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IFRS導入実務(1)IFRS任意適用の基礎と戦略的意義:なぜ今、日本企業は国際会計基準を目指すのか

Sato|元・大手監査法人公認会計士が教える会計実務!

Sato|公認会計士|
あずさ監査法人、税理士法人、コンサルファームを経て独立。
IPO支援・M&Aを専門とし、企業の成長を財務面からサポート。
このブログでは、実務に役立つ会計・税務・株式投資のノウハウを分かりやすく解説しています。

こんな方におすすめ

  • 経営者(CEO/CFO)
    • IFRS導入が自社の株価(バリュエーション)やM&A戦略に具体的にどう寄与するか、投資対効果(ROI)を明確に理解できます。
    • 「のれん非償却」のリスクとリターンを正しく天秤にかけるための判断材料が得られます。
  • 経理財務責任者・実務リーダー
    • 「特段の取り組み」などの抽象的な法的要件を、明日から実行可能な具体的タスクレベル(FASF加入、規程整備等)に落とし込めます。
    • 監査法人や経営陣への説明資料(稟議書)を作成するためのロジックと根拠を入手できます。
  • IPO準備企業の担当者
    • 上場申請期(N-1期、N期)に向けたスケジュールの逆算と、日本基準かIFRSかの最終決断を下すための比較軸が得られます。 

はじめに:会計基準の選択は「経営のOS」を選ぶことである

日本国内において、国際財務報告基準(IFRS)を採用する企業は、もはや「特異な存在」ではありません。2025年時点において、適用済または適用決定会社数は300社を超え、その時価総額の合計は東京証券取引所上場企業の過半数に迫る勢いを見せています。

かつて、IFRSは「グローバルで戦う超巨大企業だけのもの」という認識が一般的でした。しかし、2013年の金融庁による劇的な方針転換(適用要件の緩和)以降、その風景は一変しました。現在では、海外展開を加速させたい中堅規模の上場企業や、これから世界へ打って出るIPO(新規上場)準備企業にとっても、IFRSは現実的かつ極めて戦略的な選択肢となっています。

なぜ、これほど多くの企業が、多額のコストとリソースを投じてまで会計基準を変更するのでしょうか。それは、IFRS導入が単なる「経理処理の変更」ではなく、「経営管理基盤(OS)の刷新」であり、企業価値を向上させるための「投資」であると認識され始めたからです。

本連載「IFRS導入実務完全ガイド(全10回)」では、監査法人の教科書的な解説とは一線を画し、「実務の最前線で泥臭い調整を行ってきた公認会計士の視点」から、プロジェクトを成功に導くための実践知(ナレッジ)を余すところなく公開します。第1回となる本記事では、IFRS導入の「Why(戦略的意義)」と「How(法的要件と準備)」について、経営戦略と実務の両面から徹底的に深掘りします。


第1章 戦略的背景:なぜ日本企業はIFRSを目指すのか

多くの経営者にとって、会計基準の変更は「コストセンター」の話に聞こえるかもしれません。システム改修費、コンサルティングフィー、監査報酬の増額、社内教育コスト。これらは確かに発生します。しかし、IFRS導入を決定した企業の経営者は、これらをコストではなく、将来のキャッシュフローを生み出すための「投資」と位置づけています。

その投資判断を裏付ける、3つの主要な戦略的ドライバーについて詳細に解説します。

1.1 M&A戦略における「のれん」の非償却メリットとリスクのトレードオフ

日本企業がIFRSを採用する最大の、そして最も実利的な動機の一つが、M&A(企業の合併・買収)における「のれん(Goodwill)」の会計処理です。これは、企業のP/L(損益計算書)の見た目を劇的に変える力を持っています。

【日本基準(J-GAAP)の足かせ】

日本基準では、M&Aによって生じた「のれん」は、最長20年以内の期間で定額償却(費用化)しなければなりません。

例えば、1,000億円の企業を純資産500億円で買収した場合、差額の500億円が「のれん」となります。これを20年で償却すると、毎年25億円もの「のれん償却費」が販管費として計上されます。

M&Aで事業規模を拡大しても、この償却費負担によって営業利益が押し下げられ、見かけ上の収益性が悪化してしまう――これが、日本企業が大型M&Aに二の足を踏む要因の一つとされてきました。

【IFRSのアクセラレーター効果】

一方、IFRSでは、のれんの定期償却を行いません(非償却)。

その代わり、毎期末(または兆候がある時)に厳格な「減損テスト」を行い、価値が毀損していないかをチェックします。価値が維持されている限り、のれんはB/S(貸借対照表)に資産として残り続け、P/Lの営業利益を圧迫することはありません。

これにより、日本基準と比較して営業利益が大きく計上され、EPS(一株当たり利益)やROE(自己資本利益率)などの主要な投資指標が改善する効果があります。

比較項目日本基準 (J-GAAP)国際会計基準 (IFRS)経営戦略への具体的インパクト
のれんの処理定額法による定期償却(最長20年)非償却(毎期の減損テストのみ)IFRSは営業利益を押し上げる効果があり、積極的な買収戦略をP/L面から支援する。
減損の認識減損の兆候がある場合のみテスト実施(2ステップ法)毎期必ずテストを実施(1ステップ法)IFRSは実務負担が重いが、償却費がない分、平常時の利益率は高い。
負ののれん発生益として計上(特別利益)発生益として計上(純損益)大きな差異なし。
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【公認会計士の視点:リスクの所在】

ただし、これには重大な副作用があります。それが「減損のクリフ(崖)効果」です。

日本基準では毎年少しずつ費用処理(償却)しているため、万が一事業が失敗しても、B/S上ののれん残高は減少しており、減損損失のインパクトはある程度緩和されます。

しかしIFRSでは、償却せずに残高が積み上がっていくため、ある日突然、巨額の減損損失を計上せざるを得なくなるリスクがあります。数百億円、時には数千億円の損失が一挙に計上され、その年度の業績が吹き飛ぶ――いわゆる「巨額減損」のニュースの多くは、このメカニズムによるものです。

経営者は、「償却費負担がない」という甘い蜜だけでなく、「将来の巨額損失リスクをB/Sに溜め込んでいる」という事実を直視し、買収後の統合プロセス(PMI)を成功させる覚悟が必要です。

1.2 海外投資家への「共通言語」による対話と資本コストの低減

外国人持株比率が高い企業、あるいは将来的に海外機関投資家からの資金調達を増やしたい企業にとって、IFRSは必須の「共通言語」です。

海外の投資家は、日本独自の会計基準(J-GAAP)の詳細を理解していません。彼らが投資判断を行う際、J-GAAPで作成された財務諸表を、頭の中で(あるいはアナリストのレポートを通じて)IFRSや米国基準に近い形に「調整」して比較分析を行います。この「調整コスト」や「理解不能なリスク」は、投資家にとっての不確実性となり、結果として株価に対するディスカウント(割引評価)につながります。

財務諸表が最初からIFRSで作成されていれば、彼らは自国の企業や、競合するグローバル企業(例えば、トヨタ自動車であればフォルクスワーゲンやテスラ)と「同じ物差し」で貴社の業績を横並び比較することが可能になります。

情報の非対称性が解消されることで、投資家の安心感が高まり、結果として資本コストの低減や、適正な株価形成(バリュエーション向上)が期待できるのです。これは、CFOが主導すべきIR戦略の根幹に関わる部分です。

1.3 グループ経営管理の高度化(マネジメント・アプローチ)

IFRS第8号「セグメント情報」では、「マネジメント・アプローチ」という概念が採用されています。これは、「経営者が意思決定に使用している内部管理資料に基づいて、外部報告(セグメント情報)を開示する」という考え方です。

多くの日本企業では、長年次のような「二重帳簿」の状態が続いてきました。

  • 制度会計(対外報告): 日本基準の厳格なルールに基づき、経理部が作成。
  • 管理会計(社内会議): 部門ごとの独自の採算表に基づき、経営企画部が作成。

この乖離は、社内の意思決定と、投資家への説明内容の間にズレを生じさせます。また、経理部門は決算のたびに、管理用数値から制度用数値への膨大な組替作業(調整)を強いられます。

IFRS導入は、この非効率を解消する絶好の機会です。「投資家に報告する数字で、経営も判断する」という原則に立ち返り、グループ全体の業績評価指標(KPI)をIFRSベースに統一することで、経営の透明性と意思決定スピードを向上させることが可能です。


第2章 法的要件の完全解説:2013年規制緩和と「特段の取り組み」

「IFRSを導入したい」という意欲があっても、誰でも自由に適用できるわけではありません。しかし、そのハードルは2013年以降、劇的に下がっており、中堅・中小の上場企業にも門戸が開かれています。ここでは、最新の法令に基づく適用要件を、実務的な観点から解説します。

2.1 2013年「連結財務諸表規則」改正による緩和の歴史

かつて、IFRSの任意適用には非常に高いハードルが設けられていました。2009年頃の議論では、「上場企業であること」に加え、「国際的な財務活動を行っていること(海外での資金調達実績など)」という要件がありました。これは実質的に、一部の超巨大グローバル企業にしか適用を認めないものでした。

しかし、2013年6月、金融庁の企業会計審議会は「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」を公表し、大きく舵を切りました。この方針転換に基づき、同年10月に「連結財務諸表規則」等が改正され、適用のボトルネックとなっていた「国際的な財務活動」等の要件が撤廃されました。

これにより、国内中心の事業活動を行っている企業であっても、一定の体制さえ整えればIFRSを適用できるようになったのです。

2.2 「特定会社」の要件と実務判定

現在、IFRSを適用できる企業(法令上の用語で「特定会社」といいます)の要件は、連結財務諸表規則 第1条の2に規定されています。条文は複雑ですが、要約すると以下の要件を満たす必要があります。

  1. 対象企業
    • 上場会社等であること(または上場準備中の一定の会社)。
  2. 開示要件
    • 有価証券報告書において、連結財務諸表の適正性を確保するための「特段の取り組み」を行っている旨を記載していること。
  3. 体制要件
    • 指定国際会計基準(IFRS)に関する十分な知識を有する役員または使用人を配置しており、IFRSに基づいて連結財務諸表を適正に作成することができる体制を整備していること。

2.3 実務の急所:「特段の取り組み」とは具体的に何をすればよいのか?

実務家が最も頭を悩ませるのは、要件2の「特段の取り組み」および要件3の「体制整備」です。条文には「何をすればOK」とは書かれていません。

しかし、先行事例や実務慣行に基づくと、以下の具体的アクションパッケージを実行し、それを有価証券報告書の「会計状況」の注記に記載することで要件を満たすのが通例となっています。

【「特段の取り組み」の実践チェックリスト】

取り組み項目具体的内容と実務対応難易度・コスト
① 外部団体への加入公益財団法人 財務会計基準機構(FASF)への加入
これが最も一般的かつ客観的な証明手段です。会員として年会費を払い、活動を支援している事実を作ります。

(年会費のみ)
② 専門能力の向上外部研修・セミナーへの継続的参加
監査法人、FASF、日本公認会計士協会などが主催するIFRSセミナーに、経理担当者やCFOが定期的に参加し、最新の基準動向を把握している実績を作ります。

(受講料・時間)
③ 社内規程の整備グループ会計方針書(IFRS Accounting Policy)の作成
IFRSに対応した自社グループの会計マニュアルを文書化し、運用を開始していること。これが「体制整備」の核心です。

(コンサル・工数)
④ 情報収集体制プレスリリースや基準書の入手
IASB(国際会計基準審議会)が公表する最新情報を随時入手し、アップデートする仕組み(メルマガ登録や定期的な監査法人とのミーティング)があること。

実際の有価証券報告書(例:キッコーマン、花王)では、以下のような定型文言でこれらの取り組みが開示されています。

「当社は、連結財務諸表等の適正性を確保するための特段の取組み及びIFRSに基づいて連結財務諸表等を適正に作成することができる体制の整備を行っております。具体的には、公益財団法人財務会計基準機構へ加入し、同機構の実施するセミナーへ参加するなど、最新の会計基準の内容を適切に把握できる体制を整えております。」

つまり、「特段の取り組み」とは、決して越えられない壁ではなく、「やるべき準備をやり、それを宣言する」というプロセスそのものなのです。


第3章 導入プロジェクトの全体像と実務ロードマップ

IFRS導入プロジェクトは、単なる「勘定科目の組替」ではありません。ITシステム、業務フロー、子会社ガバナンス、そして人事評価制度まで影響が及ぶ、全社的な変革プロジェクトです。

ここでは、標準的なタイムラインと、各フェーズで発生する重要タスクを解説します。

3.1 標準的な準備期間(2年〜3年)のタイムライン

一般的に、IFRS導入プロジェクト(キックオフから最初の有価証券報告書提出まで)には、最低でも2年、余裕を持つなら3年の期間を見込むべきです。急ごしらえの導入は、現場の混乱と決算遅延リスクを招きます。

  • フェーズ1:予備調査・論点抽出(3〜6ヶ月)
    • ギャップ分析(Gap Analysis): 日本基準とIFRSの差異を洗い出し、影響額を概算します。ここで「のれん」「収益認識」「固定資産」などの主要論点を特定します。
    • 経営判断: ギャップ分析の結果に基づき、導入のコスト対効果を最終検証し、取締役会で正式な導入決議を行います(Go/No-Go判断)。
  • フェーズ2:方針策定・要件定義(6〜12ヶ月)
    • グループ会計方針の策定: IFRSベースでの勘定科目体系、償却方法、引当基準などを決定し、マニュアル化します。
    • システム要件定義: 固定資産管理システム(複数帳簿対応)、連結会計システム、リース管理システムなどの改修要件を定義します。経理DXの観点からも重要なフェーズです。
  • フェーズ3:導入・システム構築・教育(6〜12ヶ月)
    • 子会社展開: 海外・国内子会社の経理担当者に対し、新方針のトレーニングを行います。
    • 開始財政状態計算書の作成: IFRS適用初日(移行日)時点のB/Sを作成します。これは、過去の日本基準の数字をすべてIFRSに修正する、極めて負荷の高い作業です。
  • フェーズ4:並行開示期間(1年〜)
    • 二重帳簿運用: 日本基準での法定開示を継続しつつ、水面下でIFRSベースの決算も並行して行います。
    • 予備監査: 監査法人によるIFRS予備監査を受け、本番に向けた課題を潰し込みます。

3.2 経営陣が覚悟すべきリソースとコスト

もっとも深刻なボトルネックになるのは、金銭的コストよりも「人材リソース」です。

経理部門の日常業務(月次決算、税務申告、監査対応)は、プロジェクト中も止まりません。その上に、難解な英文基準書の読解や、子会社からの質問対応といったプロジェクト業務が上乗せされます。

既存メンバーだけで乗り切ろうとすると、疲弊による休職や退職リスクが劇的に高まります。以下のようなリソース計画をセットで考えることが、プロジェクト成功の必須条件です。

  • 外部コンサルタントの活用: IFRSの専門知識を持つコンサルタントをPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)として招聘し、基準書の解釈や方針書作成をリードしてもらう。
  • 定型業務のアウトソーシング: 既存社員をプロジェクトに専念させるため、日常の仕訳入力や支払業務などは派遣スタッフやアウトソーサーに委託する。
  • 決算早期化による時間創出: 月次決算の早期化に取り組み、月末月初の繁忙期を圧縮することで、プロジェクトに割ける時間を捻出する。

第4章 実務の現場から:公認会計士の視点

導入検討時の「落とし穴」と監査法人の限界

多くの企業が、IFRS導入を検討する際に「監査法人に聞けば、手取り足取り教えてくれるだろう」と期待しがちです。しかし、ここに大きな落とし穴があります。

監査法人は「独立性の原則」により、財務諸表の作成自体を代行することや、具体的な会計処理の決定に関与すること(コンサルティング行為)が法令および倫理規則で厳しく制限されています(自己監査の禁止)。

つまり、監査法人は「貴社が作った方針案に対して、OKかNGかを判定する」ことはできますが、「ゼロから方針案を作って提案する」ことはできないのです。

実際、監査法人に過度な期待をしてプロジェクトを発足させたものの、「監査法人が何も教えてくれない」「質問しても『会社としての考えを示してください』と返されるだけだ」と現場が立ち往生し、プロジェクトが頓挫しかけるケースを数多く見てきました。

プロジェクトを推進するためには、「社内で判断できる強い経理チームを作る(採用・育成)」か、あるいは「監査法人とは独立した別のコンサルティングファーム(導入支援会社)を雇う」かの二択になります。

「誰がボールを持ち、誰がゴールを決めるのか」という役割分担を初期段階で明確にしておくことが、2年後の成功を約束します。

また、CPAのキャリアという観点からも、IFRS導入プロジェクトは得難い経験となります。監査法人側で監査する立場だけでなく、事業会社側(インハウス)で導入を主導する経験は、CFOへのキャリアパスにおいて極めて高い市場価値を持ちます。


第5章 まとめと次回予告

第1回となる本記事では、IFRS導入の「戦略的意義」と「法的要件」について解説しました。

IFRS導入は、単なる会計基準の変更ではなく、グローバル市場での競争力を高め、M&Aや資金調達を有利に進めるための強力な経営ツールです。また、要件緩和により、その門戸は広く開かれています。

しかし、経営者が次に最も知りたいのは、「具体的に自社の数字はどう変わるのか?」という点でしょう。

「利益が増えると言うが、本当か?」「逆に負債が増える項目はないのか?」

次回の記事では、この疑問に答えます。

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【次回予告】

第2回:日本基準との決定的差異と影響額試算 〜のれん、収益認識、リース、有給休暇引当金のインパクト〜

IFRS導入実務(2)IFRSと日本基準の決定的差異5選と影響額試算|のれん・有給・リースの実務完全ガイド

P/LとB/Sに大きな変動を与える「ビッグイシュー」を抽出し、具体的な数値例を用いて解説します。特に、多くの日本企業が見落としがちな「有給休暇引当金」の衝撃についても触れる予定です。

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本記事で解説したテーマをより深く理解するために、当サイト内の以下の記事も併せてご活用ください。

よくある質問(Q&A)

 IFRSを適用すると、すべての日本基準の処理を変えなければなりませんか?

いいえ、全てではありません。日本基準も近年「コンバージェンス(収斂)」が進んでおり、多くの領域でIFRSとの差は縮まっています。しかし、「のれん」「リース」「収益認識」「有給休暇引当金」「固定資産の減損」など、影響が大きい主要項目については調整が必要です。特に、グループ会社間での会計方針の統一(統一会計基準の適用)が最大のハードルとなります。

「特段の取り組み」としてFASFへの加入は必須ですか?

法令上、FASFへの加入が「唯一の絶対条件」と明記されているわけではありません。しかし、実務上は加入するのが最も確実かつ一般的であり、いわば「デファクトスタンダード」です。投資家や監査人に対して、「適正な体制を整備するためにコストをかけている」という客観的な証拠として機能します。多くの先行事例企業が加入を「特段の取り組み」の中心に据えています。

導入コストは総額でどのくらいかかりますか?

企業の規模、海外子会社の数、既存システムの状況により大きく異なりますが、決して安くはありません。

ランニングコスト: 監査報酬の増加(一般的にIFRS監査は日本基準監査より工数が増えるため、監査報酬は1.2倍〜1.5倍程度に上昇する傾向があります)。 これらを総合すると、中堅上場企業でも数千万円から数億円規模の投資となることが一般的です。

外部流出コスト: コンサルティング費用、システム改修費(ERP、連結)、FASF会費など。

内部コスト: プロジェクト担当者の人件費、教育コスト。

 IPO(新規上場)を目指していますが、最初からIFRSで申請できますか?

はい、可能です。特に将来的なグローバル展開を見据えている場合、上場後に移行するよりも、上場申請時からIFRSを採用しておく方が、二度手間(日本基準で作ってからIFRSに変えるコスト)を省けるメリットがあります。ただし、主幹事証券会社や監査法人の審査体制がIFRSに対応できるか、事前の調整が必要です。


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専門家としての経験に基づき、現場で本当に『武器』になった数冊を厳選しました。理論だけで終わらない、実践に裏打ちされた知恵を求める方の参考になれば幸いです。


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