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株式上場(IPO)の実務(1) IPO準備「何から始めれば?」 

2021年度にIPOを達成した会社数は125社と、2020年度の93社から32社増加しておりIPO市場は堅調に推移しており、将来的にIPOを考えている潜在的な会社は多いものと考えられます。

社内でIPOを目指そう!ということになっても、「そもそもIPO準備は何から始めればよいのか?」、「どのように進めて行けばよいのか?」、あいまいなまま進めてもIPO準備作業自体が全く進んでいないという事になりかねません。

IPOの具体的な準備に着手する前に、IPOを達成するためには、「いつ、何をするべきであるか」しっかりと理解することをオススメします。

IPO準備 「いつから始めればよいのか?」

社内で株式上場(IPO)をすることが決定されたとしても、すぐにIPOをすることはできません。IPOするためには、証券取引所の上場審査をパスしなければなりません。

証券取引所の上場審査の期間は、上場申請期及び直前の2期間と定められていることから最低でも3年間は準備期間として必要であり、長期のプロジェクトとであることから、社内一丸となった取り組みが必須となります。

上場審査の具体的内容については、稿を改めて説明しようと思います。

IPO準備 「上場スケジュールの決定」

IPOには最低でも3年間は準備期間として必要であることは、前述のとおりですが、上場審査をパスするための社内管理体制の構築(上場会社と同レベルの社内管理体制の構築)と、会社業績の成長とを同時並行で実現することは非常に困難です。

IPOを目指す会社の大部分が、「社内管理体制の構築」と「会社業績の成長」を同時並行で実現することができないことから、IPOを断念している現状があります。

IPOを目指す場合、「社内管理体制の構築」と「会社業績の成長」のバランスを取りながら同時並行で実現させるべく上場スケジュールを決定することが望まれます。

なお、上場スケジュールを決定する際には、IPOコンサルタントや監査法人等の専門家に事前に相談することがよいでしょう。

IPO準備 「監査法人によるショートレビュー」

株式上場(IPO)のためには、上場申請の過去2年分の財務諸表等について監査法人による監査証明が必要となります。
監査法人は、IPO準備を始める前に行う企業調査としてショートレビューを行います。

監査法人によるショートレビュー(短期調査)は、IPOするに際し自社に足りない事項や改善が必要な事項の網羅的な洗い出しを行い、株式上場までの戦略的な上場準備スケジュール策定の参考となる情報を提供するものです。

会社としてIPOすることを決めた場合、早期に監査法人によるショートレビューを受けることが、IPO準備を効率的に進めることにつながります。

IPO準備 「IPO責任者の選定」

社内でIPOをすることが決定された場合、IPOの責任者を選定することが必要となります。

IPO責任者は主に以下の事を実施致します。

  • IPO準備スケジュールの立案、進捗管理
  • IPO準備の社外関係者(証券会社、監査法人等)との関係構築
  • IPO準備の社内関係者との関係構築

IPO準備は、社内外を問わず複数の関係者を巻き込んで進めて行く必要があるため、IPO責任者としての適切な人は、IPO準備に関する知識や経験はもちろん必要ですが、社内外の関係者と良好なコミュニケーションを取れる人材を選定することが、IPO準備を成功に導くための第一歩といえます。

IPO準備 「IPOを成功させるためには」

IPO準備作業が具体的に動き始めると、IPOのための課題は、社内の業務プロセスや管理体制の抜本的な改革、社員の意識改⾰や組織改革、会計監査対応、上場審査への対応など、上場準備作業は多岐にわたります。

そのため、IPOを目指す会社の大部分が、IPOのための課題が膨大であることからIPOを断念せざるを得ない状況となっているのがIPOを目指す会社の現状です。

そのような中で、実際に上場できる会社と上場を断念した会社の違いは、会社の「IPOに対する強い意志と誠実性」にあるのではないでしょうか。

「IPOに対する強い意志」とは、経営者のみならず社内一丸となってIPOを目指す意志であり、「誠実性」とは、IPOに対する課題(障害)に対して誠実に取り組む姿勢であり、IPOを成功した会社に共通するものであるといえます。

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