まずは、公認会計士試験の合格、本当におめでとうございます! 長く険しい道のりを乗り越えた達成感と安堵感で、胸がいっぱいになっていることでしょう。
しかし、喜びも束の間、「で、次は何をすればいいんだ…?」という新たな不安を感じていませんか?
私自身、合格発表の後は解放感と同時に、その先のキャリアパスに対する漠然とした不安を抱えていました。多くの合格者が同じ道を通ります。
この記事は、そんなあなたのための「合格後の羅針盤」です。公認会計士として正式に登録されるまでに必要な「3つの要件」を一つひとつ丁寧に解説します。特に、2023年の法改正で「3年」に延長された実務経験の要件については、監査法人以外の選択肢も含めて、あなたのキャリアの可能性を広げる情報をお届けします。
この記事を読み終えれば、合格後の3年間で何をすべきかが明確になり、自信を持って次の一歩を踏み出せるはずです。
目次
合格おめでとうございます!しかし、本当のスタートはここから
公認会計士試験の合格はゴールではなく、プロフェッショナルとしてのキャリアのスタートラインです。正式に「公認会計士」を名乗るためには、法律で定められた3つの要件をクリアし、日本公認会計士協会に名簿登録する必要があります 。
公認会計士になるための「3つの必須要件」とは?
その3つの要件とは、以下の通りです 。
- 公認会計士試験に合格すること (これは、あなたが今まさにクリアした要件です!)
- 3年以上の実務経験(業務補助等)を積むこと
- 実務補習を修了し、修了考査に合格すること
多くの人は、監査法人などに就職し、働きながら実務経験(要件2)と実務補習(要件3)を同時並行で進めていきます。そのため、通常は合格から登録まで最低3年かかる、と覚えておきましょう 。
【最重要】2023年法改正で実務経験が「3年」に変更!その背景と注意点
ここで最も注意すべきなのが、実務経験の期間です。2022年の公認会計士法改正により、2023年4月1日から、公認会計士登録に必要な実務経験が従来の「2年以上」から「3年以上」に延長されました 。
改正の背景 近年、企業活動のグローバル化や業務内容の複雑化・専門化に伴い、監査の現場でこれに対応できる能力を養う観点から、実務経験を通じて学ぶ知見の重要性が高まっています。
国際的な基準に合わせ、より質の高い公認会計士を養成することが目的です 。
この変更には経過措置があり、2023年4月1日の時点で既に2年以上の実務経験があった人は、従来の2年で要件を満たせます。しかし、その時点で実務経験が2年未満だった人は、3年以上の経験が必要となるため、これからキャリアをスタートするあなたは「3年」が必須となります 。
要件①「実務経験」とは?2つの種類と認められる業務を徹底解説
では、その「3年間の実務経験」とは具体的に何を指すのでしょうか。これには大きく分けて「業務補助」と「実務従事」の2種類があり、両方の期間を通算することも可能です 。
種類 | 主な場所 | 業務内容の概要 | 期間の考え方 |
業務補助 | 監査法人、会計事務所 | 公認会計士や監査法人が行う監査証明業務を補助する | 勤務形態(常勤/非常勤)を問わず、代表者が認めればOK |
実務従事 | 事業会社、金融機関、コンサル、官公庁など | 財務に関する監査、分析などの実務に従事する | 原則として常勤で3年。非常勤の場合は労働時間に応じて期間が按分される |
業務補助:監査法人で監査実務のサポートを行う
「業務補助」とは、文字通り、公認会計士や監査法人が行う監査証明業務をサポートする仕事です 。合格者の多くが監査法人に就職し、この業務補助を通じて実務経験の要件を満たします。
雇用形態は問われないため、非常勤やアルバイトであっても、監査業務に携わっていれば期間としてカウントされます 。ただし、単純な書類整理や記帳代行といった業務は対象外となるため注意が必要です 。
実務従事:事業会社などで財務分析などに従事する
「実務従事」とは、より広く、財務に関する監査や分析などの実務に従事することを指します 。監査法人だけでなく、一定の要件を満たせば一般の事業会社やコンサルティングファームなど、多様なフィールドでの経験が認められます。
ただし、期間の考え方が業務補助と異なります。「実務従事」は常勤で3年間が基準とされており、パートタイムなど勤務時間が短い場合は、その労働時間に応じて必要な期間が長くなります(例:常勤の半分の時間なら6年必要)。
監査法人だけじゃない!多様化する実務経験の積み方
「公認会計士=監査法人」というイメージが強いかもしれませんが、実務経験を積む場所の選択肢は年々広がっています 。ここでは監査法人以外のキャリアパスをいくつかご紹介します。
事業会社(経理・財務):認められる業務と「資本金5億円以上」の条件
一般企業の経理・財務部門での経験も「実務従事」として認められる可能性があります。ただし、これには重要な条件があります。
【条件】 原則として、資本金5億円以上の法人における業務である必要があります 。
【認められる業務の例】
- 決算業務(単体・連結)
- 原価計算、予算管理
- 財務分析、経営分析
- 財務報告に係る内部監査、内部統制(J-SOX)関連業務
- 株式公開(IPO)準備に関する業務
単純な記帳業務や税務申告業務は対象外です 。専門的な判断を伴う高度な財務・会計業務に従事していることがポイントになります。

公認会計士資格は、事業会社の経理・財務部門で高く評価されます。あなたのスキルセットにマッチする優良企業の非公開求人を探すなら、監査法人出身者の転職支援に圧倒的な実績を持つエージェントへの相談が、成功への第一歩となるでしょう。
コンサルティングファーム:M&AのDDや再生支援業務も対象に
コンサルティングファームでの経験も、実務経験として認められるケースがあります。特に、M&Aにおける財務デューデリジェンス(DD)や、企業の再生支援といった業務が該当します。
この場合も事業会社と同様の条件があり、自身が所属するファームの資本金に関わらず、業務の対象となるクライアント企業が資本金5億円以上などの要件を満たす必要があります 。

FASやM&Aアドバイザリーへのキャリアを本気で目指すなら、M&A・FAS領域に特化した専門コンサルタントが在籍するエージェントを活用し、最新の市場動向や選考対策に関する質の高い情報を得ることが不可欠です。
金融機関・官公庁でのキャリアパス
その他にも、以下のような場所での経験が「実務従事」として認められることがあります。
- 金融機関: 銀行や保険会社などでの、貸付や債務保証といった資金運用に関する業務 。
- 官公庁: 国税局での税務調査や、都道府県庁での会計検査など 。
どのキャリアパスを選ぶにせよ、自分の担当業務が実務経験の要件を満たすかどうか、事前に金融庁や日本公認会計士協会に確認することが非常に重要です 。
要件②&③ 3年間の「実務補習」と最後の関門「修了考査」
実務経験と並行して進めるのが「実務補習」と、その卒業試験である「修了考査」です 。
実務補習とは?単位取得と講義内容のリアル
実務補習とは、公認会計士の実務に必要な知識やスキルを学ぶための研修制度です。一般財団法人会計教育研修機構が運営する実務補習所に原則3年間通い、所定の単位を取得する必要があります 。
- 期間: 原則3年間
- 内容: 講義の受講(270単位以上)、考査(10回)、レポート提出(6回)などを通じて単位を取得します 。
- 費用: 入所料と3年間の補習料で合計270,000円程度かかります(eラーニングなどで別途費用が発生する場合あり)。
- 講義形式: 平日の夜間や土日に行われる講義のほか、eラーニングも充実しており、働きながらでも単位を取得できる仕組みになっています 。
修了考査の難易度と合格率(約70%)の実態
3年間の実務補習の単位をすべて取得すると、最終関門である「修了考査」の受験資格が得られます。これは実務補習所の卒業試験にあたるもので、これに合格しなければ公認会計士登録はできません 。
- 試験科目: 会計、監査、税務、経営、法規・職業倫理の5科目 。
- 合格率: 近年の合格率は上昇傾向にあり、約70%前後で推移しています 。公認会計士試験本番と比べると高い合格率ですが、それでも約3割が不合格となる厳しい試験です。油断せず、計画的な対策が必要です。
仕事と補習を両立させるためのスケジュール管理術
多くの合格者は、監査法人などでフルタイムで働きながら、この実務補習と修了考査の勉強を両立させています。特に、講義や課題が集中する1年目は大変ですが、監査法人の多くは修了考査前に「試験休暇」を設けるなど、サポート体制が整っています 。タイムマネジメント能力が試される3年間とも言えるでしょう。

終了考査の対策も大手専門学校では行っておりますので効率的な学習の参考にしてください。
【完全タイムライン】合格発表から公認会計士登録までの全ステップ
最後に、合格発表から公認会計士登録までの流れを時系列で整理してみましょう。
時期 | 主なアクション | ポイント |
合格発表直後(11月中旬~12月上旬) | 就職活動 | 合格発表から約2週間で内定が出る超短期決戦。説明会への参加や面接対策は試験後すぐに始めるのが鉄則 。 |
1年目~3年目 | 実務経験 + 実務補習 | 監査法人や事業会社などで働きながら、実務経験を積む。同時に、実務補習所に通い、講義や考査を通じて単位を取得する。 |
3年目の12月 | 修了考査の受験 | 3年間の実務補習で必要な単位をすべて取得した人が受験。 |
修了考査合格後(4月上旬~) | 公認会計士登録手続き | 必要書類を揃え、日本公認会計士協会に登録申請。書類の準備に1~2ヶ月かかるものもあるため、計画的に進める 。 |
登録完了 | 晴れて「公認会計士」に! | 登録審査会を経て、正式に公認会計士名簿に登録される。 |
まとめ:公認会計士登録は計画的に!
公認会計士試験の合格は、輝かしいキャリアの始まりです。その先の3年間は、実務経験、実務補習、そして修了考査という3つの大きなハードルが待っています。
一見すると大変そうに思えるかもしれませんが、一つひとつのステップを計画的に、着実にクリアしていけば、道は必ず拓けます。特に、実務経験を積む場所は、もはや監査法人だけではありません。あなたの興味やキャリアプランに合わせて、事業会社やコンサルティングファームなど、多様な選択肢を検討できる時代になっています。
この記事が、あなたの合格後のキャリアプランを考える一助となり、不安を少しでも解消できたなら幸いです。改めて、合格おめでとうございます。あなたの素晴らしい未来を心から応援しています。

よくある質問(Q&A)
仕事と実務補習、修了考査の勉強の両立は、実際どのくらい大変ですか?
正直に言うと、決して楽ではありません。特に実務補習の講義や課題が集中する1年目は、平日の夜や週末の多くを費やすことになります。監査法人の繁忙期と重なると、体力・精神力ともに厳しい時期もあるでしょう。しかし、ほとんどの合格者が通る道であり、周囲も同じ状況なので支え合いながら乗り越えることができます。2年目、3年目と進むにつれて補習の負担は軽くなるため 、計画的に学習を進めることが両立の鍵です。
事業会社での実務経験を証明するには、特別な手続きが必要ですか?
はい、必要です。実務経験を証明するためには、勤務先に業務内容を証明してもらい、「業務補助等報告書」を作成して住所地を管轄する財務局経由で金融庁に提出し、審査を受ける必要があります 。特に事業会社での「実務従事」の場合、担当していた業務が要件を満たすかどうかが厳密に審査されます。そのため、転職する際や業務に従事する際には、その業務が登録要件として認められるかを事前に確認しておくことが非常に重要です。
もし修了考査に不合格だった場合はどうなりますか?
修了考査に不合格だった場合でも、再受験が可能です 。ただし、翌年の試験を受けることになり、公認会計士登録が1年遅れることになります。監査法人などに勤務している場合は、通常業務を続けながら、翌年の試験に向けて再度勉強することになります。合格率は比較的高いため、しっかりと準備すれば過度に恐れる必要はありませんが、油断は禁物です。
数ある専門学校、転職エージェントの中からいくつかご紹介致します。キャリアアップのご参考として頂けますと幸いです。
簿記検定、公認会計士、米国公認会計士、税理士の資格取得をご検討されている方
簿記検定、公認会計士、税理士の資格取得をご検討されている方
経理、公認会計士、税理士のキャリアアップをご検討されている方

IPO前・有名ベンチャー・上場企業管理部へのキャリアアップをご検討されている方

会計、税務、経理・財務分野へのキャリアアップをご検討されている方

MG、EY)や アクセンチュアなど総合系コンサルティングファームへのキャリアアップをご検討されている方

管理・専門職、ミドル・ハイクラス向けの高年収層に特化した転職エージェントをご検討されている方