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IPOの成否を分ける「主幹事証券会社」の役割と選び方【会計士が7つの鉄則を解説】

Sato|元・大手監査法人公認会計士が教える会計実務!

Sato|公認会計士| あずさ監査法人、税理士法人、コンサルファームを経て独立。 IPO支援・M&Aを専門とし、企業の成長を財務面からサポート。 このブログでは、実務に役立つ会計・税務・株式投資のノウハウを分かりやすく解説しています。

こんな方におすすめ

  • IPOに向けて主幹事証券会社を探している経営者様
  • 証券会社ごとの強みや実績を比較したいご担当者様
  • 主幹事証券の選定で失敗したくない方
  • 引受審査のポイントを事前に知りたい方

株式上場(IPO)という長い航海の成否は、羅針盤となり、時にエンジンともなる「主幹事証券会社」というパートナー選びにかかっていると言っても過言ではありません。

しかし、IPO準備を始めたばかりの経営者や実務担当者の方にとって、 「そもそも主幹事証券会社って、具体的に何をしてくれるの?」 「たくさんある証券会社の中から、どうやって自社に最適な一社を選べばいいの?」 といった疑問は尽きないのではないでしょうか。

本記事では、公認会計士として多くのIPO支援に携わってきた専門家の視点から、IPOにおける主幹事証券会社の役割と、パートナー選びで失敗しないための「7つの鉄則」を、専門用語を避け、具体的な表を交えながら分かりやすく解説します。

この記事を読めば、IPOという一大プロジェクトを成功に導くための、最適なパートナーを見つける具体的な方法がわかります。

そもそも主幹事証券会社とは?IPOにおける3つの重要な役割

主幹事証券会社は、単なるアドバイザーではありません。IPO準備の開始から上場後の成長まで、企業に寄り添い、導き、時には厳しく指導する「総合プロデューサー」のような存在です 。その役割は、大きく分けて3つのフェーズで考えることができます。  

フェーズ主な役割具体的なサポート内容
1. 上場準備段階IPOに向けた体制づくりの指導役・上場までの全体スケジュールの策定・管理 ・最適な資本政策(資金調達や株主構成)の立案・助言 ・投資家に魅力が伝わる事業計画(エクイティストーリー)策定の支援 ・上場企業にふさわしい内部管理体制構築の指導  
2. 審査・申請段階証券市場への推薦者・審査官引受審査の実施:投資家保護の観点から、上場に値する企業か厳しく審査  ・証券取引所への「上場適格性調査に関する報告書(推薦状)」の提出  ・膨大な上場申請書類の作成サポート ・証券取引所との質疑応答への対応指導  
3. 上場・上場後株式の販売責任者・継続的な助言者・公募価格の算定と決定 ・株式の引受と投資家への販売(公募・売出し)  ・上場後のIR(投資家向け広報)活動の支援 ・追加の資金調達(ファイナンス)に関する助言  

このように、主幹事証券会社はIPOプロセスの全般にわたって中心的な役割を担います。だからこそ、どの証券会社をパートナーに選ぶかが極めて重要なのです。

失敗しない主幹事証券会社の選び方【7つの鉄則】

数ある証券会社の中から、自社にとって最高のパートナーを見つけるためには、どのような点に注目すればよいのでしょうか。ここでは、必ず押さえるべき7つの選定ポイントを解説します。

鉄則1:IPO実績の豊富さ(特に自社と同業種)

なぜ重要か? IPO実績、特に主幹事としての実績が豊富な証券会社は、証券取引所の審査で重視されるポイントや、つまずきやすい論点を熟知しています。これにより、準備プロセスをスムーズに進めることができます 。また、自社と同じ業界のIPO実績があれば、事業内容への理解が早く、より的確なアドバイスが期待できます 。  

主要証券会社の主幹事実績(2024年)

証券会社2024年 主幹事数特徴
SMBC日興証券23社近年、主幹事数でトップクラスの実績を誇る。幅広い業種に対応 。  
みずほ証券19社メガバンク系。安定して多くの主幹事を務める 。  
大和証券17社伝統的にIPOに強く、IT関連のスタートアップにも注力 。  
野村證券16社業界トップクラスの実績とブランド力。大型案件も多数 。  
SBI証券11社ネット証券最大手。新興企業やグロース市場のIPOに強み 。  
出典: ipokabu.net のデータを基に作成  

鉄則2:企業の成長戦略への共感度

なぜ重要か? 主幹事証券会社は、審査役であると同時に、自社の事業の将来性を投資家に伝え、企業価値を最大化するパートナーでもあります。自社のビジョンやビジネスモデルに深く共感し、共に成長を目指してくれる熱意のある証券会社を選ぶことが、IPOの成功、ひいては上場後の企業価値向上につながります 。  

鉄則3:審査体制の充実度

なぜ重要か? 主幹事証券会社による「引受審査」は、取引所審査と並行して行われる、非常に厳格な審査です。数百項目に及ぶ質問状への回答やヒアリングが何度も繰り返されます 。この厳しい審査を乗り越えるための、経験豊富な専門スタッフによる手厚いサポート体制が整っているかどうかが、上場スケジュールを左右する重要な要素となります。  

鉄則4:販売力(株式を投資家に届ける力)

なぜ重要か? IPOの際に新たに発行・売出される株式を、多くの投資家に購入してもらう力が「販売力」です。販売力が高い証券会社は、より多くの投資家の需要を喚起できるため、適正な公開価格の形成や、上場後の安定した株価につながりやすくなります 。販売力の一つの目安として、各証券会社の顧客口座数が参考になります。  

鉄則5:監査法人との連携

なぜ重要か? IPO準備は、主幹事証券会社と監査法人が両輪となって進められます。両者の連携がスムーズであるほど、論点整理や課題解決が迅速に進みます。過去に協業実績が豊富な証券会社と監査法人の組み合わせは、コミュニケーションロスが少なく、安心して準備を進められる傾向にあります 。  

鉄則6:担当者との相性

なぜ重要か? IPO準備は2~3年に及ぶ長丁場です。その間、最も頻繁にコミュニケーションを取るのが主幹事証券会社の担当者です。担当者の経験や知識はもちろんのこと、「質問しやすいか」「レスポンスは迅速か」「誠実に対応してくれるか」といった人間的な相性は、プロジェクトの推進力に大きく影響します 。複数の証券会社の担当者と実際に面談し、「この人と一緒に戦いたい」と思える担当者を見つけることが重要です。  

鉄則7:費用対効果

なぜ重要か? 主幹事証券会社に支払う手数料は決して安くありません。しかし、単純な金額の比較だけでなく、提供されるサポートの質や範囲を総合的に評価し、費用対効果を見極める必要があります 。手厚いサポートによってスムーズに上場できれば、結果的にコストを抑えられるケースも少なくありません。  

いつから動き出すべき?契約までの流れ

主幹事証券会社の選定は、上場申請の2期前(N-2期)の期初までに完了させておくのが理想的です 。N-3期から候補先のリストアップや面談を開始し、余裕を持ったスケジュールで進めましょう。  

【選定から契約までの一般的な流れ】

  1. 候補先のリストアップ: 上記7つの鉄則を参考に、3~5社程度の候補を選定します。
  2. 初回面談: 各社の担当者と面談し、自社の事業内容やビジョンを説明。IPO支援に関する考え方や実績を確認します。
  3. 提案依頼・比較検討: 各社から具体的な支援内容やスケジュール、費用の提案を受け、比較検討します。
  4. 内定・契約: 最も信頼できるパートナーを1社に絞り込み、契約を締結します。

まとめ:最高のパートナーと共に、IPOという頂へ

主幹事証券会社は、IPOの成否を左右する最も重要なビジネスパートナーです。その役割は多岐にわたり、専門的な知見と強力なサポートがなければ、上場という高い山を登り切ることは困難です。

今回ご紹介した「7つの鉄則」を参考に、複数の証券会社と実際に会い、自社の事業に心から共感し、共に汗を流してくれる最高のパートナーを見つけてください。信頼できる伴走者を得ることが、IPO成功への確かな第一歩となるはずです。

よくある質問(Q&A)

主幹事証券会社は、いつまでに選定すればよいですか?

理想的には上場申請の3期前(N-3期)に選定し、コンサルティングを受けるのが望ましいです。遅くとも2期前(N-2期)までには選定を完了させないと、課題の洗い出しや体制構築が間に合わず、IPOのスケジュールが大幅に遅れるリスクが高まります 。

「主幹事証券」と「幹事証券」の違いは何ですか?

幹事証券はIPOを支援する複数の証券会社を指します。その中で中心的な役割を担い、上場準備の全体的な管理、取引所との交渉、引受審査、株式の配分などを主導するのが「主幹事証券会社」です 。IPOの成功は、この主幹事証券の能力に大きく左右されます。

どのような会社が主幹事証券会社に選ばれるのですか?

近年では企業が証券会社を選ぶだけでなく、証券会社が上場させる企業を選ぶ「証券難民」という言葉も生まれています 。証券会社は、一定の時価総額が見込めるか、合理的で成長性のある事業計画か、労務問題を含めたコンプライアンス体制が構築されているか、反社会的勢力との関係がないかなどを厳しく審査し、パートナーとなる企業を選定します 。


ここでは、あくまで私個人の視点から、皆様のご参考としていくつかの書籍を挙げさせていただきます。

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