づき、支払いが合理的に見込まれる金額のみ。
購入オプション行使価額✔ 含めるオプションの行使が「合理的に確実」と判断される場合のみ。
維持管理費など(非リース部分)✖ 含めない契約に対価が含まれる場合、原則として按分して除外します。

ポイント②:実務最大の難関!「割引率」の決め方

将来のリース料を現在価値に割り引くための「割引率」の決定は、実務上最も判断が難しく、監査でも重点的に見られる項目です。割引率の選択によってリース負債の計上額が変動するため、恣意性を排除した合理的な決定プロセスが求められます。

割引率の決定には、会計基準で定められた明確な優先順位があります(企業会計基準第34号 第33項)。

  1. 貸手の計算利子率(リースの内在利子率)
    • 定義: リース契約に内包されている利子率のことです。
    • 使用条件: 借手がこの利率を「容易に知ることができる場合」にのみ使用します。例えば、ファイナンス・リース会社との契約で、見積書や契約書に利率が明記されているケースが該当します。しかし、不動産賃貸借契約などでは貸手の計算利子率が不明な場合がほとんどです。
  2. 借手の追加借入利子率(Incremental Borrowing Rate: IBR)
    • 定義: 貸手の計算利子率が不明な場合に用いる、いわば「次善の策」です。これは、借手が①リース資産と類似の資産を、②同様の期間、③同様の担保条件で調達するために必要となるであろう資金の利率を指します。
    • 実践的な算定方法: この利率は、各企業の信用力(社債の格付けなど)や、リース契約時点の市場金利環境を反映して、個別に算定する必要があります。実務的には、財務部門が金融機関からの実際の借入実績(例えば、長期借入金の利率やコミットメントラインの金利+信用スプレッドなど)を参考に、リース期間に応じた利率テーブル(イールドカーブ)を作成し、そこから適切な利率を決定する、というプロセスを構築することが望ましいでしょう。
sato
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【実務上の留意点】

私が監査の現場で最も重視するのは、このIBRの算定根拠が客観的な証拠に基づいてきちんと文書化されているか、という点です。「なぜ、このリース期間に対してこの利率を選んだのか」を合理的に説明できる準備が不可欠です。担当者個人の感覚的な判断ではなく、社内の財務部門などと連携し、組織として承認された算定プロセスを確立しておくことを強くお勧めします。これが、円滑な監査対応の鍵となります。

ポイント③:【設例】実際にリース負債を計算してみよう

それでは、具体的な数値を使ってリース負債を計算してみましょう。

<設例1:リース負債の計算>

  • 契約条件
    • リース期間:5年
    • 年間リース料:100万円(毎年期末払い)
    • 割引率(借手の追加借入利子率):2.0%
    • 貸手の計算利子率は不明とする。

この条件で、リース開始日におけるリース負債の額を計算します。計算式は、各年のリース料をそれぞれの割引率で現在価値に割り引いて合計するものです。

  • 計算過程
    • 1年目のリース料の現在価値: 1,000,000 \div (1 + 0.02)^1 = 980,392 円
    • 2年目のリース料の現在価値: 1,000,000 \div (1 + 0.02)^2 = 961,169 円
    • 3年目のリース料の現在価値: 1,000,000 \div (1 + 0.02)^3 = 942,322 円
    • 4年目のリース料の現在価値: 1,000,000 \div (1 + 0.02)^4 = 923,845 円
    • 5年目のリース料の現在価値: 1,000,000 \div (1 + 0.02)^5 = 905,731 円
  • リース負債の計上額
    • 上記を合計すると、リース負債の計上額は 4,713,459円 となります。
  • リース開始日の仕訳(暫定)このリース負債の計上額を基に、リース開始日にはまず以下の仕訳を起票します。
勘定科目借方貸方
使用権資産4,713,459
リース負債4,713,459

※この時点での「使用権資産」の金額はまだ確定ではありません。次のステップで、この金額に必要なコストを加算していきます。

ステップ2:使用権資産の計算方法 - リース負債に3つのコストを加算

リース負債の金額が確定したら、次に対応する使用権資産の金額を計算します。この計算は非常にシンプルで、ステップ1で計算したリース負債の金額をスタート地点とします。

そして、そのリース負債の額に、資産を使用可能な状態にするために直接かかったコストなどを加算します。これは、自己で固定資産を購入した際に、購入代金に付随費用を加えて取得原価を計算する考え方と非常によく似ています。

具体的には、以下の3つのコストをリース負債の額に加算します(企業会計基準第34号 第35項)。

  1. リース開始日までに支払ったリース料(前払リース料):契約時に敷金などとは別に支払う前払家賃などがこれに該当します。リース期間が始まる前に支払ったリース料は、資産の権利を得るための対価の一部と考えられるため、使用権資産の取得原価に含めます。
  2. 当初付随費用:これは、そのリース契約を締結しなければ発生しなかったであろう、追加的なコストを指します。
    • 含まれるものの例: 不動産仲介業者に支払った仲介手数料、契約書作成のための印紙税など。
    • 含まれないものの例: 社内の法務担当者や経理担当者の人件費、弁護士への一般的な法律相談費用など、その契約が成立しなくても発生したであろう費用は対象外です。
  3. 原状回復費用(資産除去債務):オフィスや店舗の賃貸借契約でよく見られるように、借手が契約終了時に資産を元の状態に戻す義務(原状回復義務)を負っている場合があります。この場合、将来発生すると見積もられる原状回復費用を、リース開始日時点の現在価値に割り引いて計算し、使用権資産の取得原価に加算します。この会計処理は、「資産除去債務に関する会計基準」の考え方に基づいています。将来の義務を現時点で負債(資産除去債務)として認識し、その見合いとして対応する資産(この場合は使用権資産)の価値を増やす、という処理になります。
sato
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【リース・インセンティブの控除について(企業会計基準第34号 第33項)】

リース・インセンティブとは、貸手が借手に対して提供する、リース契約の締結を促進するための金銭的な便益のことを言います。具体的には、借手が空室を埋めるための家賃を減額したり、初期費用の一部を負担したりといった形式があります。会計処理上は、リース・インセンティブは、使用権資産の初期計上額を減額する目的で控除されることになります。

使用権資産初期計上額=リース料総額(リース負債+前払リース料+付随費用+原状回復費用)ーリース・インセンティブ

【設例】すべてのコストを合算して使用権資産を計上する

それでは、設例1のケースにこれらの追加コストを加えて、最終的な使用権資産の計上額を計算し、仕訳を完成させましょう。

<設例2:使用権資産の計算>

  • 前提条件
    • リース負債(設例1より):4,713,459円
    • 前払リース料:なし
    • 当初直接費用(不動産仲介手数料):50,000円(現金で支払済み)
    • 原状回復費用:5年後に200,000円の支出が見込まれる。
    • 割引率:2.0%
  • 計算過程
    1. 原状回復費用の現在価値を計算する将来の支出200,000円を、割引率2.0%、期間5年で現在価値に割り引きます。200,000 \div (1 + 0.02)^5 = 181,146 円この金額が「資産除去債務」として負債計上されます。
    2. 使用権資産の最終計上額を計算するリース負債の額に、当初直接費用と原状回復費用の現在価値を加算します。使用権資産 = リース負債 + 当初直接費用 + 原状回復費用の現在価値= 4,713,459円 + 50,000円 + 181,146円 = 4,944,605 円
  • リース開始日の最終的な仕訳以上の計算結果を反映させると、リース開始日の仕訳は以下のようになります。
勘定科目借方貸方
使用権資産4,944,605
リース負債4,713,459
現金預金50,000
資産除去債務181,146

この仕訳をもって、リース契約がB/Sにオンバランスされたことになります。この後、決算期ごとに使用権資産の減価償却と、リース負債に係る支払利息の計上が行われていきます。

実務の負担を軽減!簡便法の適用要件(短期リース・少額リース)

すべてのリース契約で、これまで見てきたような複雑な資産・負債計上を行うのは、企業の経理担当者にとって大きな負担となります。そこで、実務上の負担を軽減するため、重要性が乏しい特定のリースについては、この原則的な処理を免除し、従来通り支払ったリース料を費用処理する簡便な取り扱いが認められています。

この簡便法を適用するためには、企業として明確な会計方針を定め、それを継続的に適用することが求められます。どの契約を対象外とするか恣意的に判断することはできず、一貫したルール作りが不可欠です。

短期リースとは?(12か月以内)

まず一つ目の免除規定が「短期リース」です。

  • 要件: 以下の2つの条件を両方とも満たすリースを指します(企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」第4項(2).20項)。
    1. リース開始日時点におけるリース期間が12か月以内であること。
    2. 借手による購入オプションを含まないこと。
sato
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【実務上の留意点】

例えば、契約書上の期間は11か月でも、契約終了後に更新することが経済的合理性からみてほぼ確実であるような場合、実質的なリース期間は12か月を超えると判断され、短期リースに該当しない可能性があります。形式的な契約期間だけでなく、実態を踏まえた判断が必要です。

少額リースとは? - 会計方針の選択が重要

二つ目の免除規定が「少額リース」です。こちらは短期リースと異なり、画一的な基準があるわけではなく、企業が自社の状況に合わせて会計方針として採用する基準を選択する必要があります 。実務上、主に以下の2つのアプローチが考えられます(企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」第22項)。

  1. アプローチA:リース料総額300万円以下基準
    • 根拠: これは、日本の従来のリース会計実務で広く用いられてきた考え方を踏襲したものです。
    • 判定方法: リース契約1件あたりのリース料総額(原則として、オプション期間などを含めた実質的なリース期間全体で計算)が300万円以下であるかどうかで判定します。
    • 特徴: 多くの日本企業にとって馴染み深く、過去のデータとの比較もしやすいため、導入しやすいアプローチと言えます。
  2. アプローチB:新品時の原資産の価値が少額である基準
    • 根拠: こちらはIFRS第16号の考え方と整合性をとったアプローチです。金額の目安として5,000米ドル以下が念頭に置かれています。
    • 判定方法: 支払うリース料の総額ではなく、リースしている資産そのもの(例えば、ノートパソコン、コピー機、オフィス家具など)の新品時点での価値で判断します。
    • 特徴: IFRSを任意適用している企業や、海外に多くの子会社を持つグローバル企業にとっては、グループ全体で統一した会計方針を適用しやすく、連結財務諸表作成時の組替作業を削減できるという大きなメリットがあります。

どちらのアプローチを選択するかは、企業の事業規模やグローバル展開の状況などを考慮して決定すべき重要な経営判断です。以下の比較表を参考に、自社に最適な方針を検討してください。

表3: 少額リースの会計方針 - 2つのアプローチ比較

比較項目アプローチA (300万円基準)アプローチB (新品時価額基準)
根拠日本の従来実務IFRS第16号
判定基準リース料総額原資産の新品時の価値
金額の目安300万円以下5,000米ドル(約70万円)以下
メリット導入が容易、国内企業向けグローバルな整合性、IFRS適用企業向け
デメリット国際的な比較可能性で劣る新品価額の把握が必要な場合がある
向いている企業国内中心の企業、従来の実務を継続したい企業IFRS適用企業、海外子会社が多い企業
sato
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【実務上の留意点】

どちらの基準を選択するにせよ、監査で問われるのは「なぜその基準を選んだのか」という論理的な説明責任です。例えば、「当社の固定資産計上基準が20万円以上であることとの整合性を図りつつ、IFRSを適用する親会社との連結上の便宜を考慮し、新品価額5,000ドル基準を採用する」といった形で、選択の根拠を明確にした会計方針を文書化し、取締役会などで正式に承認を得ておくことが、将来の監査対応を格段にスムーズにします。

まとめ

今回は、新リース会計基準における借手の会計処理の第一歩である「使用権資産とリース負債の計算方法」について、具体的なステップと設例を交えて解説しました。

最後に、本日の重要なポイントを振り返ります。

  • 計算の基本: 将来のリース料を「現在価値」に割り引いて、リース負債と使用権資産を計上する。
  • ステップ1(リース負債): 計算の基礎となる「リース料の範囲」を正確に把握し、実務上最も重要な「割引率」を合理的に決定する。
  • ステップ2(使用権資産): リース負債の額をベースに、「前払リース料」「当初直接費用」「原状回復費用」の3つのコストを加算する。
  • 簡便法: 実務負担を軽減するため、「短期リース」と「少額リース」の免除規定を理解し、自社の方針を明確に定めておく。

一連の計算プロセスは複雑に見えるかもしれませんが、一つひとつの要素を分解して丁寧に対応すれば、決して難しいものではありません。2027年の強制適用はまだ少し先に感じられるかもしれませんが、自社がどのようなリース契約をどれだけ保有しているのか、その全体像を早期に把握し、試算を始めることが、スムーズな移行の最大の鍵となります。

次回は、リース開始後に行う「使用権資産の減価償却」と「リース負債の利息計算」について詳しく解説していく予定です。ぜひ、そちらもご覧ください。

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次回は、リース開始後に行う「使用権資産の減価償却」と「リース負債の利息計算」について詳しく解説していく予定です。ぜひ、そちらもご覧ください。

よくある質問(Q&A)

売上高に連動する変動リース料は、なぜ最初のリース負債の計算に含めないのですか?

新リース会計基準では、将来の支払額が客観的に見積もれない変動要素は、当初の負債として認識しないという考え方を採用しているためです。売上高は将来の予測が困難なため、リース負債の計算からは除外され、実際に発生した会計期間で費用として処理されます。一方、消費者物価指数などは公表される客観的な指標であるため、計算に含めることとされています。

「借手の追加借入利子率(IBR)」を具体的にどうやって決めればよいか分かりません。簡単な方法はありますか? 

最も実践的な方法は、まず自社の財務部門に問い合わせ、現在金融機関から受けている借入金の金利(期間や担保の条件が近いもの)を確認することです。もし適切な借入実績がない場合は、取引銀行に「もし当社がX年間の期間で、Y円の設備投資のための資金を借り入れるとしたら、金利は何%程度になりますか?」とヒアリングし、その回答を文書で入手しておく方法も有効です。重要なのは、客観的な根拠を残すことです。

当社では少額の固定資産は10万円未満で費用処理しています。「少額リース」の基準も10万円にすべきでしょうか?

必ずしも一致させる必要はありません。会計基準適用指針では、リース料には利息相当額が含まれるため、固定資産の費用処理基準よりも高く設定できることが示唆されています(企業会計基準適用指針第33号 第22項(1)ただし書き)。自社の固定資産計上基準との整合性を保ちつつ、実務的な重要性を考慮して、例えば「新品価額が20万円以下の資産のリース」などを会計方針として定めることが考えられます。

リース期間の途中で契約条件が変更になった場合、使用権資産やリース負債の金額は修正する必要がありますか?

はい、原則として修正が必要です。例えば、リース期間を延長したり、対象となる資産の範囲が変更になったりした場合は、その変更が有効になる時点で、残りのリース料や新しい割引率を使ってリース負債を再測定し、その変動額を使用権資産の帳簿価額に反映させる会計処理(再測定)を行います。

原状回復義務があるかどうか不明確な場合はどうすればよいですか? 

まずはリース契約書を詳細に確認し、「原状回復」や「原状復旧」に関する条項の有無を確認してください。もし契約書に明記されていない場合でも、過去の慣行や貸主とのコミュニケーションから、事実上の義務が存在すると判断される場合は、資産除去債務の計上が必要になる可能性があります。法務部門や弁護士に契約内容の解釈を確認することも重要です。合理的な見積もりが困難な場合は、その旨を注記情報として開示することが求められる場合もあります。


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ここでは、あくまで私個人の視点から、皆様のご参考としていくつかの書籍を挙げさせていただきます。

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