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【新任監査役必見】監査役監査の基本を完全理解|業務・会計監査の進め方から監査報告書の作成まで

Sato|元・大手監査法人公認会計士が教える会計実務!

Sato|公認会計士| あずさ監査法人、税理士法人、コンサルファームを経て独立。 IPO支援・M&Aを専門とし、企業の成長を財務面からサポート。 このブログでは、実務に役立つ会計・税務・株式投資のノウハウを分かりやすく解説しています。

こんな方におすすめ

  • 新しく監査役に就任された方、またはその候補者の方
  • 監査役の役割と責任を正確に理解したい経営者の方
  • 業務監査と会計監査の具体的な違いを知りたい方
  • コーポレートガバナンスの要諦を学びたい方

はじめに:あなたの会社は、本当に「健康」ですか? 企業の「健康診断」を担う監査役の重要性

「あなたの会社は、本当に『健康』ですか?」

売上や利益は、いわば会社の「体格」や「体力」を示す分かりやすい指標です。しかし、人間と同じように、外からは見えないところで問題が進行していることも少なくありません。近年の企業不祥事のニュースを見ても、一つの問題が会社の信頼を根底から揺るがし、長年かけて築き上げた価値を一瞬で失わせてしまう現実があります。

こうした事態を防ぎ、企業の持続的な成長を支えるために不可欠な仕組みが「コーポレート・ガバナンス(企業統治)」です。そして、その中心的な役割を担うのが、会社の「健康診断」を行う専門家、監査役(かんさやく)です。

監査役は、経営陣の業務が正しく、そして健全に行われているかを株主の代理人としてチェックする、いわば会社の「かかりつけ医」のような存在です。彼らの厳しい目があるからこそ、経営の透明性が保たれ、会社は社会的な信頼を得ることができます。

「監査役の仕事は専門家だけが知っていれば良い」——そんな時代は終わりました。これからの時代、役員はもちろん、部長クラスの管理職、そして将来のリーダーを目指すすべてのビジネスパーソンにとって、監査役の役割を理解することは必須の知識と言えるでしょう。

しかし、「会社法は難解で、どこから学べば良いかわからない」と感じる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、そんな方々のために、監査役監査の基本中の基本を、公認会計士の視点から誰にでも分かるように、具体例を交えて解説します。そして、その第一歩として最適な一冊、『監査役監査の基本がわかる本』をご紹介します。この記事を読めば、監査役監査の全体像が10分でつかめるはずです。

監査役とは? 間違いやすい「三つの監査」の役割を徹底比較

まず、最も基本的な「監査役とは何か?」から始めましょう。監査役とは、株主総会で選任され、取締役の職務執行が法令や定款(会社のルールブック)に従って適正に行われているかを、株主に代わって監督する株式会社の機関です 。取締役が会社の経営を執行する「アクセル」だとすれば、監査役はその執行が暴走しないようにチェックする独立した「ブレーキ」役と言えます。  

多くの企業には、監査役監査の他に「会計監査」「内部監査」という機能も存在します。これらは「三様監査(さんようかんさ)」と呼ばれ、それぞれが連携しつつも異なる役割を担っており、混同されがちです 。まずは、以下の表でその違いを明確に理解しましょう。  

表1:一目でわかる!三様監査の役割比較

特徴監査役監査会計監査人監査内部監査
立場株主総会で選任される会社の機関会社から独立した外部の専門家(公認会計士・監査法人)会社の内部組織・従業員
根拠法会社法会社法、金融商品取引法法的義務はないが、内部統制上重要
主な目的取締役の職務執行全般を監督し、株主の利益を守る(業務監査+会計監査)計算書類等の適正性を検証し、投資家や債権者を守る経営者の命を受け、業務プロセスの改善やリスク管理を行う
報告先株主総会取締役会、監査役、株主総会代表取締役、取締役会

このように、監査役は外部の会計監査人や社内の内部監査部門とは全く異なる、株主の負託を受けた独立した立場から、経営全体を監督するという非常に重い責任を負っているのです。

監査役が持つ「二本の刀」:業務監査と会計監査

監査役の職務は、大きく分けて二つの領域にわたります。それは「業務監査」と「会計監査」です。この二つは、監査役が経営を監督するために振るう「二本の刀」と考えると分かりやすいでしょう 。  

業務監査:経営の「プロセス」は正しいか?

業務監査とは、取締役の意思決定プロセスや業務の遂行状況が、法令や定款、社内規程に違反していないか、また著しく不当な点はないかをチェックすることです 。これは、単に結果としての数字を見るだけでなく、その数字が生まれるまでの「過程」の健全性を問う監査です。  

【具体的な業務監査の例】

  • 取締役会への出席:重要な投資案件が議論される際、その決定プロセスが合理的であったか、一部の役員の独断で進められていないかなどを監視します。
  • 重要契約のレビュー:会社にとって影響の大きい契約を締結する際、承認手続きが社内規程通りに行われているか、特定の取締役に不当な利益が渡るような「利益相反取引」に該当しないかなどを確認します 。  
  • コンプライアンス体制のチェック:法令遵守のための体制が社内に正しく構築され、機能しているかを検証します。

会計監査:会社の「決算書」は正しいか?

会計監査とは、会社が作成した貸借対照表や損益計算書などの計算書類が、会計基準に準拠して適正に作成されているかをチェックすることです 。これは、会社の財政状態や経営成績を映し出す「鏡」が曇っていないか、歪んでいないかを確認する作業です。  

【具体的な会計監査の例】

  • 計算書類の検証:報告されている売上が架空のものでないか、資産として計上されている在庫が実際に存在するのかなどを確認します。
  • 会計監査人との連携:大会社など会計監査人(監査法人)の設置が義務付けられている会社では、会計監査人から監査結果の報告を受け、その監査方法や結果が妥当であるかを監査役の視点からも検証します。

非公開の中小企業などでは、定款で監査役の権限を会計監査に限定することも可能ですが(会計限定監査役)、上場企業や大会社では、この「業務監査」と「会計監査」の両方を行う広範な権限と責任が求められます 。  

法的な裏付け:会社法が監査役に与える「4つの強力な権限」

監査役がその重責を全うするため、会社法は監査役に非常に強力な権限を与えています。これらは、監査役が経営陣から独立して、実効性のある監査を行うための「伝家の宝刀」とも言えるものです。ここでは特に重要な4つの権限を、根拠条文とともに解説します。

1. 調査権:いつでも、どこでも、調査できる

監査役は、その職務を行うために必要があるときは、いつでも取締役や従業員に対して事業の報告を求め、会社の業務及び財産の状況を調査することができます。この権限は子会社にも及びます(子会社調査権) 。これは、監査役が「知りたい」と思った情報を、会社のあらゆる場所から入手できる非常に強力な権限です。  

2. 取締役会への出席義務及び意見陳述義務:経営の中枢で意見を述べる

監査役は、取締役会に出席する義務があり、必要があると認めるときは、意見を述べなければなりません 。これは、経営の最高意思決定の場で、監査役が常に監視の目を光らせ、不正や不当な決定が行われようとした際には、その場で直接「待った」をかけることができる重要な役割です。  

3. 違法行為差止請求権:不正行為を未然に防ぐ

取締役が法令や定款に違反する行為を行い、または行うおそれがあり、その行為によって会社に著しい損害が生じるおそれがある場合、監査役はその取締役に対し、その行為をやめることを請求できます 。これは、問題が起きてから対処するのではなく、不正の兆候を察知した段階で、その実行を法的に差し止めることができる、極めて強力な予防的権限です。  

4. 取締役への報告義務:発見した不正を報告する

監査役は、取締役が不正の行為をし、もしくはするおそれがあると認めるとき、または法令・定款に違反する事実や著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を取締役会に報告しなければなりません 。逆に、取締役も会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見したときは、直ちに監査役に報告する義務があります 。これにより、相互の報告義務を通じて、問題の早期発見と対処が促されます。  

  • 根拠条文:会社法 第382条(監査役から取締役会へ)、会社法 第357条(取締役から監査役へ)
  • 参照元e-Gov法令検索

これらの権限は、監査役が単なる「お飾り」ではなく、会社の健全性を守るための実質的な力を持つ存在であることを法的に保証しているのです。

監査役の1年:年間スケジュールから見る具体的な仕事内容

監査役の仕事は、決算期だけといったスポット的なものではなく、年間を通じて継続的に行われるものです。その活動は、会社の事業年度や取締役会のスケジュールと密接に連動しています 。ここでは、日本で一般的な3月決算の会社を例に、監査役の年間の活動スケジュールを見てみましょう。  

表2:監査役の年間活動モデルスケジュール(3月決算会社の場合)

時期主な活動ポイント
4月~5月期末監査・監査報告作成1年間の総仕上げ。会計監査人と連携し、期末の計算書類を最終チェック。株主総会に提出する監査報告書を作成します 。  
6月定時株主総会・新年度計画策定株主総会で監査結果を報告。総会後、新たな事業年度の監査方針や重点監査項目などを盛り込んだ年間監査計画を決議します 。  
7月~9月第1四半期レビュー・期中監査新計画に基づき監査活動を開始。定期的な取締役会への出席や、第1四半期の決算状況の確認、主要な部署へのヒアリングなどを行います 。  
10月~12月中間監査事業年度の折り返し地点。会計監査人から中間監査報告書を受領し、その内容を検証。監査役会としても中間時点での監査結果を取締役会に報告します 。  
1月~3月第3四半期レビュー・期末監査準備第3四半期の業績を確認しつつ、期末監査に向けた準備を開始。年度末に向けてリスクが高まりそうな項目を洗い出し、重点的にチェックする準備をします 。  

このスケジュールを見ても分かるように、監査役は常に会社の動きをモニタリングし、重要な節目でチェック機能を果たしています。まさに、会社の航路が正しい方向に向かっているかを一年中見守る「航海士」のような役割なのです。

なぜ、この一冊があなたの「最初の教科書」になるのか

ここまで監査役の役割、権限、そして年間の仕事内容について解説してきました。その職務が、いかに専門的で、かつ大きな法的責任を伴うものであるか、お分かりいただけたかと思います。

新しく役員や監査役に就任された方が、これらの膨大な知識を独学で、しかも断片的に学ぼうとすると、途方もない時間と労力がかかってしまいます。

そこで、あなたの「最初の教科書」として強くお勧めしたいのが『監査役監査の基本がわかる本』です。

この本がなぜ必読なのか、その理由は明確です。

  • 体系的な知識が身につく:この記事で解説したような監査役監査の全体像を、より深く、体系的に学ぶことができます。難解な会社法の条文を、実務に即した平易な言葉で解説してくれるため、知識がスムーズに頭に入ります。
  • 実践的な視点が手に入る:理論だけでなく、「取締役会で何を質問すべきか」「どの資料を重点的に見るべきか」といった、現場で役立つ実践的なノウハウが詰まっています。著者の豊富な経験に基づいた解説は、明日からの行動を変えるきっかけになるでしょう 。  
  • 自信を持って職務を遂行できる:監査役としての「あるべき姿」と「具体的な行動」を理解することで、自信を持って経営陣と対峙し、建設的な意見を述べることができるようになります。

この本は、以下のような方々に特におすすめです。

  • 新任の監査役の方:まさに必携のバイブルです。
  • 取締役・執行役員の方:自らを監督する監査役の役割を理解することで、より健全な経営判断が可能になります。
  • 部長クラス以上の管理職の方:監査を受ける立場として、監査の目的や視点を理解しておくことは、業務の円滑化に繋がります。
  • 経理・法務・経営企画部門の方:会社のガバナンス体制を支える上で、必須の知識が網羅されています。
  • 将来、会社の経営を担いたいと考えているすべての方

まとめ:信頼の礎を築くために

企業の価値は、もはや売上や利益だけで測られるものではありません。株主、従業員、顧客、そして社会全体からの「信頼」こそが、企業の持続的な成長を支える最も重要な基盤です。

そして、その「信頼」を守り、育むための最後の砦となるのが、監査役による実効性のある監査機能です。監査役の役割を正しく理解し、その機能を最大限に活かすことは、すべての経営層、管理職に課せられた責務と言えるでしょう。

コーポレート・ガバナンスを強化し、あなた自身のキャリアを一段上のステージへ引き上げるための第一歩を、ぜひ踏み出してください。

そのための最も確実で、最も近道となる羅針盤が、ここにあります。

よくある質問(Q&A)

監査役監査と、内部監査や会計監査人監査との一番の違いは何ですか?

最も大きな違いは、誰のために、誰を監査するかという点です 。監査役監査は、株主の負託を受け、株主の代理として取締役の職務執行が適法・適正か(経営全体)を監査します 。一方、内部監査は経営者の指揮のもと、従業員の業務が社内規程通りに行われているか(業務改善)を監査します 。また、会計監査人監査は、会社から独立した外部の専門家が、計算書類が適正に作成されているか(財務報告の信頼性)を監査するものです 。

常勤監査役と非常勤監査役では、法的な責任の重さに違いはありますか?

いいえ、法的な権限や責任の重さに違いはありません 。常勤監査役は社内に常駐して日々の業務執行を監視する役割を担いますが、非常勤監査役も取締役会への出席義務や調査権限など、会社法で定められた権限・義務は常勤監査役と全く同じです 。勤務形態や報酬は異なりますが、会社に対する善管注意義務や任務を怠った場合の損害賠償責任は同等に負うため、非常勤であってもその責任は非常に重いと言えます 。

監査で取締役の不正行為を発見した場合、監査役は何をすべきですか?

監査役は直ちに行動する義務があります。まず、取締役が不正行為をしていたり、法令・定款に違反する重大な事実があると認めた場合、遅滞なく取締役会にその旨を報告しなければなりません 。さらに、その行為によって会社に著しい損害が生じるおそれがある場合は、取締役に対してその行為をやめるよう請求する「違法行為の差止請求権」を行使できます 。これらの調査・対応結果は、監査報告書に記載し、株主総会で報告する義務も負います 。


ここでは、あくまで私個人の視点から、皆様のご参考としていくつかの書籍を挙げさせていただきます。

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Sato|公認会計士| あずさ監査法人、税理士法人、コンサルファームを経て独立。 IPO支援・M&Aを専門とし、企業の成長を財務面からサポート。 このブログでは、実務に役立つ会計・税務・株式投資のノウハウを分かりやすく解説しています。

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