5.スキルアップ

【簿記の最重要関門】「仕訳」を制する者は簿記を制す!会計士直伝の仕訳完全攻略法

はじめに:「仕訳」の壁に、もう悩まない!

「簿記の勉強を始めたけど、『仕訳』がさっぱりわからない…」 「借方と貸方って、一体何が違うの?」 「勘定科目が多すぎて、どれを使えばいいか混乱する…」

簿記3級の学習を始めたほとんどの方が、この「仕訳」という最初の、そして最大の壁にぶつかります 。こんにちは、公認会計士のSatoです。断言します。あなたのその悩み、非常によくわかります。しかし、同時にこうもお伝えしたいのです。  

「仕訳」を制する者は、簿記3級を制します。

なぜなら、近年の簿記3級試験では、配点100点満点のうち、実に45点がこの仕訳問題から出題されるからです 。つまり、仕訳は単なる一つの論点ではなく、合否を直接左右する、まさに簿記学習の「心臓部」なのです 。  

この記事では、会計のプロである公認会計士の視点から、多くの初学者がつまずく「仕訳」の考え方を、根本から徹底的に、そして世界一わかりやすく解説します。この記事を読み終える頃には、あなたはもう仕訳で迷わない、確固たる「判断の軸」を身につけているはずです。

なぜ仕訳はこんなに大事?試験と実務における「心臓部」としての役割

仕訳が簿記の心臓部と呼ばれるのには、明確な理由があります。

  1. 圧倒的な配点比率:前述の通り、試験全体の45%を占めます 。ここで安定して得点できなければ、合格は非常に難しくなります。  
  2. すべての基本:第3問で出題される決算書作成問題(配点35点)も、結局は決算整理「仕訳」が正しくできるかが鍵を握ります 。仕訳は、すべての会計処理のスタート地点なのです。  
  3. 実務の言語:経理の現場では、会計ソフトに日々の取引を入力していきますが、その根底にあるロジックはすべて「仕訳」です。仕訳を理解することは、経理担当者の共通言語を話せるようになることと同じなのです。

この最重要関門を突破するために、まずは仕訳の基本的なルールから見ていきましょう。

仕訳の「三大ルール」を制覇する!もう借方・貸方で迷わない

複雑に見える仕訳も、実はたった3つのシンプルなルールで成り立っています 。このルールさえ押さえれば、どんな取引も怖くありません。  

ルール1:すべての取引には「2つの顔」がある(取引の二面性)

簿記の世界では、どんな取引も必ず「原因」と「結果」という2つの側面から捉えます 。  

  • :コンビニで150円のお茶を現金で買った。
    • 原因:現金が150円減った
    • 結果:お茶(という会社の財産)が150円増えた

このように、物事の片側だけを見るのではなく、必ず2つの側面をセットで考えるのが簿記の基本です 。  

ルール2:勘定科目を「5つのグループ」に分類する

取引で登場するお金やモノの名前を「勘定科目」と呼びます 。無数にあるように見える勘定科目も、実はたった5つのグループに分類できます 。  

【図解:勘定科目の5大グループとホームポジション】

グループ名内容ホームポジション(定位置)
資産会社が持つプラスの財産(現金、商品、建物など)左側(借方)
負債将来支払う義務(借金、買掛金など)右側(貸方)
純資産資産から負債を引いた、正味の財産(資本金など)右側(貸方)
費用儲けを得るために使ったお金(仕入、給料、家賃など)左側(借方)
収益儲けそのもの(売上、受取利息など)右側(貸方)

まずは、各グループの「ホームポジション(定位置)」が左(借方)なのか右(貸方)なのかを覚えましょう。これがすべての基本です 。  

ルール3:ホームポジションの「増減ルール」を適用する

ここが最重要ポイントです。仕訳では、各グループの勘定科目が「増えたらホームポジション側」に、「減ったらホームポジションと逆側」に書く、という絶対的なルールがあります 。  

  • 資産・費用グループ(ホームポジションが
    • 増えたら → 左(借方)
    • 減ったら → 右(貸方)
  • 負債・純資産・収益グループ(ホームポジションが
    • 増えたら → 右(貸方)
    • 減ったら → 左(借方)

この3つのルールを組み合わせれば、どんな仕訳も機械的に組み立てることができます。

実践!3ステップで仕訳をマスターしよう

では、実際の取引を例に、3ステップで仕訳を組み立ててみましょう。

【例題】商品を50,000円で販売し、代金は現金で受け取った。

  • ステップ1:取引を2つの側面に分解する
    • 「現金」という財産が50,000円増えた
    • 「売上」という儲けが50,000円発生(増加)した
  • ステップ2:勘定科目を5つのグループに分類する
    • 「現金」は資産グループ(ホームポジションは)。
    • 「売上」は収益グループ(ホームポジションは)。
  • ステップ3:増減ルールを適用して左右に配置する
    • 「現金(資産)」が増えたので、ホームポジションである左(借方)へ。
    • 「売上(収益)」が増えたので、ホームポジションである右(貸方)へ。

この結果、完成する仕訳は以下のようになります。

借方金額貸方金額
現金50,000売上50,000

この思考プロセスを繰り返すことで、仕訳はパズルのように解けるようになります。

【初心者の壁】よくある「つまずき仕訳」を徹底攻略!

基本ルールを理解したところで、多くの学習者が混同しやすい特定の取引パターンを攻略していきましょう。ここを乗り越えれば、あなたはもう初心者ではありません。

ケース1:「売掛金」と「未収入金」の違い

どちらも「後でお金をもらえる権利」ですが、明確な違いがあります 。  

  • 売掛金本業の商品やサービスを販売して、まだ受け取っていない代金。
  • 未収入金本業以外のもの(例:会社の備品や土地など)を売却して、まだ受け取っていない代金。

【仕訳例】 (1) 商品10万円を掛けで販売した。

借方金額貸方金額
売掛金100,000売上100,000

(2) 営業で使っていた車(備品)を10万円で売却し、代金は後日受け取る。

借方金額貸方金額
未収入金100,000車両運搬具100,000

※「買掛金(本業の仕入代金の未払い)」と「未払金(本業以外の未払い)」も全く同じ考え方です 。  

ケース2:ややこしい「小切手」の処理

小切手は、受け取るか、振り出す(支払う)かで処理が全く異なります 。  

  • 他人振出の小切手を受け取った場合:すぐに現金化できるため、勘定科目は「現金」を使います 。  
  • 自社で小切手を振り出した場合:自社の「当座預金」口座から引き落とされるため、当座預金が減少したとして処理します 。  

【仕訳例】 (1) A社から売掛金の代金として、A社振出の小切手5万円を受け取った。

借方金額貸方金額
現金50,000売掛金50,000

(2) B社から商品を5万円で仕入れ、代金として小切手を振り出して支払った。

借方金額貸方金額
仕入50,000当座預金50,000

ケース3:給料支払いと「預り金」

給料を支払う際、会社は従業員に代わって所得税や社会保険料を預かり、後で国などに納付します。この一時的に預かったお金は「預り金」という負債の勘定科目で処理します 。  

【仕訳例】 従業員への給料20万円から、所得税1万円を天引きし、残額を普通預金から振り込んだ。

借方金額貸方金額
給料200,000預り金10,000
普通預金190,000

まとめ:仕訳を武器に、合格への最短ルートを駆け抜けよう!

今回は、簿記3級の合否を分ける最重要関門「仕訳」について、その基本ルールからつまずきやすいポイントまでを徹底的に解説しました。

  • 仕訳は配点の45%を占める最重要項目
  • 「取引の二面性」「5大グループ」「増減ルール」の3大ルールを覚える
  • 「売掛金/未収入金」「小切手」「預り金」などの頻出パターンをマスターする

仕訳は、慣れるまでが大変なのは事実です。しかし、一度そのロジックを理解してしまえば、あとは練習を繰り返すことで、驚くほど速く、正確に解けるようになります。

「仕訳がわかれば、簿記は面白い」。これは多くの合格者が口を揃えて言うことです。この記事で解説した思考プロセスを武器に、たくさんの問題にチャレンジし、「仕訳」を得意科目に変えて、簿記3級合格への最短ルートを駆け抜けてください。あなたの挑戦を心から応援しています!

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