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ニデック「意見不表明」の衝撃と真実!公認会計士が教える不適切会計の全貌と上場廃止リスク【徹底解説】

Sato|元・大手監査法人公認会計士が教える会計実務!

Sato|公認会計士| あずさ監査法人、税理士法人、コンサルファームを経て独立。 IPO支援・M&Aを専門とし、企業の成長を財務面からサポート。 このブログでは、実務に役立つ会計・税務・株式投資のノウハウを分かりやすく解説しています。

こんな方におすすめ

  • ニデック株を保有しており、今後の対応に迷っている方
  • 「意見不表明」という言葉の本当の深刻さを知りたい方
  • 企業の不祥事が株価や上場維持にどう影響するか学びたい方
  • 会計監査の仕組みや、公認会計士の仕事に興味がある方
  • 簿記を学習中で、実務での「仕訳」の使われ方を知りたい方

はじめに:ニデックの株価急落、その裏で何が起きていたのか?

「えっ、ニデックの株がストップ安?」

「『意見不表明』ってニュースで見たけど、これって倒産するの?」

2025年9月以降、日本を代表するモーターメーカーであるニデック(旧:日本電産)に関するニュースが株式市場を揺るがしています。これまで「成長神話」を続けてきた優良企業に、一体何が起きたのでしょうか。特に投資家の皆様を不安にさせているのが、会計監査人(監査法人)から突きつけられた「意見不表明」という聞き慣れない、しかし何やら恐ろしい言葉です。

私は公認会計士として長年監査の現場に立ってきましたが、この「意見不表明」という事態は、会計士人生の中でもめったにお目にかかるものではありません。これは単なる計算ミスや、ちょっとした不祥事とは次元が違う、まさに「緊急事態」を意味するからです。

本記事では、専門的な知識がない一般の方や、簿記・会計を勉強し始めたばかりの方に向けて、以下のポイントを徹底的にわかりやすく解説します。

  1. そもそも「意見不表明」とは何か?
  2. ニデックで何が問題になったのか?
  3. なぜ監査法人はそこまで怒ったのか?
  4. 私たち投資家はどうすべきか?

これを読めば、ニュースの表面だけでなく、その奥にある「企業のガバナンス」や「会計のロジック」まで深く理解できるようになるはずです。


第1章:「意見不表明」ってなに?監査意見の4つのランク

まず最初に理解しなければならないのは、今回ニデックが受け取った「意見不表明」という通知表の意味です。上場企業は、自分たちで作った決算書(財務諸表)が正しいかどうか、必ず公認会計士(監査法人)のチェックを受けなければなりません。これを「会計監査」と呼びます。

監査の結果、会計士は会社に対して「成績表(監査報告書)」を渡します。この成績表には、大きく分けて4つのランクがあります。これをわかりやすく「健康診断」や「学校の成績」に例えてみましょう。

1-1. 監査意見の信頼度グラデーション

以下の表をご覧ください。上に行くほど健全、下に行くほど深刻な状態です。

監査意見の種類健康診断での例え状況の説明信頼度
① 無限定適正意見「異常なし」決算書はルール通り正しく作られています。健康そのものです。★★★★★ (安心)
② 限定付適正意見「要経過観察」一部(例えば在庫の計算だけ)間違っているけど、全体としては大体合ってます。そこだけ直せばOKです。★★★☆☆ (注意)
③ 不適正意見「即入院」決算書はデタラメです。ガンが見つかりました。全く信用できません。☆☆☆☆☆ (危険)
④ 意見不表明「診断不能・拒否」カルテも見せない、検査もさせない。だから病気かどうかもわかりません。もはや医者として関われません。判定不能 (最悪)

通常、上場企業の99%以上は「① 無限定適正意見」をもらいます。何かミスがあっても、監査中に修正すれば①になるからです。

会社と監査法人の意見が食い違った場合などは「② 限定付適正意見」が出ることがありますが、それでも「会社は存続できる」という前提は崩れていません1

「③ 不適正意見」は、「あなたの決算書は間違いだ!」と断定するものです。これはこれで大事件ですが、少なくとも「どこが間違っているか」は分かっています。

しかし、今回ニデックに出されたのは「④ 意見不表明」です。

これは監査法人が「サジを投げた」状態です。

「間違いがある証拠」すら掴めない。

「会社が出してきた資料が信じられない」。

「これ以上調べても無駄だ」。

そう判断した時にだけ出される、監査人からの「絶縁状」とも言える最も重い処分なのです。

1-2. なぜ「不適正」より「不表明」が怖いのか?

「間違い(不適正)」と言われるより、「何も言わない(不表明)」の方がタチが悪いのはなぜでしょうか?

それは、「底が見えないから」です。

不適正意見であれば、「売上が100億円水増しされています」と指摘できます。投資家は「じゃあ100億円引いて考えればいいのか」と計算できます。

しかし、意見不表明の場合、「100億円の水増しかもしれないし、実は1兆円かもしれない。そもそも会社が存在しているかどうかも怪しい」というレベルの疑心暗鬼が含まれている可能性があります。

監査基準委員会報告書(以下、監基報)では、意見不表明について次のように定めています。

監査人は、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手できず、かつ、未発見の虚偽表示がもしあるとすれば、それが財務諸表に及ぼす可能性のある影響が、重要かつ広範であると判断する場合には、意見を表明してはならない。

(監査基準委員会報告書705「独立監査人の監査報告書における除外事項付意見」第8項)

この「重要かつ広範」という言葉がキーワードです。

「ちょっとしたミス」ではなく、「会社全体(広範)に影響するような、取り返しのつかない(重要)問題」が隠れているかもしれない、と監査法人は見ているのです。


第2章:事件の発端と「購買一時金」のカラクリ

では、世界的優良企業と思われていたニデックで、具体的に何が起きたのでしょうか?

問題の中心地は、中国にある子会社「ニデックテクノモータ(浙江)」でした。

2-1. 事件のタイムライン

  • 2025年6月頃:まずイタリアの子会社で貿易に関する問題(関税未払いなど)が発覚。これにより決算発表が延期されました。
  • 2025年7月22日:子会社のニデックテクノモータから日本の本社監査等委員会に対し、「中国子会社で、サプライヤーからの値引き(購買一時金)約2億円について不適切な会計処理が行われた疑いがある」と報告が入ります。
  • その後の社内調査:デジタルフォレンジック(メールやPCの解析)を行ったところ、中国だけでなく他のグループ会社でも、さらには経営陣が関与した疑いのあるメールや資料が見つかりました。
  • 2025年9月26日:ニデックは有価証券報告書を提出しましたが、監査法人(PwC Japan)は「意見不表明」の報告書を添付しました。
  • 現在:第三者委員会による調査が継続中です。

2-2. 「購買一時金(リベート)」とは何か?

今回の不正の主役となったのが「購買一時金(リベート)」です。

「リベート」と聞くと、政治家の賄賂のような悪いイメージを持つ方もいるかもしれませんが、ビジネスの世界では一般的な商習慣です。

例えば、ニデックのようなメーカーが、部品サプライヤーから大量の部品を買うとします。

「いつもたくさん買ってくれるから、感謝の印として代金の一部をキャッシュバックしますよ」

これが購買一時金です。

お金をもらうこと自体は、全く問題ありません。

問題なのは、「そのもらったお金を、会計帳簿にどう記録するか」という点です。

2-3. 正しい処理 vs 不正な処理(図解)

ニデックは国際的な会計ルールであるIFRS(国際会計基準)を採用しています。

IFRSでは、棚卸資産(在庫)のコストについて明確なルールがあります。

購入原価には、購入代価、輸入関税及びその他の税金、・・・並びに製品、材料及びサービスの取得に直接起因する輸送費、荷役費及びその他の費用が含まれる。値引、割戻し及びその他の類似項目は、購入原価の決定に際して控除される。

(IAS第2号「棚卸資産」第11項)

少し難しい言葉ですね。簡単に言うと、こうです。

「リベートをもらったら、それは『儲け(収益)』ではなく、『仕入れ値の値引き(原価のマイナス)』として処理しなさい」

これを、具体的な数字と仕訳(簿記の記録方法)で見てみましょう。

【ケーススタディ】部品を1,000円で仕入れ、後で100円キャッシュバックされた場合

状況:

  1. 部品を1,000円で仕入れた。
  2. この部品はまだ倉庫にあり、売れていない(在庫)。
  3. サプライヤーから100円の購買一時金(リベート)を現金で受け取った。

この時の「100円」をどう扱うかが運命の分かれ道です。

項目① 正しい処理(IAS第2号)② 不正な処理(利益操作)
考え方「仕入れ値が安くなっただけ」と考える。「臨時ボーナス(利益)が入った!」と考える。
在庫の価値1,000円 → 900円に下げる。1,000円のまま。
今の利益プラスマイナスゼロ(まだ売れてないから)。+100円の利益を計上してしまう。
仕訳(借方/貸方)(借) 現金 100 / (貸) 棚卸資産 100(借) 現金 100 / (貸) 雑収入 または 売上原価 100

解説:

正しい処理(①)では、在庫の値段(資産の価値)を減らすだけなので、その瞬間の「利益」は増えません。この部品が将来売れた時に初めて、安く仕入れた効果として利益が出ます

しかし、正な処理(②)では、在庫の価値を減らさずに、受け取った100円を「雑収入」や「売上原価のマイナス」として処理してしまいます。

するとどうなるか?

「部品はまだ売れていないのに、帳簿上だけで100円の利益が生まれた」ことになります。

これを悪用すると、次のようなことが可能になります。

  • 「今月の利益目標にあと1億円足りないな…」
  • 「そうだ!サプライヤーに頼んで、来月もらうはずのリベートを今月もらったことにして、一気に利益に入れちゃおう(前倒し計上)」
  • 「あるいは、架空の覚書を作って、リベートをもらったことにしよう(架空計上)」

ニデックの中国子会社では、このような操作を行い、業績を良く見せようとした疑いが持たれています。これは典型的な「粉飾決算」の手口の一つです。


第3章:なぜ監査法人は「意見不表明」という伝家の宝刀を抜いたのか?

ここまで読んで、「なんだ、リベートの処理を間違えただけか。その分を修正して、ごめんなさいすればいいじゃないか」と思った方もいるかもしれません。

しかし、PwC Japan監査法人はそれを許しませんでした。なぜなら、問題の本質は金額の大小ではなく、「誰がやったか」にあったからです。

3-1. 「経営者不正」という最悪のシナリオ

監査の世界には、「経営者による不正(Management Fraud)」という言葉があります。

現場の担当者が自身のミスを隠すためにやる不正と、社長や役員が主導してやる不正では、深刻度が全く違います。

報道によると、今回の件では「経営陣が関与または認識した上で、不適切な処理に関わったと解釈する余地のある資料」が発見されています。

もし、会社のトップや幹部が不正に関わっていたとしたら、監査人はどう思うでしょうか?

  1. 「経営者確認書」が信じられない監査の最後には、社長から「私が知る限り、全ての情報は正しく開示しました」というサイン(経営者確認書)をもらいます。しかし、社長自身が不正に関与していたら、このサイン自体が嘘になります。
  2. 内部統制の無力化(オーバーライド)会社には通常、不正を防ぐルール(内部統制)があります。しかし、権力を持つ経営者は、このルールを無視(オーバーライド)して部下に命令することができます。「社長の命令なら仕方ない」と、組織ぐるみで隠蔽工作が行われている可能性があります。
  3. 範囲の拡大「中国の子会社だけです」と会社が言っても、「いや、経営陣が指示しているなら、アメリカも欧州も、日本国内も全部怪しいじゃないか」と疑わざるを得ません。

3-2. 監査の限界と「十分かつ適切な監査証拠」

監査基準委員会報告書(監基報)500では、監査人は意見を形成するために「十分かつ適切な監査証拠」を入手しなければならないとされています。

しかし、経営陣ぐるみの隠蔽工作があった場合、監査人がどれだけ調べても「これで全部だ」という確証を得ることは不可能です。偽造された請求書、口裏合わせされた議事録…。何が本物かわからない状態では、監査人は「証拠が入手できない」と判断します。

監査人は、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手できず、かつ、未発見の虚偽表示がもしあるとすれば、それが財務諸表に及ぼす可能性のある影響が、重要かつ広範であると判断する場合には、意見を表明してはならない。

(監査基準委員会報告書705「独立監査人の監査報告書における除外事項付意見」第8項)

つまり、PwC Japan監査法人は、

「あなたたち(経営陣)が信用できない以上、私たちがどれだけ調べても真実には辿り着けません。だから、責任を持って『正しい』とも『間違いだ』とも言えません」

という結論を下したのです。これは会計士としての、自己防衛のための最終手段でもあります。


第4章:投資家への影響と「上場廃止」のリアル

さて、ここからは投資家の皆様が最も気になる「今後」の話です。

「意見不表明」が出されたことで、ニデックの株式はどうなってしまうのでしょうか?

4-1. 「特設注意市場銘柄」への指定

東京証券取引所(東証)は、2025年10月28日付でニデック株式を「特設注意市場銘柄(とくせつちゅういしじょうめいがら)」に指定しました。

これは、東証からの「イエローカード」です。

「今のままでは上場企業としての資格がないよ。すぐに体制を直さないと退場(上場廃止)させるよ」という警告です。

指定の理由は、以下の東証のルールに基づいています。

上場会社の財務諸表等に添付される監査報告書等において意見不表明等が記載され、内部管理体制等について改善の必要性が高いと認められるため

(有価証券上場規程第503条第1項第2号b)

4-2. 今後のシナリオと上場廃止の条件

これからニデックは、厳しい監視の下で再生を図ることになります。具体的なプロセスは以下の通りです。

シナリオ①:復活(指定解除)

  1. 第三者委員会の調査完了: まずは「いくら不正があったのか」「誰がやったのか」を確定させます。
  2. 過年度決算の訂正: 過去の決算書を正しい数字に直し、「訂正有価証券報告書」を提出します。ここで監査法人から「無限定適正意見」をもらう必要があります。
  3. 内部管理体制確認書の提出: 「もう二度と不正をしません。こういうチェック体制を作りました」という報告書を東証に出します。
  4. 東証の審査: 原則として指定から1年後(改善期間終了後)に審査が行われ、問題なしとされれば通常の銘柄に戻ります(指定解除)。

シナリオ②:上場廃止(デリスティング)

以下の場合、ニデックは上場廃止となります。

  • 1年経っても改善されない場合: 内部管理体制が治っていないと判断された場合。
  • 新たな虚偽記載: 改善報告書の内容に嘘があった場合。
  • 監査意見が出ないままの場合: 訂正報告書に対しても、監査法人が「やっぱり意見不表明です」と言い続けた場合。

4-3. 過去の事例から見る可能性

過去には、東芝やオリンパス、IHIといった大企業も特設注意市場銘柄に指定されましたが、経営陣の総入れ替えや強力なガバナンス改革を行い、上場廃止を免れました。

一方で、改善の見込みがないと判断され、市場から姿を消した企業も数多く存在します。

ニデックの場合、技術力や事業基盤は強固ですが、創業以来の強力なリーダーシップが裏目に出た形での「ガバナンス不全」が問われています。

投資家の焦点は、「現在の経営陣が責任を取って退陣するか」「本当に独立したチェック体制を作れるか」という点に集まるでしょう。もし、形だけの改革でお茶を濁そうとすれば、東証は厳しい判断(上場廃止)を下す可能性があります。


第5章:ニデック問題から学ぶ、投資家がチェックすべきポイント

今回の事件は、私たち個人投資家にも大きな教訓を与えてくれます。

「有名企業だから安心」「利益が出ているから大丈夫」という考えは、もはや通用しません。

5-1. 危険な兆候(レッドフラグ)を見逃すな

私が会計監査の現場で感じる「危ない会社」の特徴をいくつか挙げます。

  1. 無理な目標必達文化: 「予算未達は許されない」というプレッシャーが異常に強い会社。
  2. ワンマン経営: 社長の言うことに誰も逆らえない雰囲気。
  3. 複雑な海外取引: 目の届きにくい海外子会社で、実態のよくわからない取引が増えている。
  4. 監査法人の異動: 理由もなく頻繁に監査法人が変わっている場合(監査法人側が逃げ出した可能性がある)。

5-2. 決算書のここを見よう

  • 「監査報告書」: 普段は読み飛ばしがちですが、必ず「無限定適正意見」であることを確認しましょう。
  • 「監査上の主要な検討事項(KAM)」: 監査人が「ここがリスクだ」と感じたポイントが書かれています。ニデックの場合、以前から「収益認識」や「海外子会社のリスク」について書かれていたはずです。

編集後記:会計は「嘘」を見抜くための武器になる

今回のニデックのニュースは、日本中に衝撃を与えました。「あの優良企業がまさか」と思った方も多いでしょう。 しかし、会計のルール(基準)と監査の仕組みを知っていれば、「意見不表明」という言葉一つから、その裏にある経営の闇や、監査人の苦悩、そして投資家が取るべき行動が見えてきます。

会計は、単なる数字の記録ではありません。ビジネスの真実を映し出す鏡であり、嘘を見抜くための強力な武器なのです。 この記事が、皆様の投資判断や会計リテラシーの向上に少しでも役立てば幸いです。

そして、当ブログ「会計支援.com」では、今回のような時事ネタから、日々の経理実務、簿記の勉強法まで、公認会計士の視点でわかりやすく解説しています。ぜひ他の記事も参考にしてみてください。

sato
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関連記事(さらに深く学びたい方へ)は以下をご参照ください。

よくある質問(Q&A)

「意見不表明」が出たら、その会社の株はすぐに紙切れになりますか?

すぐに価値がゼロになるわけではありませんが、リスクは極めて高いです。 「意見不表明」が出ても、会社がすぐに倒産するわけではありません。事業自体(モーターの製造販売)が順調であれば、キャッシュは回ります。しかし、上場廃止になれば株式市場で売買できなくなり、流動性が失われます。また、銀行が融資を引き上げる(貸し剥がし)リスクもあり、そうなれば資金繰りが悪化して倒産する可能性も出てきます。

監査法人はなぜもっと早く不正を見つけられなかったのですか?

「共謀」による不正を見抜くのは、監査の限界を超えていることが多いです。 監査は全ての取引をチェックするわけではなく、サンプル調査(試査)が基本です。また、経営陣や海外子会社が結託して(共謀して)、請求書や契約書を巧妙に偽造した場合、外部の監査人がそれを見抜くことは非常に困難です。これを「監査の固有の限界」と言います。今回のように、内部通報などがきっかけで発覚するケースが後を絶ちません。

「特設注意市場銘柄」と「監理銘柄」は何が違うのですか?

「監理銘柄」は「確認中」、「特設注意市場銘柄」は「改善命令」です。 「監理銘柄」は、上場廃止の基準に触れる可能性があるため、東証が事実確認をしている段階(容疑者)です。「特設注意市場銘柄」は、内部管理体制に重大な問題があると認定され、改善を命じられた状態(有罪判決後の保護観察のようなもの)です。ニデックは監理銘柄を経て、特設注意市場銘柄に指定されました。

 購買一時金(リベート)の不正は、具体的にどんな仕訳で行われたのですか?

 利益を先取りするような仕訳が行われた疑いがあります。 正しい仕訳は (借)現金 / (貸)棚卸資産 ですが、不正な処理では (借)現金 / (貸)売上原価 や (借)未収入金 / (貸)雑収入 といった仕訳が切られていたと考えられます。これにより、在庫があるにもかかわらず、今の期間の利益として計上してしまっていたのです(IAS第2号第11項違反)。

投資家として、今ニデック株を買うのはアリですか?

ハイリスク・ハイリターンな投機(ギャンブル)に近い状態です。 株価が急落したため「割安」に見えるかもしれませんが、まだ「いくら損失が出るか」「上場廃止になるか」が確定していません。第三者委員会の報告次第では、さらなる悪材料(隠れ借金や巨額損失など)が出てくる可能性もあります。長期投資の対象としては、ガバナンスの改善が確認されるまで待つのが賢明な判断と言えるでしょう。

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