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税効果会計実務(4)事業計画の整合性と税効果実務!減損判定との矛盾を突かれない防衛術

Sato|元・大手監査法人公認会計士が教える会計実務!

Sato|公認会計士|
あずさ監査法人、税理士法人、上場会社経理、コンサルファームを経て独立。
IPO支援・M&A及び上場会社経理業務を専門とし、企業の成長を財務面からサポート。
このブログでは、実務に役立つ会計・税務・株式投資のノウハウを分かりやすく解説しています。
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こんな方におすすめ

  • 減損会計と税効果会計で事業計画の数字が異なっている経理担当者
  • 監査人から「事業計画の合理的な根拠」を求められ対応に苦慮している方
  • 企業分類3で「5年超」の所得見積りを認めさせたいCFO
  • タックス・プランニングの実効性を監査法人にどう説明すべきか悩む方

「税効果会計の事業計画と、減損会計の計画、なぜ数字が違うんですか?」

決算監査の終盤、監査人からこの質問を投げかけられ、言葉に詰まった経験はありませんか?実は、この「計画の不整合」こそが、監査人が最も目を光らせ、かつ「経営者の恣意性(自分たちに都合よく数字を操作しているのではないか)」を確信してしまう急所なのです。

今回は、公認会計士の視点から、繰延税金資産の回収可能性を支える「事業計画の合理性」と、監査人の追及を論理的に回避するための「防衛実務」を分かりやすく解説します。

1. 監査人が狙う「ダブルスタンダード」:減損計画 vs 税効果計画

税効果会計において、将来の課税所得を見積もるための「事業計画」は、他の会計上の見積りとセットで検証されます。特に「固定資産の減損会計」で用いる将来キャッシュ・フロー予測との整合性は、監査における最重要チェックポイントの一つです

sato
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なぜ今、事業計画の合理性がこれほどまでに厳しく問われるのか、その根本的な理由をこちらで解説しています。

【徹底解説】会計上の見積り監査の厳格化|監基報540改正で企業がすべき準備とは

なぜ不整合が起きるのか?

経理実務の現場では、以下のような心理的バイアスが働き、無意識に「ダブルスタンダード(二重基準)」が生じがちです。

  • 減損会計: 減損損失を避けたいので、将来の利益(キャッシュ・フロー)を「強気」に見積もる。
  • 税効果会計: 繰延税金資産を多く計上したいので、将来の課税所得を「強気」に見積もる。

「どちらも強気なら問題ないのでは?」と思うかもしれません。しかし、監査人はその「強気の根拠」が、例えば市場平均の成長率を大きく上回っていたり、過去の達成実績と乖離していたりする場合、一気に懐疑心を強めます。逆に、片方を保守的にし、もう片方を楽観的にするといった「使い分け」は論外です。

監査人がチェックする整合性一覧表

監査人は、以下の項目において、減損計画と税効果計画が1円単位、1%単位で一致しているかを確認します。

チェック項目減損会計(CF計画)税効果会計(所得見積り)監査人の視点
売上成長率市場成長率を反映しているか?減損計画と同じ成長率か?なぜ税効果だけ売上が伸びるのか?
コスト削減策実行可能な計画か?所得を増やすための架空の削減か?減損では費用が出るのに所得では消える?
設備投資更新投資が織り込まれているか?減損計画と投資額は一致するか?投資をしないのに利益が増えるのは不自然。
主要な仮定割引率や耐用年数の整合性償却費などの税務調整の整合性根本的な経営シナリオがズレていないか?

不整合がある場合、監査人は「経営者の見積りには偏向(バイアス)がある」と判断し、見積り全体の信頼性を否定しにかかります (監査基準委員会報告書540号第32項)。

2. 分類3における「おおむね5年」の壁を論理的に突破する

企業分類が「分類3」に該当する場合、繰延税金資産の計上範囲は「将来の合理的な見積可能期間(おおむね5年)」における一時差異等のスケジューリング結果に基づくとされています

実務上、監査人はこの「5年」を鉄の掟のように突きつけてきますが、これには論理的な「突破口」があります。

5年を超える見積りが認められる「合理的かつ客観的な根拠」とは

指針26号では、5年を超える期間の所得見積りが認められる例外を設けています。これを立証するためには、単なる「目標」ではなく、以下の「物証」が必要です。

  1. 長期の受注残高: すでに5年超の期間にわたり、安定した収益が約束されている契約(建設、プラント、長期保守契約など)。
  2. ストック型ビジネスの安定性: 過去10年以上の解約率が極めて低く、統計的に5年超の収益予測が可能であることの証明。
  3. 法的・制度的な裏付け: 許認可事業や売電価格が保証されたFIT制度など、外部要因による収益の確定。

「予測の精度」をデータで語る

監査人が5年超を認めない最大の理由は「お宅の予測は当たらないでしょう?」という疑念です。これに対抗するには、「過去の予算と実績の乖離分析(予実分析)」を提示するのが最も効果的です 。

「過去5年間、当社の利益予測の誤差は±5%以内です」というデータがあれば、監査人は5年超の予測についても「合理的な根拠がある」と認めざるを得なくなります(繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針第23項)。

3. タックス・プランニングを「絵に描いた餅」にしない

「このままだと所得が足りないから、来期に含み益のあるビルを売却する予定にして、繰延税金資産を積み増そう」

このような安易なタックス・プランニング(節税や所得創出の計画)は、現代の監査では真っ先に否認されます。監査人は、そのプランニングが「実行可能」で「実効性」があるかを厳しく問い詰めます

監査人を納得させる「実効性」の証拠資料

タックス・プランニングを所得見積りに含める場合、実務担当者は以下のエビデンスを揃えておく必要があります。

  • 取締役会の議事録: 「含み資産の売却」が単なる経理の思いつきではなく、経営陣の確固たる意思決定であることを証明します。
  • 売却先との交渉記録: すでに検討が進んでいることを示す意向表明書(LOI)や仲介業者との契約書。
  • 具体的なスケジュール: 決済日、売却益の試算、税務上の損益発生時期の特定。

「利益が足りなくなったら売るつもり」といった不確定な計画は、監査上の証拠としてはゼロ評価です。

4. 【現場のリアル】「保守的な見積り」と「合理的な見積り」の落とし所

監査人はよく「保守的な見積り(低めに見積もること)」を求めますが、会計基準が求めているのはあくまで「合理的な見積り(最も蓋然性が高い数値)」です 。

筆者の体験談:監査人との「1億円」を巡る攻防

あるクライアントの監査で、海外事業の成長率を巡って議論になったことがあります。会社は「5%成長」を主張し、監査人は「過去実績から見て2%が妥当」と譲りませんでした。

私は公認会計士として、単に数字をぶつけ合うのではなく、「感応度分析(シミュレーション)」の提示をアドバイスしました。「成長率が1%下がると、繰延税金資産はXX円減りますが、それでも資産性は維持されます」という、リスクの振れ幅(レンジ)を示したのです

この「幅」を用いた議論により、最終的には「3.5%」という、両者が納得できる(かつ論理的な)落とし所に着地することができました。

5. 実務担当者が備えるべき「エビデンス・アーカイブ」

監査をスムーズに終えるための秘訣は、監査人が「自分の調書に貼れる資料」を先回りして用意することです

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事業計画の策定だけでなく、監査全体をスムーズに進めるための資料準備や事前協議の進め方については、こちらのガイドを参考にしてください。

【完全ガイド】初めての会計監査|経理担当者が知るべき準備・流れ・当日の対応のすべて

必須アーカイブリスト

  1. 他見積りとの整合性チェック表: 減損、税効果、退職給付等の各計画値が一致していることを一目で示す表。
  2. 市場予測の外部データ: 業界紙やシンクタンクのレポートなど、自社の計画が「世間一般」と乖離していない証拠 。
  3. 予実分析シート: 過去の計画がどれだけ正確だったかを示す「予測のトラックレコード」。

これらの資料を、監査が始まる前に「会計上の見積りに関する根拠資料」としてパッケージ化しておきましょう。


まとめ:事業計画は「経理の数字」ではなく「会社の意思」

税効果会計における事業計画の整合性は、単なる計算の問題ではなく、会社全体のガバナンスと経営の透明性を問うものです。減損計画との矛盾を解消し、客観的な証拠で裏付けられた計画を提示することで、監査人からの信頼を勝ち取り、決算リスクを最小限に抑えることができます。

数字の背後にある「ロジック」を磨き、強い経理部門を目指しましょう。

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次回は、繰延税金資産の回収可能性を支える「事業計画の合理性」と、監査人の追及を論理的に回避するための「防衛実務」を分かりやすく解説します。!

税効果会計実務(5)連結税効果とグローバル・ミニマム課税の実務!

よくある質問(Q&A)

減損計画と税効果計画で、どうしても数字が一致しない場合は?

なぜ不一致が生じているのか、その「質的な理由」を論理的に説明できるメモランダムを作成してください。例えば「減損は事業単位だが、税効果は法人単位であるため、対象範囲が異なる」といった合理的な理由があれば、数字のズレ自体は許容されます。

業績が右肩下がりの場合、5年先の所得見積りは認められませんか?

現状のままでは厳しいですが、具体的な「構造改革プラン」とその進捗状況、および改革による利益改善の客観的な証拠があれば、見積りに含めることは可能です。ただし、過去の改革が未達に終わっている場合は、監査人のハードルは非常に高くなります。

タックス・プランニングによる所得創出は、期末ギリギリの決定でも間に合いますか?

期末日時点で「実行可能」であり、かつ「意思決定がなされている」必要があります。取締役会の決議が期末後になった場合、監査人はそれをプランニングとして認めないリスクが高いです。早めの意思決定と議事録作成を徹底しましょう。

監査人が「業界平均より成長率が高すぎる」と言ってきた時の切り返しは?

自社独自の強み(特許、シェア拡大の具体策、新規受注)をエビデンスとともに提示してください。業界平均はあくまで参考値であり、個別企業には特有の事情があることを、客観的なデータで立証するのが防衛実務の基本です。

連結子会社の所得見積りも、親会社がここまで細かく管理すべきですか?

はい。連結決算における繰延税金資産の資産性は、グループ全体の整合性が問われます。子会社が作成した計画を親会社がレビューし、グループ全体の経営方針と矛盾がないかを確認するプロセス自体が、監査人への強力なアピール(内部統制の有効性証明)になります。


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専門家としての経験に基づき、現場で本当に『武器』になった数冊を厳選しました。理論だけで終わらない、実践に裏打ちされた知恵を求める方の参考になれば幸いです。


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