2.会計

収益認識会計基準 有価証券報告書及び会社法計算書類における開示

「収益認識に関する会計基準」が2021年4月1日以後に開始する事業年度の期首より原則適用されており,2022年3月期の四半期決算から収益認識に関する注記として「収益の分解情報」の注記が行われていますが、2022年3月期の年度決算としては、「収益認識に関する会計基準」が初めての適用となります。
適用初年度における、有価証券報告書及び会社法の計算書類において求められる注記開示について確認します。

有価証券報告書における注記開示

有価証券報告書の財務諸表では、収益認識会計基準で要求される「重要な会計方針の注記」及び「収益認識に関する注記」についての注記が求められます。

重要な会計方針の注記(収益認識会計基準80-2,3項)

顧客との契約から生じる収益に関する重要な会計方針として、次の項目を注記します。(収益認識会計基準80-2,3項)
(1) 企業の主要な事業における主な履行義務の内容
(2) 企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)
(3) (1)(2)以外にも、重要な会計方針に含まれると判断した内容

重要な会計方針の注記は、「主要」な事業について、基準が要求する主な「履行義務の内容(例えば、商品の販売、会員に付与したポイント)」と「履行義務を充足する通常の時点(例えば、引渡し時点)」を記載すれば足りるものと考えられます。

収益認識に関する注記(収益認識会計基準80-4~24項)

収益に認識に関する注記の開示目的を達成するため、次の項目を注記します。
(1) 収益の分解情報
(2) 収益を理解するための基礎となる情報
(3) 当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報

収益認識に関する注記は、「顧客との契約から生じる収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報を企業が開示する」という開示目的を満たすことが求められるのみで、どの程度記載するかは各社の判断に任せられることとなります。
なお、収益認識に関する注記と、重要な会計方針の注記、会計方針の見積りの開示との注記間の整合性についても留意する必要があります。

会社法の計算書類における注記開示

有価証券報告書提出会社においては、会社法の計算書類においても、有価証券報告書の注記と同様の注記をすることが原則とされます。
一方で、有価証券報告書提出会社以外の会社においては、収益認識に関する注記とにおいて、個別注記表において注記の一部省略が認められます。詳細については、下記において説明します。

重要な会計方針の注記(会社計算規則101条2項)

会社が顧客との契約に基づく義務の履行の状況に応じて当該契約から生ずる収益を認識するときは、収益及び費用の計上基準に関する事項は、次に掲げる事項を注記します。
(1) 当該会社の主要な事業における顧客との契約に基づく主な義務の内容
(2) (1)に規定する義務に係る収益を認識する通常の時点
(3) (1)(2)に掲げるもののほか、当該会社が重要な会計方針に含まれると判断したもの

会社法計算書類における重要な会計方針の注記では、有価証券報告書提出会社も提出会社以外の会社のいずれも、有価証券報告書における注記と同様の注記が求められます。

収益認識に関する注記(会社計算規則115条の2)

収益認識に関する注記は、会社が顧客との契約に基づく義務の履行の状況に応じて当該契約から生ずる収益を認識する場合における次に掲げる事項(重要性の乏しいものを除く。)とされます。ただし、有価証券報告書提出提出会社以外の株式会社にあっては、下記(1)及び(3)に掲げる事項を省略することができる。
(1) 当該事業年度に認識した収益を、収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性に影響を及ぼす主要な要因に基づいて区分をした場合における当該区分ごとの収益の額その他の事項(収益の分解情報)
(2) 収益を理解するための基礎となる情報
(3) 当該事業年度及び翌事業年度以降の収益の金額を理解するための情報

会社法計算書類における収益認識に関する注記では、有価証券報告書提出会社は、有価証券報告書における注記と同様の注記が求められます。
一方で、有価証券報告書提出会社以外の会社においては、上記(1)(3)を省略することができ、「(2) 収益を理解するための基礎となる情報」の記載をするのみで足ります。
なお、上記(2)の注記についても、重要な会計方針の注記の記載事項と同一であるときは、同一である旨記載し、注記は不要でとなります。

なお、本稿の参考となる書籍はこちらをご覧ください。

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