1.株式上場(IPO)

株式上場(IPO)の実務(2) ショートレビュー(短期調査)とは?

会社としてIPOすることを決めた場合、まず、監査法人によるショートレビューを受けることをオススメします。

IPOをするためには、上場申請の過去2年分の財務諸表等について監査法人による監査証明が必要となります。
監査法人は、監査受嘱前に会社が監査を受け入れることが可能か否かの検討をするための企業調査としてショートレビューを行います。

言い換えると、IPOをするためには監査法人によるショートレビューは必須であり、ショートレビューがIPO準備作業の第一歩となります。

ショートレビューとは?

ショートレビューは、監査法人(公認会計士)が1ヵ月~3ヵ月程度で会社の「株式上場にあたっての課題を抽出」するとともに、課題の改善方法及び改善を踏まえた上で、「上場の意思決定」および「上場までの具体的なスケジュール等」を提案するものです。

ショートレビューの報告書に基づき、会社はそもそも上場すべきか、上場を目指すとしたら何が課題となるのか、上場する時期をいつにするかについて会社として将来を見据えた総合的な判断が可能となります。

ショートレビューの進め方

ショートレビューは契約締結後、1ヵ月程度で実施・報告されます(会社の規模が大きい場合、ビジネスの内容が複雑な場合は2~3ヵ月を要する場合もあります)。

実際のショートレビューの標準的な進め方は以下の通りです。

事前準備

会社から依頼を受けて、契約締結をしたのち、貴社の概況把握のための資料を収集し分析を行います。

契約締結後、会社案内、組織図、事業計画書、株主名簿、資本政策、最近3年間の財務諸表等の提出が求められ、監査法人は提出された資料をもとに会社の状況について事前分析を実施し問題点や課題を抽出します。

調査実施

会社に1週間程度訪問し、経営者や経理担当者とのヒアリングを実施します。

ショートレビューは、基本的にはヒアリングベースで実施されます。なお、調査は制度調査(社内管理体制の上場審査基準への適合状況の調査)と財務調査(上場企業に求められる会計基準との相違についての調査)について実施されることとなります。

調査報告書の作成

事前の会社資料の分析および経営者や経理担当者へのヒアリング結果に基づき、株式上場に向けての課題、上場スケジュールの提案書を作成します。

報告会の実施

経営者に向けて調査結果に係る報告会を実施します。

報告会では、株式上場に向けての課題の改善方針やIPOへの一般的な留意事項についてもディスカッションします。

ショートレビューの調査内容

ショートレビューの調査は制度調査と財務調査の観点から実施されます。

制度調査

主に以下の事項について、証券取引所における上場審査基準への適合状況を調査します。

  • 経営管理体制の整備状況
    株主総会、取締役会等の機関、役員構成、内部監査、社内規程等について、上場審査上の問題点を検討します。
  • 業務管理体制の整備状況
    会社のビジネス上の主要サイクル(販売管理、購買管理、在庫管理)について、上場審査上の問題点を検討します。
  • 利益管理整備状況
    事業計画、年度予算管理、月次決算制度等について、上場審査上の問題点を検討します。
  • 関係会社の状況
    関係会社の状況及び取引関係について、上場審査上の問題点を検討します。
  • 特別利害関係者との取引の状況
    役員等特別利害関係者との取引関係について、上場審査上の問題点を検討します。

財務調査

主に以下の事項について、 上場企業に求められる会計基準との相違について調査します。

  • 会計制度の整備状況
    会社の財務諸表の作成に際し採用された会計処理基準と、一般に上場企業に求められる会計処理基準との相違について調査します。

おわりに

株式上場準備に係る作業量は膨大であることが想定されるため、準備作業を効率的に進める前にショートレビューを受け、上場にあたっての課題を事前に把握し、作業の優先順位を明確することは、会社にとってもメリットになることでしょう。

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