いよいよ公認会計士試験の本番が目前に迫ってきましたね。これまでの膨大な勉強時間を思い返し、「本当に実力を出し切れるだろうか」という期待と不安が入り混じった気持ちでいることでしょう。
こんにちは、公認会計士のSatoです。私自身、受験生時代はこの直前期が最も精神的に揺れ動く時期でした。しかし、断言します。試験当日の過ごし方は、財務会計論や企業法と並ぶ、もう一つの「科目」です。
どれだけ知識を詰め込んでも、当日のコンディションや戦略一つで、結果は大きく変わってしまいます。逆に言えば、ここからの準備を徹底することで、あなたは自分の実力を120%発揮し、合格をその手につかむことができるのです。
この記事では、私の実体験と多くの合格者の声をもとに、試験前日から試験後に至るまでの「最高の1日」を過ごすための具体的な準備と戦略を、時系列で徹底的にシミュレーションします。あなたのこれまでの努力を、一点の悔いなく本番の得点に結びつけるための、最後の羅針盤としてください。
目次
試験当日は、もう一つの「科目」である
なぜ、試験当日の過ごし方がそれほど重要なのでしょうか。それは、公認会計士試験が単なる知識量だけでなく、極度の緊張下で思考力と判断力を維持する「精神的な持久力」を問う試験だからです。
なぜ当日のコンディションが合否を分けるのか
- 集中力の持続:短答式・論文式ともに、試験は長時間にわたります。特に論文式は3日間に及ぶ長丁場です 。睡眠不足や疲労は、後半の科目でのケアレスミスや思考停止に直結します。
- 時間配分:限られた時間の中で、解ける問題と捨てるべき問題(いわゆる「捨て問」)を瞬時に見極める判断力が求められます。焦りは冷静な判断を狂わせ、本来取れるはずだった点数を失う原因となります 。
- メンタルの安定:1科目めの出来が悪かったとしても、気持ちを引きずらずに次の科目に臨めるか。このメンタルの切り替えが、総合点での合否を大きく左右します。
これらはすべて、付け焼き刃の知識では対応できません。事前の準備とシミュレーションによってのみ、コントロール可能となるのです。
この記事でシミュレーションする「最高の1日」
この記事では、以下の流れに沿って、あなたが本番で最高のパフォーマンスを発揮するための具体的な行動計画を提示します。一つひとつ確認し、自分だけのアクションプランを完成させましょう。
- 【前日】:最後の知識確認と、心身のコンディション調整
- 【当日・朝】:最高の状態で試験会場入りするためのルーティン
- 【試験中】:1点でも多く稼ぐための時間戦略とメンタル術
- 【休憩時間】:脳をリセットし、次の科目へ集中力を高める方法
- 【試験後】:結果を待ち、次へ進むための心の持ち方
【試験前日】やるべきこと・やってはいけないこと
試験前日は、最後の悪あがきをする日ではありません。本番で最高のパフォーマンスを発揮するための「最終調整」の日です。
最後の追い込みはNG!見るべき教材は「1冊」に絞り込む
前日に新しい問題集に手を出したり、苦手な論点をゼロから理解しようとしたりするのは絶対にやめましょう 。解けなかった場合に自信を失い、不安を増大させるだけです。
前日にやるべき勉強は、これまで使い込んできたテキストやまとめノート、答練の間違いノートなどを「広く浅く」見返すことです 。
- 目的:新しい知識を得るのではなく、「これだけやってきたんだ」という自信を再確認し、記憶を呼び覚ますこと。
- 方法:自分が最も信頼する教材を1冊(または1つのファイル)に絞り込み、「これだけは完璧にする」と決めて、それを繰り返し眺めるのが効果的です。
やるべきこと(OK) | やってはいけないこと(NG) |
使い慣れたテキストやまとめノートの確認 | 新しい問題集や参考書に手を出す |
過去に間違えた問題の解法を再確認 | 苦手な論点をゼロから克服しようとする |
基本的な公式や定義の最終チェック | 徹夜での詰め込み学習 |
持ち物の最終チェックリスト【短答式・論文式共通】
当日の朝に慌てないよう、持ち物は前日の夜までに完璧に準備しておきましょう。忘れ物は、それだけで精神的な動揺を招きます。
カテゴリ | 持ち物 | ポイント |
必須 | 受験票、写真票 | 絶対に忘れないこと!ないと受験できません。 |
筆記用具(黒ボールペン、鉛筆/シャーペン、消しゴム) | ペンはインク切れに備え、複数本用意しましょう 。 | |
修正テープまたは修正ペン | 多めに持っていくと安心です 。 | |
電卓 | 予備の電卓も必ず持参しましょう 。 | |
腕時計 | 会場に時計がない場合があります。スマホでの代用は不可です 。 | |
マスク | 会場によっては必須の場合があります。 | |
推奨 | 使い慣れた教材 | 上記で絞り込んだ1冊を持参しましょう。 |
昼食、軽食、飲み物 | 消化が良く、眠くなりにくいものを選びましょう 。 | |
上着(カーディガンなど) | 会場の空調対策は必須です 。 | |
耳栓 | 周囲の電卓の音などが気になる場合に有効です 。 | |
常備薬(頭痛薬、胃腸薬など) | 眠くならないタイプを選びましょう 。 | |
現金 | 交通機関のトラブルに備え、タクシー代など少し多めに。 |
最高のコンディションを作るための食事と睡眠戦略
- 食事:夕食は、カツ丼などの験担ぎメニューや、消化に悪い脂っこいものは避けましょう 。普段から食べ慣れている、胃腸に優しい和食などがおすすめです。
- 睡眠:理想は7時間以上の睡眠です。緊張で寝付けないかもしれませんが、焦る必要はありません。横になって目を閉じているだけでも、体は休息できます 。就寝前のスマホは、脳を覚醒させるブルーライトの影響で睡眠の質を低下させるため、絶対にやめましょう 。
【試験当日・朝】最高のスタートを切るためのルーティン
試験当日の朝は、いかに平常心で過ごせるかが鍵です。
起床時間は試験開始の4時間前がベスト
脳が最も活発に働くのは、起床してから3〜4時間後と言われています 。例えば、試験開始が午前10時半なら、午前6時半頃に起きるのが理想的です。これにより、1科目めの開始時間に脳のパフォーマンスをピークに持っていくことができます。
脳を動かす朝食と、会場への余裕を持った移動
- 朝食:朝食抜きは厳禁です。脳のエネルギー源となるブドウ糖を補給するため、ご飯やパンなどの炭水化物を中心に、普段から食べ慣れているものを摂りましょう 。ただし、満腹になると眠気を誘うため、腹八分目を心がけてください 。
- 移動:交通機関の遅延なども考慮し、試験開始の1時間前には会場に到着するくらいの余裕を持って家を出ましょう。早く着きすぎても、会場周辺のカフェなどで最後の確認ができます。会場までのルートは前日までに必ず確認しておきましょう 。
試験開始直前までに行うべきメンタルセットアップ
会場に着いたら、自分の席を確認し、トイレの場所を把握しておきましょう。試験開始までの時間は、以下のことをして過ごすのがおすすめです。
- 教材の確認:持参したまとめノートなどを眺め、「いつも通りの勉強」をすることで心を落ち着かせます 。
- 深呼吸:ゆっくりと深い呼吸を繰り返すことで、心拍数を落ち着かせ、リラックス効果が得られます 。
- ポジティブな自己暗示:「自分はこれだけやってきたんだから大丈夫」と心の中で唱え、自信を奮い立たせましょう 。
【試験中】1点を稼ぎ出すための時間配分と問題選択術
試験が始まったら、ここからは時間との戦いです。冷静な戦略があなたの得点を最大化します。
開始5分で全体像を把握し「解く順番」を決める
「始め!」の合図とともに、すぐに1問目に取り掛かってはいけません。最初の3〜5分間を使って、問題冊子全体をパラパラと見渡し、各大問のテーマ、ボリューム、難易度をざっくりと把握します 。
この偵察作業により、以下のような戦略を立てることができます。
- 解く順番の決定:明らかに簡単で得点源になりそうな問題から手をつける。
- 時間配分の策定:ボリュームのある問題、時間がかかりそうな問題を把握し、大まかな時間配分を決める。
「解ける問題」から手をつける鉄則と「損切り」の勇気
公認会計士試験は満点を取る必要はありません。合格ラインを越えれば良いのです。そのためには、確実に解ける問題(Aランク問題)から手をつけて、得点を積み重ねていくことが鉄則です 。
そして、最も重要なのが「損切り」の勇気です。少し考えてみて「これは時間がかかりそうだ」「解法が全く思い浮かばない」と感じた難問(Cランク問題)は、潔く飛ばしましょう。その問題に固執して時間を浪費することが、最も避けるべき事態です。
【具体例】短答式・論文式の時間配分モデル
以下はあくまで一例です。自分の得意・不得意に合わせて調整してください。
【短答式:企業法(60分)の例】
フェーズ | 時間 | 内容 |
①偵察 | 3分 | 全体の問題構成と難易度を把握。 |
②基礎問題 | 35分 | 明らかに正誤が判断できる問題を確実に解く。 |
③応用問題 | 15分 | 少し考えれば解けそうな問題に挑戦。 |
④見直し | 7分 | マークミスがないか、計算ミスがないか最終確認。 |
【論文式:監査論(120分)の例】
フェーズ | 時間 | 内容 |
①問題分析・構成 | 15分 | 問題文を精読し、問われている論点を把握。答案の骨子(フレームワーク)を作成。 |
②答案作成(大問1) | 45分 | 骨子に沿って、キーワードを盛り込みながら記述。 |
③答案作成(大問2) | 45分 | 同様に記述。 |
④全体の見直し | 15分 | 誤字脱字、論理の飛躍がないかを確認。 |
科目間の休憩時間の使い方:脳をリフレッシュさせる方法
1科目が終わるごとに、脳は想像以上に疲弊しています。次の科目で最高のパフォーマンスを発揮するためには、休憩時間の使い方が極めて重要です。
やってはいけない休憩中のNG行動
- 前の科目の答え合わせ:終わった科目のことを考えても結果は変わりません。友人との答え合わせは絶対にやめましょう 。
- スマホ・SNSのチェック:大量の情報は脳を疲れさせ、集中力を削ぎます。休憩中はスマホの電源を切っておくのがベストです 。
- 重い食事:満腹になると消化にエネルギーが使われ、眠くなります。昼食は軽めに済ませましょう 。
次の科目に集中するための5つのリフレッシュ術
- 糖分補給:チョコレートやラムネなど、脳のエネルギー源となるブドウ糖を補給しましょう 。
- 軽い運動・ストレッチ:席を立ち、少し歩いたり、肩を回したりして血流を良くすると、脳が活性化します 。
- 目を閉じて休む:5分間、静かに目を閉じるだけでも、視覚情報が遮断され、脳を効果的に休ませることができます 。
- 音楽を聴く:気分を上げるお気に入りの曲や、リラックスできるクラシック音楽を聴くのも効果的です 。
- 次の科目の準備:次の科目のまとめノートに軽く目を通し、頭を切り替えましょう。
【試験後】結果を待つ間の過ごし方
長い試験が終わり、解放感と同時に、言いようのない不安に襲われる時期です。
自己採点はすべきか?メリットとデメリット
特に短答式試験後は、各予備校が解答速報を出します。自己採点には一長一短があるため、自分の性格に合わせて判断しましょう。
- メリット:合格の可能性が高ければ、すぐに論文式試験の勉強に切り替えられる。不合格の可能性が高ければ、次回の短答式に向けた計画を早期に立てられる。
- デメリット:ボーダーライン上にいる場合、結果が確定するまで不安な日々を過ごすことになる。出来が悪かった場合に、必要以上に落ち込んでしまう。
解放感と不安を乗りこなし、次へ進むために
試験が終わった直後は、これまで我慢してきたことを思い切り楽しんでください。旅行に行く、友人と会う、趣味に没頭するなど、心身ともにリフレッシュすることが大切です。
そして、数日休んだら、冷静に次のステップを考え始めましょう。結果がどうであれ、あなたのこれまでの努力が消えることはありません。その経験は、必ず次のステージで活きてきます。
まとめ:万全の準備と戦略が、あなたの実力を最大限に引き出す
公認会計士試験は、ゴールテープの直前で転んでしまう可能性がある、過酷なレースです。しかし、その転倒は、準備不足によって引き起こされることがほとんどです。
この記事で紹介した、前日から試験後までのシミュレーションを何度も頭の中で繰り返し、自分なりの「最高の1日」の過ごし方を確立してください。
- 前日は「確認」に徹し、心身を整える。
- 当日は「いつも通り」を心がけ、余裕を持って行動する。
- 試験中は「戦略的」に時間を使い、1点でも多く積み上げる。
- 休憩時間は賢く「リフレッシュ」し、脳を再起動させる。
万全の準備と戦略こそが、あなたを合格へと導く最強の武器です。あなたのこれまでの努力が、本番の舞台で最大限に輝くことを、心から応援しています。
よくある質問(Q&A)
試験中にどうしても解けない問題にぶつかり、パニックになったらどうすればいいですか?
まずは一度、その問題から意識的に離れることが重要です。ペンを置き、目を閉じて2〜3回深呼吸をしてください。そして、一度その問題を飛ばし、確実に解ける別の問題に移りましょう。簡単な問題で1つでも正解を出すと、「自分はできる」という感覚が戻り、冷静さを取り戻せます。パニックは「この1問が解けないと落ちる」という思考から生まれます。全体で合格点を取れば良い、と視野を広げることが大切です。
前日、緊張で全く眠れなかった場合、当日はどう乗り切れば良いですか?
まず「眠れなかった」と焦らないことが一番です。人間は1日くらい寝なくても、交感神経が優位になり、意外と集中力は持つものです。当日は、休憩時間ごとに5分でも良いので目を閉じて脳を休ませることを意識してください。また、エナジードリンクに頼るよりも、チョコレートなどでこまめに糖分を補給する方が、集中力の持続には効果的です。
試験会場で耳栓を使っても良いのでしょうか?
はい、公認会計士・監査審査会の受験案内でも、耳栓の使用は認められています 。ただし、試験開始前の注意事項の説明時には外すように指示されます。周りの電卓の音や咳払いなどが気になる方は、持参することをおすすめします。ただし、普段使っていないと違和感で逆に集中できない場合もあるので、事前に模試などで試しておくと良いでしょう。
数ある専門学校の中からいくつかご紹介致します。資格取得に際し専門学校選びのご参考として頂けますと幸いです。
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