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公認会計士・企業法の暗記地獄から抜け出す思考法|趣旨理解で記憶に定着させる戦略的勉強法

Sato|元・大手監査法人公認会計士が教える会計実務!

Sato|公認会計士| あずさ監査法人、税理士法人、コンサルファームを経て独立。 IPO支援・M&Aを専門とし、企業の成長を財務面からサポート。 このブログでは、実務に役立つ会計・税務・株式投資のノウハウを分かりやすく解説しています。

こんな方におすすめ

  • 企業法の条文暗記に限界を感じている方
  • 暗記が苦手で企業法に苦手意識がある方
  • 論文式試験の答案の質を上げたい受験生
  • 勉強した内容がすぐに頭から抜けてしまう方

「企業法の条文、覚えても覚えても忘れてしまう…」 「テキストの分厚さを見るだけでやる気がなくなる…」 「もしかして、自分は暗記が絶望的に苦手なのかもしれない…」

公認会計士試験の受験生なら、一度はこんな「暗記地獄」に陥ったことがあるのではないでしょうか。こんにちは、公認会計士のSatoです。何を隠そう、私自身も受験生時代、この企業法という科目に大いに苦しめられました。しかし、ある勉強法に切り替えたことで、企業法は苦手を克服するどころか、合格を支える「得点源」に変わったのです。

その方法とは、条文の丸暗記から脱却し、その条文が「なぜ存在するのか?」という趣旨・目的を理解する学習法です。

この記事では、単なる精神論ではなく、私が実践し、多くの合格者が無意識のうちに取り入れている「趣旨理解」を中心とした戦略的勉強法を、具体的な条文を例に挙げながら徹底的に解説します。この記事を読み終える頃には、あなたの企業法に対するイメージは180度変わり、「暗記科目」から「理解科目」へと進化しているはずです。

sato
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公認会計士試験全体の勉強計画については、こちらの完全ロードマップ記事をご覧ください。

なぜ企業法の「丸暗記」だけでは合格できないのか?

多くの受験生が企業法を「暗記科目」と捉え、ひたすらテキストや問題集の文言を覚えようとします 。しかし、残念ながらその努力だけでは、今の公認会計士試験を突破するのは非常に困難です。その理由は、近年の試験傾向と、短答式・論文式という2つの試験形式の特性にあります。  

近年の試験傾向:条文知識を問うだけでなく「応用力」が試される

最近の企業法の問題は、単に「〇〇について述べよ」といった知識を問う形式から、「このような具体的な事例では、どの条文をどう適用すべきか?」という現場での応用力を試す形式にシフトしています 。  

丸暗記に頼っていると、少し事例をひねられただけで対応できなくなります。なぜなら、どの条文を使うべきか、その条文のどの部分が重要なのかを判断する「軸」がないからです。

一方で、条文の趣旨を理解している受験生は、「このルールは、株主の権利を守るためにある」「この規定は、迅速な経営判断を可能にするためのものだ」という根本的な目的から考えることができます。そのため、未知の事例問題に直面しても、法律の趣旨に立ち返って論理的に正解を導き出すことができるのです。

短答式と論文式で求められる思考力の「断絶」というワナ

企業法の勉強が難しいもう一つの理由は、短答式試験と論文式試験で求められる能力が大きく異なる点にあります 。  

  • 短答式試験:正誤判断が中心。極論すれば、大量の問題演習と反復によるパターン暗記で高得点を狙うことも可能です 。  
  • 論文式試験:与えられた事例に対し、法的な問題点を見つけ、条文を根拠に論理的な文章(論証)を組み立てる能力が求められます 。  

ここに大きな「ワナ」があります。短答式を丸暗記で乗り切った受験生は、「自分の勉強法は正しい」と自信を持ってしまいます。しかし、その暗記中心のアプローチは論文式では全く通用しません。結果として、「短答は得意なのに、論文になると全く歯が立たない」という事態に陥ってしまうのです。

この思考力の「断絶」を乗り越え、両方の試験に対応できる強固な知識を身につける鍵こそが、「趣旨・理由付け」学習法なのです。

暗記効率を最大化する「趣旨・理由付け」学習法の全貌

では、具体的にどのように学習を進めればよいのでしょうか。難しく考える必要はありません。以下の3つのステップを意識するだけで、あなたの学習は劇的に変わります。

ステップ1:条文の「目的」をテキストで深く知る

まず、新しい論点を学ぶ際は、いきなり条文の文言を覚えようとしないでください。テキストの解説部分をじっくり読み、「この制度・条文は何のために作られたのか?」という目的(趣旨)を最初にインプットします 。  

例えば、「取締役会」という制度を学ぶなら、「なぜ会社に取締役会が必要なのか?」を考えます。それは、複数の取締役による多角的な視点で議論し、独断専行を防ぎ、より合理的で慎重な意思決定を行うためです。この大前提を理解するだけで、関連する細かなルールの意味が見えてきます。

ステップ2:「なぜこのルールが必要か?」を自分の言葉で説明する訓練

趣旨をインプットしたら、次はアウトプットの訓練です。テキストを閉じ、「なぜこのルールが必要なのか?」を、法律を知らない友人や家族に説明するつもりで、自分の言葉で話してみてください。

これができなければ、まだ本当の意味で理解できていません。例えば、「取締役会の決議は、原則として議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行う」というルール。これを「なんで?」と聞かれたときに、「一人の意見で暴走しないように、みんなで集まって話し合って、多数決で決めるのが公平でしょ?でも全員集まるのは大変だから、半分以上集まればOKにしてるんだよ」と説明できれば、知識はあなたのものになっています。

この「自分の言葉で説明する」という能動的なプロセスが、受動的な暗記とは比較にならないほど記憶を強固にします

ステップ3:関連条文を「物語」としてセットで記憶する

企業法の知識は、一つ一つが独立しているわけではなく、互いに関連しあっています。バラバラに覚えるのではなく、関連する条文をグループ化し、なぜルールが異なるのかを比較しながら「物語」として覚えるのが効果的です 。  

例えば、多くの受験生が混同しがちな「決議の省略(みなし決議)」のルールを見てみましょう。

比較項目株主総会取締役会監査役会
省略の要件議決権を行使できる株主の全員が書面等で同意議決に加わることができる取締役の全員が書面等で同意監査役の全員が書面等で同意
定款での定め不要必要不可
趣旨(なぜ違う?)株主の権利保護が最優先。全員の明確な意思が不可欠。業務執行の効率化が目的。定款で予め認めておくことで機動性を確保。監査役の監視義務は重要。実際に集まり議論することが原則であり、省略は認められない

このように表で比較し、特に「趣旨」の欄に注目してください。 「株主総会は株主の権利が最重要だから一番厳しい」「取締役会は経営のスピードも大事だから少し緩やか」「監査役会は監視が仕事だから省略はダメ」という背景にある物語(理由)を理解すれば、もう混同することはありません。単なる3つの事実の暗記が、1つの論理的な理解に変わる瞬間です。

sato
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膨大な範囲を網羅しつつ、論文対策にも時間を割くには、戦略的な学習計画が不可欠です。専門学校では、合格から逆算されたカリキュラムが組まれており、学習のペースメーカーとして活用できます。無料の講座説明会に参加して、プロが作成した学習計画を参考にしてみるのも一つの手です。

【具体例で実践】趣旨から読み解く会社機関のルール

それでは、実際の条文を使って「趣旨理解」を実践してみましょう。

なぜ取締役会非設置会社では取締役が「各自代表」が原則なのか?

取締役会を置いていない、比較的小規模な会社をイメージしてください。この会社では、代表取締役を特に定めていなければ、取締役のそれぞれが会社を代表する権限を持っています(各自代表)。

会社法 第三百四十九条 1 取締役は、株式会社の業務を執行する。 2 取締役が二人以上ある場合には、株式会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって決定する。 (中略) 4 代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。

参照元:e-Gov法令検索「会社法」

このルールの趣旨は、ビジネスの機動性・迅速性を確保することにあります。取締役会という意思決定機関がない会社で、何か取引をするたびに全取締役の同意が必要だとしたら、ビジネスチャンスを逃してしまいます。そこで、原則として各取締役が単独で会社を代表して契約などを結べるようにし、スムーズな会社運営を可能にしているのです。

監査役の権限はどこまで?設置趣旨から考える業務監査と会計監査

監査役は、取締役の職務執行を監査する役割を担います。この「監査」には、計算書類などをチェックする「会計監査」と、業務執行のプロセスや決定内容が法令・定款に違反していないかをチェックする「業務監査」の2種類があります。

会社法 第三百八十一条 1 監査役は、取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)の職務の執行を監査する。この場合において、監査役は、法務省令で定めるところにより、監査報告を作成しなければならない。

参照元:e-Gov法令検索「会社法」

この条文の趣旨は、株主の代わりに取締役を監視し、経営の健全性を保つことにあります。もし監査役の権限が「会計監査」だけに限定されていたら、取締役が不正な取引や違法な決定を行ってもチェックできません。それでは監視役としての役割を全うできません。だからこそ、原則として監査役は会計だけでなく業務全般にまで踏み込んで監査する強い権限(業務監査権限)が与えられているのです。

このように趣旨から考えると、一見複雑に見えるルールも、実は非常に合理的でシンプルな原則に基づいていることがわかります。

論文式試験で「理解度」をアピールし高得点を狙う答案作成術

「趣旨理解」学習法が最も威力を発揮するのが、論文式試験です。単に知識を書き連ねるだけの答案と、理解の深さを示せる答案とでは、評価に天と地ほどの差が生まれます。

合格答案の鉄板フレームワーク:問題提起→規範→あてはめ→結論

まず、論文答案の基本構造は必ず守りましょう。これは法律論文の「型」であり、この型から外れると読んですらもらえない可能性があります 。  

  1. 問題提起:問題文の事案から、何が法的に問題となるのかを簡潔に示します。
  2. 規範定立:その問題を解決するために適用される法律(条文)や判例を示します。ここが知識の見せ所です。
  3. あてはめ:示した規範に、問題文の具体的な事実を当てはめていきます。
  4. 結論:あてはめの結果、法的にどういう結論になるのかを述べます。

規範に「趣旨」を盛り込み、ライバルと差をつける方法

多くの受験生は、「規範定立」のパートで条文の文言を書き写すだけで終わってしまいます。ここで一歩踏み込み、条文の趣旨を一行加えるだけで、あなたの答案は劇的に輝きを増します 。  

【Before】趣旨のない答案

(規範)会社法〇条によれば、△△のためには□□という手続きが必要であると定められている。

【After】趣旨を盛り込んだ答案

(規範)会社法〇条によれば、△△のためには□□という手続きが必要であると定められている。そもそも本条の趣旨は、◇◇を保護することにある。したがって、本件においても◇◇が保護されるべきかという観点から検討する。

いかがでしょうか。「趣旨」を書き加えることで、単なる知識の披露ではなく、「私はこの法律が何のためにあるのかを理解した上で論じています」という強いメッセージを採点者に伝えることができます。これが、あなたの「理解度」をアピールし、高得点に繋がる決定的な一打となるのです。

知識を脳に刻む!毎日の効率的学習ルーティン

最後に、この「趣旨理解」学習法を日々の勉強に落とし込み、記憶を定着させるための具体的なルーティンを紹介します。

スキマ時間を制する一問一答トレーニング

通勤・通学中や休憩時間などのスキマ時間には、一問一答形式の問題集を活用しましょう 。ただし、ただマルバツを覚えるだけでは意味がありません。  

  • 正解した問題:「なぜこれが正しいのか?」その理由(趣旨)を10秒で頭に思い浮かべる。
  • 間違えた問題:解説を読み、なぜ間違えたのか、そして正しいルールの趣旨は何だったのかを必ず確認する。

この小さな積み重ねが、知識のネットワークを強固にしていきます。

科学的にも証明済み!睡眠前の5分復習が記憶を定着させる

脳は睡眠中に、その日学習した情報を整理し、長期記憶として定着させます。このメカニズムを最大限に活用しましょう。

寝る直前の5分間、ベッドの中でその日学習した範囲のテキストの要点や、間違えた問題の趣旨だけをパラパラと見返してみてください。この「睡眠前復習」は、驚くほど記憶の定着率を高めてくれます。計画的な学習スケジュールの中に、この小さな習慣を取り入れることで、学習効率は大きく向上します 。  

まとめ:企業法は「覚える」から「理解する」科目へ

企業法は、決して理不尽なルールの寄せ集めではありません。一つ一つの条文には、会社を健全に成長させ、株主や債権者、従業員といった関係者を守るための、先人たちの知恵と想いが込められています。

その「なぜ?」を考える旅は、辛い暗記作業とは全く違う、知的好奇心を満たす面白いプロセスです。

  1. 丸暗記の限界を知り、応用力を意識する。
  2. 「なぜ?」を問い、条文の趣旨を自分の言葉で説明する。
  3. 関連ルールを「物語」として体系的に理解する。
  4. 答案に趣旨を盛り込み、深い理解度をアピールする。

この学習法を実践すれば、企業法はあなたにとって恐れるべき壁ではなく、合格への強力な武器となるはずです。暗記地獄からの脱出は、もう目の前です。今日から、「覚える」勉強を「理解する」勉強に変えていきましょう。

sato
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企業法の知識が将来実務にどのように役立つのか?こちらの記事も参考にしてください。

よくある質問(Q&A)

条文の趣旨を理解すれば、条文番号や細かい文言は覚えなくてもよいですか?

いいえ、最終的には条文番号や正確な文言の暗記も必要です。特に論文式試験では、正確な条文を引用できると答案の説得力が格段に上がります。趣旨理解は、その暗記作業を「意味のあるもの」に変え、記憶の定着を助けるための土台作りと捉えてください。趣旨が分かっていれば、細かい文言を忘れても「確かこういう目的のルールだったはずだ」と推測しやすくなります。

趣旨を考えるのに時間がかかり、勉強が非効率になりませんか?

学習の初期段階では、丸暗記よりも時間がかかると感じるかもしれません。しかし、これは将来の学習効率を上げるための「投資」です。一度趣旨を理解した知識は忘れにくく、応用も効くため、長期的に見れば何度も同じ箇所を暗記し直すよりも圧倒的に効率的です。特に、論文式試験の対策を始めたときに、その効果を実感できるはずです。

この勉強法は、会社法以外の法律科目(例:金商法)にも応用できますか?

はい、非常によく応用できます。金融商品取引法も、その目的は「投資家保護」と「資本市場の公正性・透明性の確保」という大きな趣旨に基づいています。各規制が、この大目的のどの部分を達成するために存在するのかを意識することで、複雑な開示規制やインサイダー取引規制なども体系的に理解しやすくなります。法律科目を学ぶ上での普遍的なアプローチと言えるでしょう。


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