6.その他

株式会社MTGの第三者委員会の調査報告書について

株式会社MTG より2019年7月11日に第三者委員会の調査報告書が公表されました。

MTGは「シックスパッド」などを製造・販売する2018年7月にIPOした後、約1年間で株価が下落する中行われた不適切会計であり、販売不振による不適切会計が行われた典型的な事例であると言えるのではないでしょうか。

第三者委員会の設置の経緯

第三者委員会の報告書では、2019年9月期第2四半期決算に、トーマツより、主に連結子会社であるMTG上海において同会計期間の特定の取引に対する売上取引の収益認識方法について、当初監査法人に説明していた売上取引に関する会計処理と異なる事象が判明したことから、当該売上取引について不適切な会計処理の疑義が生じたことから、第三者委員会の設置がなされました。

中国ECサイト業者への販路を持たないC社(商社)への売上一括計上について

MTGは中国ECサイト業者への販路を持たないC社(商社)に対し、外形的に商品を出荷、納品し、代金の支払いも取り決め通り行われたことから、MTGは出荷、納品した商品に対する売上高を全額計上しました。しかしながら、C社に販売した商品の大半が当初予定された中国の販売先に移転されることはなく、最終的に、MTGはC社から残存在庫を買い戻す合意をするに至っています。

ここで、「我が国の収益認識に関する研究報告(中間報告)」では、売上認識の2要件のうち「財貨の移転の完了」には、「所有に伴う重要なリスクと経済価値が移転していること」及び「継続的な関与を有していないこと」が考慮されます。

第三者委員会は、商社であるC社は、販売先の開拓や交渉の多くをMTGに依存し、MTGが在庫リスクを最終的に負担することになったという事実に鑑みれば、「委託販売に類似した取引」として取り扱われるべきであり(消化売上認識)、会計上、MTGがC社向けに売上計上した42億円はC社が中国のECサイト業者へ販売した時点で実現したと考えるべきであるとの結論に至っています。

三者間契約未締結時における、上海MTGからA社に対する売上計上について

MTG上海は、ECサイトにおける新パートナーとしてのB社との取引に際し、社内での新規手続に係る承認手続が間に合わないことを理由に、まず、MTG上海から、既存の取引先A社に商品を販売し、さらにA社からB社に転売するスキームを企図したが、本件売上が計上された2019年1月時点において、MTG上海、A社、B社の三者間契約は未締結の状態でした。

第三者委員会は、IFRS15号「顧客との契約から生じる収益」では、「企業が、顧客に移転する財又はサービスと交換に権利を得ることとなる対価を回収する可能性が高いこと」を「契約の識別」の要件の一つとしており、三者間契約が未締結である場合、A社が当初から支払期限到来時にMTG上海へ代金を支払う意図はなかったと評価できることから、IFRS15号における「契約の識別」ができず、2019年1月のA社向けの売上計上は認められないとの結論に至っています。

商品に対する支配が顧客に移転する前における、MTG上海からB社への売上計上について

MTG上海とB社との取引基本契約書によれば、MTG上海がB社の販売活動(B社のECサイトにおける販売活動)に係る運営費用はMTG上海が負担する取り決めがあること、最低小売価格が設定されていることなどの事実から総合的に判断すると、商品がB社に移転したことをもって、当該商品に対する支配がMTG上海からB社に移転していないと判断されました。

第三者委員会は、商品に対する支配が移転したと評価される時点は、B社がECサイトを通じて最終顧客に販売した時点であることから、MTG上海にとっては、「委託販売に類似した取引」として取り扱われるべきであり(消化売上認識)、会計上、MTG上海がB社向けに売上計上した13.7億円はB社が最終顧客へ販売した時点で実現したと考えるべきであるとの結論に至っています。

まとめ

今回のMTGの不適切会計は、三者間契約未締結時における上海MTGからA社への売上計上が会計上認められないことは当然であると考えられますが、「委託販売に類似した取引」である場合、形式的には基本契約の締結、商品の出荷、納品事実や代金の回収事実が整っていた取引もあったことが想定されるため、形式的な事実の確認のみをもって安易に売上計上を認めることが、会計不正の看過につながってしまうことを改めて考えさせられました。

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