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2021年3月期「監査上の主要な検討事項(KAM)」事例分析レポートが公表されました

監査上の主要な検討事項(KAM)が2021年3月期に強制適用を迎えたことを踏まえて、今後のKAMの記載に関する実務の参考となるように、2021年10月29日に日本公認会計士協会のウェブサイトにて、「監査上の主要な検討事項」の強制適用初年度(2021年3月期)事例分析レポート」が公表されました。

分析対象会社

2021年6月30日までに2021年3月期の有価証券報告書を提出した金融商品
取引法監査適用の上場会社2,342社(内、個別財務諸表のみ作成の会社240社)の監査報告書に記載されたKAM5,404個を対象としております。

KAM強制適用初年度(2021年3月期)の全体像

監査報告書に記載されたKAMの平均個数は、連結財務諸表の監査報告書で1.3個、個別財務諸表の監査報告書で1.1個であり、連結財務諸表の監査報告書で見ると、全体の71%がKAMが1個、24%がKAMが2個となっています。

KAMの個数が0個の会社について

強制適用初年度において、KAMが無い(KAMの個数が0個)という会社は、連結財務諸表の監査報告書で2社(分析対象会社2,102社)、個別財務諸表の監査報告書で119社(分析対象会社2,342社)であるとの集計結果が出ています。

連結財務諸表の監査報告書にKAMが記載されていない事例は2社で、1社は連携次財務諸表の監査報告書において「意見不表明」の旨記載されており、残りの1社は連結財務諸表及び個別財務諸表のいずれの監査報告書においてもKAMはないと判断している旨記載がなされておりました。

個別財務諸表の監査報告書にKAMが記載されていない会社は119社で、上記の 連結財務諸表及び個別財務諸表のいずれの監査報告書においてもKAMの記載がなかった1社を除く118社は、連結財務諸表の監査報告書でKAMが記載されておりました。

2021年3月期決算会社のKAM記載の動向をみると、各社とも少なくとも1個のKAMは記載しているという傾向が伺われます。

KAMの記載内容の傾向

監基報 701 では、「監査上の主要な検討事項の記述によって、想定される財務諸表の利用者の監査及び監査人の判断に対する理解が深まる場合、当該記載内容は想定される財務諸表の利用者にとって目的適合性があることになる」(A43 項)との記載があり、KAM の内容の記述に、想定される財務諸表の利用者の情報の目的適合性に適うよう工夫することが求められています。

財務諸表利用者の情報の目的適合性を踏まえた上での、監査領域別のKAMの個数は以下の通りです。

2021年3月期の監査報告書におけるKAM総数5,404個であり、そのうち、固定資産の評価1,663個、収益認識1,128個(工事進行基準、工事損失引当金の見積りを含む)、繰延税金資産の評価706個、投融資の評価604個、であることから、会計上の見積りに関するものが多い傾向がみられました。

監査人がKAMとして理由について

事例分析レポートでは、監査人がKAMと決定した理由についても、概ね以下のように分類し集計が行われている。

①見積りの不確実性、経営者による判断への依存度が高いため
②金額的重要性、質的重要性が高いため
③財務数値の作成過程が「複雑」であるため
④従来はなかった、通例でない取引であるため
⑤監査手続の実施のため、専門的な知識や技能が必要であるため

監査人がKAMと決定した理由については、会計上の見積りの不確実性が高い項目や金額的・質的に重要な項目が選定されているように見受けられます。

会社法上の監査報告書にKAMを記載した事例

会社法上の監査報告書へのKAM記載は任意であるが、強制適用初年度において会社法上の監査報告書にKAMを記載した事例は2社でした。

なお、これらの会社の監査役等が公表した監査委員会監査報告書は会社法の定めによるもの(経団連ひな型に従ったもの)であり、KAMについて言及はしていませんでした。

おわりに

KAM導入2年目以降、企業環境に変化がない限りにおいては、 監査報告書に記載されるKAMが毎期同様の記載になることが想定されます。
企業環境に変化がない場合には、同様の記載になること自体に問題はないと考えられますが、今後KAMを導入する会社においては、他社事例をそのまま利用するのではなく、各社の個別事情が反映されたKAMの記載を作成することが、KAMが「 財務諸表利用者にとって目的適合性がある」ものと言えるのではないでしょうか。

なお、「監査上の主要な検討事項」の強制適用初年度(2021年3月期)事例分析レポート」については、下記をご参照ください。

「「監査上の主要な検討事項」の強制適用初年度(2021年3月期)事例分析レポート」の公表について

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